第92話

「アンタらが、一番酷いわっ!


いい加減に、慣れんかいっ!


カエデっ! なんなら本気でPKプレイヤーキラーしてあげようか?」


カエデに向かって、本気で凄みを効かせるサクラ。


「大丈夫ですよ。 どんなに、見かけが変わっても。


その人の本質は〝変わったりは〟しませんから。」


そう言いながら。ラクスが、サクラを後ろから抱きしめて、顔をサクラの背中に埋めた。


「本当に〝キモイ〟と思っているなら、一緒に行動などしないさ。」


そう言って、ツバキが花騎士フラワーナイトのメンバーを見る。


「まぁ、慣れないのは勘弁してください。


本当のサクラを知っているんだから。 今とのギャップが有り過ぎるんだから」


と、リリオペ。


「そうですよ。 本来のサクラを知っているからこそ、笑えるんですから。」


ヒノキ。


「ネタキャラ担当としては、美味しい所を全部持って行けて嬉しいだろう?」


笑いながらカエデが言う。


「誰がネタキャラだっ!!」


カエデの方に1歩踏み出すサクラ。


それを止めようと、ラクスが身体を使ってサクラを止めようとするが。


サクラは、ラクスごと引きずりながらカエデの方に向かって行く。


「まぁまぁ、少し落ち着こう……。」


アランがサクラの前に出て、手をかざして制止しようとしたが。


サクラをなだめようと差し出したアランの手は、ちょうどサクラの胸の位置で、サクラの胸の所に当たってしまう。


ふにふに……っと、気持ちの良い感触がアランの手に伝わってくる。

 

「………………。」


ふにふに。 


無言のままで、数秒ほど自分の手に感じる感触を確かめるように、アランがてのひらを軽く揉む仕草を繰り返す。


「………………。」


アランに胸を揉まれているサクラも無言で、自分の胸を揉むアランの手を見ている。


「………………。」


ふにふに。 ぷにぷに。


「で……。 いつまで、揉んでいる気だ?」


サクラが、野太い声で、怒りの表情を露わにしてアランに問いただす。



★注意★

*USOでは、アバターに触れられていると言う感触は存在しても。

*それを、性的意味での感覚でプレイヤーに伝えるプログラムが組まれていない。

*触覚:味覚:痛覚:視覚:聴覚:嗅覚の内、痛覚は完全に除外されているし。

*触覚は存在するのだが、性的感覚での触覚は存在しない。

*なので、触れられていると言う自覚はあるのだが、|現実(リアル)みたいに性的での〝気持ち良い〟とか〝感じる〟とかは無い不思議仕様だ。


*もちろん、勃起などしないし、濡れもしない(判らない人は、お父さんか、お母さんに聞いてみよう。答えてくれるかどうかは知らないけど)。

*ただし、プレイヤー的に、嫌な事だと判断されると、ハラスメントコードが発動する。



「胸が在る?」


今だに、サクラの胸を揉みながらアランが言うと。


「在るに決まっているだろうがっ!」


サクラが、いつの間にかアイテムストレージから取り出した【金属バット】を構えて、アランに向けて金属バットを振り抜く。


カッキーン!!


と、良い音を響かせながら、アランは大空に向かって飛んで行くと。


キラーン!


と、言う効果音と共に星になるエフェクトが大空に出てくる。


★ホームランバット:課金アイテム★

*ホームランバットで叩かれた対象は、大空に飛んで行くと星になる。

*ネタアイテムで、ホームランバットで対象を攻撃しても、犯罪者フラグは立たない。

*また、攻撃を受けた対象にもダメージは出ない。

*星に為った対象は、5秒後には元の位置にPOP(湧く)する。



「イキナリ! なにすんだ!」


元の位置にPOPした、アランが大声でサクラに抗議する。


「あぁんっ!? セクシャルハラスメントコードを押してやってもいいんだぞ?」


野太い声でアランに向かって言うサクラ。


「スイマセンでしたぁっ!」


サクラの言葉に、アランが物凄い速さで土下座をする。


「見かけは男性アバター。 でも、アバター自身と中身は女性ってか……。


ややこしいな……。」


ガーランドが、呆れた様に言う。


「そうそう。見かけに騙されがちだけど。 アバ自体は〝女性〟なのよね。」


「中身もリアルも、ちゃんとした女性だっ!」


ツバキの言葉に、サクラが声を上げて抗議する。


「大きいです……。」


ラクスがサクラの背後から抱きしめながら、サクラの胸に手を伸ばして揉みしだいている。


「何をしているのかな? ラクスさんは……。」


サクラが自分の胸を揉むラクスの手を掴みながら言う。


「確認していました。」


それは、もう。


見事なまでに、最高の笑顔でラクスがサクラに向かって言う。


「私も揉みたい……。」


「おいっ! 心の声が漏れてるぞっ!


そんなに揉みたいのなら、自分のを揉んどけっ!」


サクラの言葉で、水無月は我に返り。


自分の心の呟きが、声に出ていたのに気がつく。

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