第74話

「でも、まぁ。


ジョブスキルは、何度でも取り替えることができるからね。


それが、USOの面白い所でも在るんだけど。」


そう、USOでは。ジョブスキルは好きな様に再編成可能なのだ。


取得スキルの中から、何を下げるのかを指定して。


上げたいジョブスキルを上げる事ができる。



「よし、それじゃぁ。


最初に、何をしたいのか考えてみようか。


沙耶ちゃんは、何がしたいんだい?」


「何って言われても・・・」


私は考え込んでしまう。



「ん。悪い。言い方が悪かったな。


生産で物を作って遊びたいのか。


モンスターを狩って遊びたいのか。


対人で遊びたいのか。


と、言う意味だよ。」



キョウさん、見掛けはガラが悪そうに見えるんだけど。結構いい人です。


教え方も、頭ごなしに押し付けるのではなくて、私の考えを重視してくれる。


「俺は、飲み物を取ってくる。


ゆっくり、自分の考えを纏めてみるのも良い機会だ。沙耶ちゃんは何を飲む?」


「えっと、じゃあ、ミルクで。」


「OK。」


それだけ言うと、キョウさんは部屋から出ていった。


キョウさんが、鍛冶屋ブラックスミスGMなのだから。


私が鍛冶屋に、こだわる必要もないのだけど。


やっぱり、何時も一緒に遊んでいる。


蒼夜そうや、カナタ、シャナ、けいの武器防具は私が作りたい。


だから、鍛冶屋ブラックスミスを外すのは論外だ。


そうなると、裁縫ソーイングも必然的に上げる事になる。


これで、200ポイントのスキル値は消える。


残り500ポイント。




鉱石も、特殊鉱石に為れば値段が高くなるので、自分で掘って手に入れた方が安くつく。採掘マイニングりも外せない。


残り400ポイント。


私はステータスウィンドウを開いてスキル表を見る。


ギルドハウスは、此処ここを拠点にさせて貰えば良いとして。


自分達の家を購入するのは、当分先だろう。


建築学のスキルが有れば。ハウスのストレージを上げる事も可能だったので、建築学も取ろうと考えたが。


キョウさんに頼んで上げて貰えば問題はなくなる。


蒼夜、カナタ、シャナの3人は戦士系確定だろうから、回復?


いや、それもミリアさんの、お店で回復アイテムは安く手に入れることができる。


ミリアさんの、お店の回復アイテムは、NPC販売の品物よりも性能が良くて安かった。

 

《あれ?》


そう考えていた時だった。私は、ふと或ことに気が付いた。



《キョウさんって、魔法のスキルは取っていなかった・・・。


どうやって、掘り出した鉱石を精製場所まで持っていくのだろう?》


USOでは、掘り出した鉱石を精製場所。つまりは、溶鉱炉の所まで持っていかないとインゴットに精製できない。


溶鉱炉は、各町の鍛冶屋の施設に行けば無料で使える。


でも、鉱石を掘るのは街の外。


鉄の鉱石くらいなら、NPCからでも購入できるが。


特殊鉱石になると、街の外に堀に行かないといけない。


そして、採掘マイニングPKプレイヤーキラーから見れば、絶好のカモになる。


PKプレイヤーキラー

*プレイヤーキラーの略語。

*一般のプレイヤーを無差別に襲って楽しむ人。

*プレイヤーを襲って、所持アイテムや金銭を奪っていく。

*それ以外にも、レイドボス討伐中の邪魔をしてくる。

*だけど、緊張感を持たせてくれる。重要な害でもある。


なにせ、採掘マイニング師の殆どは、戦闘スキルを所持していない。


戦闘スキルを持っていないのに、高額の鉱石を掘り当てる事ができて。


尚且つ、襲ってPKプレイヤーキラーしやすいのが採掘マイニング師だ。


私も、何度かPKプレイヤーキラーに襲われて、ムカついたので戦闘スキルを取った程だ。


昨日も、やっと掘り当てた黒鉄50個の鉱石を、荷馬に積んで帰還しようとした所を襲われて奪われてしまった。


あの黒鉄が有れば、今日のドレイクとの戦闘も、かなり違ってたはずだ。


そう思うと、自然と表情が険しくなっていた様だ。


飲み物を持って、部屋に戻ってきたキョウさんに「どうした?何かあったのか?」と、


聞かれた程だった。


私は、飲み物を受け取り、今日の事を話し。


キョウさんが、魔法スキルも持っていないのに、どうやって鉱石を持ち運びしているのかを訪ねた。



「鉄のインゴットの元になる鉄鉱石の鉱石は、勢力戦の勢力拠点に行けば、通常のNPC価格の半額で売っていてね。


それを、ガイと、イクルが大量に購入してた。


何度も、帰還リコール)とゲートを使ってね。」


笑いながら言う、キョウさん。

 

