第73話


* 沙耶&キョウ *


「うわぁ・・・・・凄い・・・・・」


キョウさんに、連れられて。案内された部屋に入り。


私が発した第一声がコレだった。


部屋の中には、普通のマイハウスでは、置いていない様な。


沢山の、製作機器類が配置されていた。


溶鉱炉、鉄床、機織り機、糸紡ぎ機、染色樽。


制作台、図版台、等の制作に使う器具が、ズラリと置かれている。


「この部屋は、今まで俺しか使わなかったから。


俺専用に為っていたが。


今日からは、沙耶ちゃんも使って良いからな。」


「これ、私も使って良いんですか!?」


「勿論だ。」


「有り難う御座います!」


キョウさんに向かって、頭を下げて言うと。


「礼なら、イクルに言ってくれ。 この部屋を作ったのはアイツだから。」


「イクルさんが、ですか?」


「あぁ、そうだよ。


俺は、作る専門だからな。


戦闘系のスキルは1つも取得していない。」


「えっ!?」


戦闘系のスキルを取得しないで、どうやって材料を集めたんだろう?


と、私が内心思っていると。


「イクルと、ガイと、亜里亜が取ってくる素材を、全部俺に渡してくれる。


取ってきた素材で俺が制作する。


スキル上げも兼ねて、奴らの武器防具を制作する。


要らない、武器防具は掲示板に乗せて、NPC価格より少し安めに販売すれば、飛ぶ様に売れていくからな。」


凄いな、この人たちは。


自分だけが、強くなる事に囚われずに。仲間と一緒に強くなっていく事を最優先に考えている。


私達とは大違いだ・・・・・。


「まぁ最も、この方法を考えたのは、イクルだけどな。」


キョウさんの出した名前に、私は顔を顰めてしまう。


あの人は苦手だ。嫌いでは無いけど。


「沙耶ちゃんは、アイツが嫌いか?」


私の表情を見て、キョウさんが聞いてきた。


「嫌いでは無いですよ・・・苦手なだけで・・・。」


「ぷっ!ははははははははは・・・・」


私の言葉を聞いて、キョウさんが声を出して笑い出す。


「むぅぅぅ・・・」


私が唸り声を出していると。


「いや、悪い。正直に言うと。


イクルの評判は余り良くないからな。


むしろ、アレで嫌われていない方が不思議な事だと思うよ。


アイツの事を、よく知らない人から見ればね。」


私が、キョウさんの言葉を考えていると。


「そのうち、判るさ。


それよりも、今は、スキルの慣例性だろ。」


「はい。」


「まぁ、教えると言っても。


おおよそは理解していると思うが。


沙耶ちゃんの、取得スキルを聞いても良いかい?」


キョウさんの言葉に、私は少し考える。


USOで、相手に自分のスキル構成を教えることは。


かなりのリスクを負う事になる。

 

例えるなら、女性で言えば、スリーサイズを教える様なものだ。


「まぁ、それが、普通の反応だ。先に、俺のを見せるから。」


それだけ言うと。


キョウさんは、ステータスウィンドウを操作して、自分のステータスを公開表示で迷う事なく私に見せる。



取得スキル


鍛冶屋 :100%

裁縫  :100%

大工  :100%

建築学 :100%

細工  :100%

地図解読:100%

採掘  :100%


取得OS:無し



聞いてはいたけれど・・・本当に生産スキルしか持っていない。


でも、地図解読って何?


「あのう・・・採掘マイニングりは、鉱石採取で分かるんですけど。地図解読って何に?」


私が尋ねると。


「地図解読ってのは、街中で販売されているのと。モンスターからドロップする2種類


あってね。


有り体に言えば、宝の地図なのさ。」


「宝の地図!?」


「そそ。それを、解読すれば。


宝箱の在る処(座標)が読める様になるのだけど。


解読しても、宝探しのスキルを持っていないと。


宝箱の埋まっている座標までは分からない。」


「でも、キョウさんは。


宝探しのスキルは持っていませんね?」


表示されている、キョウさんのステータスウィンドウを見ながら私が聞くと。


宝探しトレジャーハントのスキルは、イクルが持っているのさ。」


私が驚いていると。


「俺が解読して、イクルが座標を割り出す。


座標が分かったら、亜里亜とイクルが先行して宝箱の場所の座標の所に行く。


町外れで待機している、俺とガイの所にゲートを出す。


座標の所を、俺が掘り起こして細工スキルで解錠する。


箱を守る、POPモンスターを3人が倒す。」


そう、説明しながら。キョウさんが軽くウィンクする。


「箱の中には何が? やっぱり、ゴールドですか?」


「ゴールドは勿論だが。


それ以外にも、大量の秘薬が入っている。


それと、かなりの低確率だけど。


マジックアイテムが入っている時もある。」


「秘薬も手に入るんですか!?」


「そうだな、一番低レベルの、レベル1の地図で。


ハズレの時で、1万ゴールド前後と、同額くらいの秘薬が手に入り。


当たりの時で。


大体、5万くらいのゴールドと、秘薬が手に入るかな。」


「うわっ!それは、大きい!」


キョウさんの言葉で、私は驚く。


USOでは、初心者が狩れるモンスターを倒して、素材を売っても。1時間で5000


ゴールド稼げるかどうか。


私たちが苦戦した、ドレイクの皮で単価200ゴールドで売れる。


ドレイク1匹で採取できる皮の数が平均20~30枚。


しかも、裁縫ソーイング調理クッキング、もしくは解体のスキルを持っていないと。


採取した皮付き肉を、生皮と生肉に変換できない為に物凄くウェイトを取ってしまう。


それを、持ち帰って加工して皮になる。


生皮2枚で、皮1枚だ。


「それで、考え込んでる所なんだけど。沙耶ちゃん。ジョブスキル教えてくれる?くれない?」


キョウさんの言葉に、私は我に返る。

 

「あっ!こうです。」


私はステータスウィンドウを操作して、自分の所持スキルを公開設定で表示させる。


所持スキル


鍛冶屋:62.8

裁縫 :43.3

斬撃 :44.6

魔法 :20.8

穴掘り:53.3

調理 :33.8

木こり:21.2

大工 :23.8 

薬草学:33.1

治療 :37.8

人体学:32.9

戦略 :43.8


取得OS:無し



「これは、また・・・随分と沢山スキルを取ったね・・・」


表情を顰め苦笑しながら、キョウさんが私に言う。


「すいません・・・色々、やってたら。こうなっちゃんたんです。」


「ん、謝る必要はないさ。


USOじゃ、何をしようと自由なんだし。


どんなスキル編成になっても個人の自由だからね。


沙耶ちゃんの、この個性的なスキル編成も。


有りと言えば、有りなんだから。


ただ、何をしたいのか。


目的が決まっていないと言う証でもあるね。」


「はい・・」


俯きながら、返事をする事しかできない私。

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