第63話

「俺達5人はね。基本的に縛られるのが大嫌いなんだ。


だから、ギルドに所属しない。」


「なら、自分達で作れば良いのでは?」


けいが率直な意見を述べる。


「あはは、それこそ無理だ。」


イクルは笑いながら答える。


他の4人も笑っている。


「俺達はね、自由の塊なんだよ。


それこそ、ギルドなんて作っても誰も管理しない。だろう?」


「メンドクサイ。」


「同意。」


「同じく。」


「家事があるので無理です。」


イクルの言葉に、亜里亜、ガイ、キョウ、ミリアの4人が大きく頷く。


どんだけ、面倒くさがりなんだよ!と、心の中でツッコミを入れる5人。


「まぁ、アレだ。ギルドには所属するけど、基本的には幽霊ギルド員だと思ってくれればOK。」


「それって、場所は貸すから。後は自分らでどうにかしろってことですか?」


「そだね、基本的にはそうなる。勿論、手助けが欲しい時なら、手を貸せる時なら手助けはするよ。」


「少しだけ、相談する時間をもらっても良いですか?」


「勿論、好きなだけ相談してくれ。俺のは、御願いなんだから。」


蒼夜達5人は、部屋の隅に移動して、相談をはじめる。



 * * * * *


 

「まさか、アンタが。こんな事を考えていたなんてね。」


亜里亜が呆れた様な表情で、イクルに話しかける。


「同感だな。そこまで、気に入ったのか?」


ガイも5人を見ながらイクルに話す。


「そだね、以前に蒼夜を招待した時に。彼だけを、アイテム置き場に残してログアウトしたんだよね。」


「うわ・・・お前、意地が悪いな・・・。」


キョウがイクルを見ながら言う。


「ですね。初心者には宝の山が目の前に在るんですもの。誘惑に負けますよ普通は。」


ミリアが言う。


「だが、彼は誘惑には負けなかった訳だ。」


ガイが聞くと。


「ソフィアの話だと、部屋の中で30分ほど惚けていたらしいけどね。」


クスっと笑うイクル。


「彼の意地の悪さは折り紙つきですからね。」


「うわっ。何気にミリアさんが、お怒りになってる。」


「当たり前です。もし、彼が持ち逃げしていたら。


彼自身が、USOプレイ中は後悔の念で押し潰される可能性もあるのですよ。


そうなってたら、貴方はどう責任を取るつもりだったんですか。」


「それに関しては、責任は持たない。自分の行動は自分で取るのが大人です。」


「彼らは、多分、未成年ですよ。」


「自分で判断して、行動できるなら。既に大人だですよ。たとえ未成年でも。」


「それで、俺に〝コレ〟を買って来いと言ったのか・・・・」


そう言って、キョウがイクルに丸い玉を渡す。


「サンキュッ。」


キョウに向かって礼を言うイクル。


「何処まで、計算しての行動やら・・・・」


呆れながら、イクルに言うキョウ。


「多分、計算なんてしてないわよ。イクルは感性だけで動くから。」


亜里亜が言うと。


「否定はしない。」


ニッコリと笑いながら答えるイクルだった。



*   * 相談中の蒼夜達 *   * 



「どうする?」


蒼夜が皆を集めて、最初に発した言葉がコレだった。


「どうするも何も・・・・なぁ?」


カナタが、他の面々を見ながら言うと。


「私達の、今の貯金額って、いくらか知っていますか?」


けいが言うと。


「200万くらい?」


カナタが発言すると。


「98万です。」


「うぇ、そんなに少なかったのか?」


「私達の装備代だけで、幾らすると思ってんのよ。」


驚くカナタに言ったのは沙耶だった。


「うっ・・・」


カナタが短く呻く。


「今日の、ドレイク討伐だって。辛うじて、倒せる程度なのよ。」


「だよな・・・」


沙耶の言葉に、蒼夜が歯切れ悪く頷く。


「私の秘薬代だって、馬鹿に成りませんしね・・・」


けいが落ち込みながら言う。


「ほんっと。みんな、どうやって稼いでいるんだろう・・・」


シャナが、イクル達の方を見ながら言う。


「一番、小さな家で、幾らだっけ?」


蒼夜が聞くと。


「ストレージ100の、5メートル四方の最小のハウスで500万・・・」


沙耶が答えた。


「ストレージ100かぁ・・・せめて、500は有ると助かるのだけど。」


蒼夜が苦い顔をしながら言葉に出す。


「ストレージ500だと、最低でも1000万は掛かるぞ。」


カナタが発言する。



「ほぼ、2週間で、100万だから。 単純計算で・・・えっと・・・」


「18週間。日数に直せば、132日。


月にすれば、約4ヶ月と10日前後よ。」


計算するカナタに、シャナが言う。


「うぇ、そんなに?」


「私達が、少しは上達して、狩りの狩り方を覚えてペースアップすれば。少しは早くなるわよ。」


ゲンナリするカナタに、沙耶が言う。

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