第61話

「それで?俺に要件があるんだろう?」


ガイが、イクルに向かって言うと。


「うん。ガイに、この人達の先生に為って貰おうと思ってね。」


「はっ?」


蒼夜そうや君と、カナタ君と、シャナさんの3人に。スキルの使い方を教えてあげて欲しい。できれば、ガイの戦い方を教えてあげてくれてもいい。」


「何で俺が?」


「ん。5人掛りとは言え。スキル無しで、数匹のドレイクを倒してたんだよ。この5人は。誰かに似てるでしょ。」


そう言って、クスクスと笑うイクル。


「んっ、んっ。凄いな、それは。実に興味深い。」


「えっと、ガイさん。」


カナタが遠慮がちに、ガイに話しかける。


「ガイで構わない。」


「あっ、はい。ガイ。」


「なんだ?」


「えっと、間違ってないと思うけど。もしかして、勢力戦ランキング1位のガイで合ってますよね?」


「合ってるぞ。」


「そうだよぉ。」


ガイと亜里亜の声が重なって返される。



「うぉ!すっげぇ!こっちも有名人だよ!」


カナタが興奮して声を上げる。


他の4人も目を丸くして、ガイを見詰める。



「ガイ。目立ち過ぎ。」


「スマン。今度からは気を付ける。」


「ん。多分、これからは、今以上に目立って貰う事になるかも知れないから。不問にしとく。」


イクルの言葉に、ガイは困惑の表情を見せる。



「何を企んでいる?」


「ん、色々ね。色々。」


「イクルの色々は、色々と怖いからねぇ~。」


亜里亜が言うと。



「なに、すぐに判るさ。」


チラっと、沙耶さやの方を見れば。沙耶の表情だけは芳しくなかった。


蒼夜、カナタ、シャナ、けいの名前は出たのに。自分の名前だけが出なかった事に不満を感じているのだ。



「あの、イクルさん。ガイに教えて貰えるのは3人だけなんですか?」


そこに、蒼夜が沙耶の心情を察したのか、イクルに声をかけた。


「うん、3人だけだよ。なんで?」


意地の悪そうな表情を浮かべて、イクルが蒼夜に返事を返す。


「さっきの非礼は謝ります。本当にスイマセンでした!だから、沙耶さやにも教えてあげてください!」


そう言って、蒼夜がイクルに向けて腰を90度に折り曲げて頭を下げる。


「え?何の事?」


イクルは惚けてみせる。


「「「お願いします!」」」


沙耶さやを除く4人が席を立ち、イクルに向かって頭を下げている。


沙耶は頭を下げる4人に目をやり、涙を浮かべていた。


「はいはい!そこまで!イクルも、余り遊ばないの。」


パンパンっと。両手打ち合わせて。アリアが大きな声で言う。


「ねっ。良い子達でしょ。」


イクルがニッコリと笑いながら言うと。


「ホント、イクルが気に入った訳が分かるわ。」


「確かに、仲間思いだな。」


亜里亜と、ガイが。5人に視線をやって、感想を言う。


その時、ドアが開いて。1人の男性が部屋に入ってくる。



「何?この状況?」


頭を下げる知らない4人と、泣きそうな表情をしている、これまた知らない女性が1人。


「キョウ、待ってたよ。ソフィア、ミリアさんを呼んできて。」


「畏まりました。」


一礼して、ソフィアが部屋を出ていく。


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