「そんな、所が在るんだ!?」


「まぁ、普通の一般プレイヤーは、勢力には加入しないからね。


勢力に加入しないと、話しかけても何も表示されないNPCだから。


知らないプレイヤーが多いのは事実だ。」


「それじゃ、黒鉄以上の鉱石はどうやって?」


「あぁ~、それはアレだ。うちには便利なのが居るだろう?」


便利と言われて、私の頭の中で真っ先に浮かんだ人物は。


「イクルさんですか?」


「そそ。ダンジョン内でも鉱石が掘り出せるんだよ。


しかも、掘り出せる量は、なんと2倍!」


「2倍!?」


「ダンジョン内だと、2倍になるんだ。


普通の掘り師は、戦闘スキルを取らないだろう?


だから、普通はダンジョン内で掘り作業等はしない。


アイツがデスパに行く時には、俺も付いて行くのが普通だったから。


今でこそ、俺は引き篭りだけど。


サービス開始の最初の頃は、アイツの行く所で掘れる場所がありそうな所には引っ付いていった。」


ダンジョンの中で掘れるなんて知らなかった。と、言うか、確かに普通は掘らない。


と、言うよりも。掘っている暇がない。


モンスターが徘徊するダンジョンなどで。


「それに、最初の頃は。大工スキルじゃなくて。魔法スキルを50%入れたからな。」


「あ、やっぱりゲートをスクロールで使うために?」


「そうだよ。因みに、今の俺が魔法スキルを外せたのは、コレのお陰。」


そう言って、キョウさんが。右手の中指に嵌めてある指輪を見せる。

 

「指輪?」


「そう。 実はコレ、ユニークアイテムでね。


名前は帰還リコールリング。


名前の通り、魔法スキル0%でも。


確実に帰還リコールできる指輪。


しかも、祝福ブレスアイテム。」


「羨まし過ぎです・・・・・」


「まぁ、1回使用の度に。


修理粉パウダー5個を消費するけどね。


うちには、ほら。


ミリアさんも居るだろう。」


*パウダー(修理粉)*

*魔法道具の使用回数を元の上限の数値まで戻す事のできる粉。

*GMアルケミストしか制作できない為に、高額で取り引きされる。

*平均市場価格は、1個で3万ゴールドする。


確かに、キョウさんの言う通りだ。


此処には、かなり重要な役割の生産職のミリアさんと、キョウさんが居る。


「それに、亜里亜がインしている時は、ゲートで送り迎えして貰っているしな。 荷馬ごと。」


「アッシーちゃんですか・・・」


「違うよ。ほら、亜里亜って、攻撃特化の魔法職だろ。


対人仕様の。その為に、1人じゃ狩り何て無理なんだよ。」


「確かに・・・・魔法職でソロ狩りはきつそうですね・・・」


「だから、基本的には亜里亜も、イクルに引っ付いて、横から魔法を打つ。


俺は横で穴を掘り鉱石を入手する。


手に入れた素材と、鉱石を3人で荷馬に積んで持ち帰る。


これが、普通だったんだ。最初はね。」


そう言って、キョウさんが。昔を懐かしむように、目を細める。




「仲が良いんですね。」


「そりゃ、俺たち、家が近所の幼馴染ってヤツだからな。」


「幼馴染ですか。」


「幼稚園、小学校、中学校、高校と同じで。


最早、腐れ縁って感じだけどな。」


そう言いながら、声を出して笑うキョウさん。



「イクルと亜里亜なんて、もっと面白いぞ。


リアルで、わざわざ、イクルが亜里亜とは違う会社に入社したのに。


亜里亜の所属する会社が、イクルの居る会社に合併されて、一緒の会社になっているんだからな。」


大声を上げながら、笑うキョウさん。


「それは・・・なんと言うか・・・」


私も、笑うことしか出来なかった。


「まぁ、あれだ。


どんなスキルを取るにしても。


仲間の協力は必要不可欠って事だな。


1人で、何でも噛んでも出来る訳はないからな。


仲間を信じれば、思いっきったスキル編成も可能だってことさ。」


キョウさんの話を聞いて、私は取るスキルが決まった。


そして、何を取るのかを、キョウさんに話した。

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