第4話 好き嫌い

 私のエッセイや近況ノートを読んで下さって、ご存知のかたも多いと思いますが、うちの夫は異常に好き嫌いが多いです。

 そして、その原因がわかります。

 義母がやはり好き嫌いが多い人なのです。

 想像するに、自分の嫌いなものは作らない、なので、息子も食わず嫌い。


 あとは、一回に作る量が多いのです。

 これは、農家あるあるなのではないでしょうか? 農作業が忙しいので、毎回違うものを作っていられない。そうすると、一気に煮物を作る。揚げ物を作る。

 この時点で、恐らく子供たちは煮物が苦手になります。揚げ物は、油の嫌いな人や、油に酔う、調理人が嫌いになりますね。


 なんだかんだ理由はあったのでしょうが、義母は好き嫌いの多い人でした。



 ちょっと家庭環境が複雑なのですが、説明しますと、うちの義母は、家を出て、義妹と一緒に住んでおりました。

 で、うちの家に仕事に通う。うちの家で野菜畑を作る。という生活を送っておりました。

 義父とは喧嘩ばかりしておりましたが、夫や私、子供達との関係は悪くありませんでした。


 踏まえて、お読みください。



 そう。義母は、好き嫌いの多い人でした。

 それなのに、野菜畑に嫌いなものを植える。


 何故植える?


 大量に植えてあるので、大好きなのかと思って、ズッキーニとベーコンの炒め物や、ラタトゥイユを作ってあげたら、

「あっ……あれね、〇〇さんのおばちゃんが美味しいって食べてたよ」

 何故〇〇さんのおばちゃんが食べている?

 もしかして嫌いなのかと思い聞いてみると、「私食べないよ」と言う。でも、義父も夫も食べなかった。何のために植えていたのでしょう?! ちなみに私と娘たちはラタトゥイユが大好きなので、ありがたくいただきましたが。でも、さすがに8株分は食べられませんでした。


 逆に、自分が好きなものをあげたときには、追いかけてでも言いに来るのですよ。

「昨日のさ、じゃがいもとコンニャクの煮物、すっごく美味しかったよ〜」

「そう、それはよかった(あれ、肉じゃがやけどな)」


 それも時々、微妙な言い回しになったりします。

「今回の赤飯美味しかったわぁ。いや、『また豆の硬い赤飯もらってきたの?』って○子(義妹)が言ってたんだけど、食べたら美味しくて……」

 ほお。いつもあなたはそういう風に思ってたのね。



 最初の頃、この、誰それがこう言ってる、に騙されてた私。

「じいちゃんがね『果物にラップがしてあって食べれんのじゃ、どうにかしてくれ〜』、って枕元に立つからね、仏さんのブドウのラップ、はずしてあげて〜」

 とか、

「じいちゃんが夢に出てきてねえ、『お墓さんの掃除してくれたから、やっと嫁がどんな顔してるのか見れたなあ』って言ってたわあ」

 とか。

 亡くなった義祖父を使って、言いたい放題でしたが(笑)。いや、そんなまどろっこしいことしてたら、嫁が段々機嫌悪くなるから、ストレートに言ってくれていいんだけど、と思ったりしてました。


 …………

 すみません。好き嫌いの話でした。



 うちの夫は好き嫌いがとにかく多いので、私はそれに合わせて料理を作りたいのですが、トマトの苗を100本植える。

 ご存知ですか? あなたの息子さん、生のトマトを、一切、召し上がらないんですよ(泣)。

「いや〜、緋雪さんは料理が得意だから〜」

 仕方なく、トマトソースとミートソースにいたします。

 

 キュウリを、畑のこっちの端から向こうの端まで、ズラ〜ッと育てる。

 ご存知ですか? あなたの息子さん、キュウリはどうやっても召し上がらないんですよ(泣)。

「いや〜、緋雪さんは料理が得意だから〜」

 ……仕方なく、漬物やピクルスにいたします。娘がせっせと食べます。全然追いつきません。



 セロリ、唐辛子、絶対食べないでしょ? 家族も誰も食べないのに植えてるものもある。

 そして、私にくれるので、調理して返すと、「〇〇さんのおばちゃんが、美味しかったって言ってた」ってタッパーが返ってきます。……食べないなら先に言って?



 好きなものについては、すぐに鍋やらタッパーやらが返ってくるのです。「おかわり」かな? ってくらい。

 でも、そうでもないものについては、「いやあ、まだ食べてないんだあ。今日帰ってから食べようと思って」……また、タッパーごと、〇〇さんのおばちゃんとこ行ってるな。


 うちの義母は、どれくらいの数のタッパーと鍋を集めたのでしょう。急に倒れて入院したし、認知症状が酷いので、タッパーのことなど覚えていないでしょう。そして、片付けできない義妹から、それが無事に返ってくるとは思えない。



 全国の義母様、嫌いなものは、嫁にハッキリ言って下さいね。

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