第70話

「ん?聞き間違いでないなら、素早さが980って聞こえたけど?」


「聞き間違いじゃないわよ。


この子の素早さは、980有るのよ。普通じゃないわ。」



「俺は、テイマーじゃないから良く分からないが。


メアの素早さの最高値は400前後だった気がするけど?」



「そうよ。その通りよ。


普通は良くても405とかの数字よ。


だから、この子が異常なの。


他の数字は並以下なのに、素早さだけが異常な迄に高いのよ。」


「バグ?」


「かも知れないわね。一応、GMコールして運営に聞いてみるわね。」


そう言って、ルナはウィンドウを開いて、Gゲームマスター呼び出しに掛かる。


「すぐ、来れるらしいわ。」


ルナが俺に伝えるが。



俺は、ルナがテイムした、ロングのナイトメアを見ている。


と、突然。ルナとドラゴンのリズル。そして、ロングのナイトメアが俺の視界から消えた。



「はや・・・」


恐らくGMが来て、運営側のテリトリーに連れて行ったのだろう。


普段は、いくら待っても中々来ないくせに。


今日は、滅茶苦茶はやいな・・・・。



リアルタイムで、約5分ほどして。


ルナとドラゴンとナイトメアが、俺の前に姿を現した。



「お帰り。」


「只今、って。待ってたの?」


「うん。」


「何で?」


「何となく?」


「質問に、疑問系で返事を返す?」


「だめ?」


「別に、構わないけど。ほんと、おかしな人ね。」


「自他共に認めている。」


「あはは・・・。」


ルナが笑うと。



「それで?どうだった?」


「バグでは無いみたいよ。


何でも、OSオリジナルスキル取得と同じくらいの確率でPOPするみたね。


極めて、希にだけど。」


「ほぉぉ・・・・」


そう言って、イクルはナイトメアに視線を向ける。


「なに?気に入ったの? 素早さ以外は並以下よ?」


ナイトメアから視線を外して、ルナの方を見る。


「売ってくれないか?」


「乗馬スキルは、いくつなの?」


「GMだ。」


「完全バード特化で、何で乗馬がGM!?」


「言っただろ。 変わっているって。」


ルナは、黙ったままイクルを見る。


「で、売る?売らない?」


ルナは考えている。普通なら、こんな偏ったステータスのナイトメアなんて。誰も買わないはず。


なのに、目の前の男性は欲しがっている。何故?


ナイトメアの特典は。乗れる上に、ガード役にも成る事。


その為に、普通なら。HPや、腕力に防御力等を重視する。


「別に構わないけど。一つだけ教えてくれない?」


「答えられる事なら。」


「なんで、この子なの?」


「俺が探していた、相棒になれるかも知れないから。」


「メアを相棒って呼ぶのね。ふふっ、良いわよ。」


そう言って、ウィンドウをいじり。イクルに向けて、ナイトメアの所有権を壌土するコマンドを押す。


「金を払ってないぞ?」


いきなり、自分にメアを壌土するルナに向かってイクルが言うと。


「無料でいいわよ。」


ルナに向かって、何かを探るような視線で見るイクル。


「そうね。強いて言えば、貴方がイクルだから。」


「俺の名前?」


「個人でキャッスルを購入した人物って、貴方でしょ?」


「まぁね・・・・」


「そして、聞いた話では。


貴方と、貴方の仲間は、大のギルド嫌いだって聞いてる。」


「まぁ。あながち、間違いではない・・・」


別に嫌いなのではなく。面倒だから入らないだけなのだが。


それを言うと、話がややこしくなりそうなので言葉を飲み込んだ。


「その、ギルド嫌いの貴方がギルドタグを付けてる。


興味が湧いたの。」


確かに、今のイクルの名前の上には。ギルドを表す【ギルドタグ】が表示されている。


「私も入れてくれない?」

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