ツヴァイサーバー編

第57話

蒼夜達を部屋に案内して、ドアの横のベルを押す。


イクルは一番奥のソファーに腰掛ける。


「空いてる所に座ってね。」


イクルに言われて、カナタとシャナは左側の3人掛けのソファーに腰掛け。


けい沙耶さやは右側の3人掛けのソファーに座る。


蒼夜そうやは、イクルの正面の1人掛けのソファーに腰を下ろした。


蒼夜以外の4人は、席に座るも。視線は部屋の中をキョロキョロと彷徨わせ、忙しなく動き回っている。


「いいなぁ~。マイハウス。」


「うんうん。いつかは持ちたいよね。」


「ですねぇ。」


カナタ、シャナ、けいが言葉を漏らす。


「でも、このタイプの家って売ってたっけ?この間、権利書の販売所に行ったけど。こんな、でかいタイプのハウスって無かったような?。」


どうやら、カナタはマイハウスの値段を見に行った事があるようだ。


首都には、ハウス販売所が在り。そこで、権利書を購入すれば、後は建築可能な空き地を見つけて、ハウスの権利書を使えば、家の土台が出来上がる。


出来上がった、家の基礎を。自由にカスタマイズで床や壁、屋根等を足していけば。即席で家は完成する。


こだわりが在る人は、ココからは有料でゴールドを使いに。


特殊なデザインの、タイルや壁などの、カスタマイズが出来る。


それでも、もっと特殊なデザインが欲しいと言う人は。


建築のスキル持ちの人に頼んで、自分の好きなデザインの床や壁を作る事ができる。


当然、この時に、頼んだ建築スキル所持者に報酬として、お金を払うのだが。


報酬金額以外にも、制作する家の材料費なども用意しないとならない。


「キャッスルタイプは、もう手に入らないからね。」


「えっ?」


カナタの言葉に、イクルが答えると。カナタが頓狂な声を返す。


「このタイプの家は、正式サービス開始1ヶ月だけの、期間限定で販売された【サーバーレア】の家なんだよ。」


★サーバーレア★

プレイヤーが遊ぶ為に、選ぶサーバーと言う世界が在る。

世界の中で、1つ。もしくは、数個しか存在しないアイテムの事を言う。

熟練者プレイヤーの間では【鯖レア】の呼び方で通る。


正式サービス開始当初は、誰でも自分が強くなる事を目的として、稼いだゴールドは装備品に消えて行くのが普通である。


その中での、1ヶ月の限定販売で、家の値段は1億ゴールド。


余程の、稼ぎ方をしないと、資金を集めるのは不可能に近い金額だった。


現に、現在キャッスルタイプが現存する数は、僅かに11個だけ。


その内の10個は、ツヴァイ鯖でも有名な、大手ギルドが、ギルドハウスとしての購入。


つまり、個人で購入している所有者はイクルだけ。


「サーバーレアを、1人で購入したんですか!!」


「うん。」


素晴らしいまでの笑みを浮かべながら、カナタ達に向けて返事を返すイクル。


「いやぁ~。あの頃は必死だったからね。相当無茶をしたよ。」


あははっ。と、笑いながら言うイクルだが、当時の苦労は凄まじかった。


が、それは。又の機会の御話。


「よく、貯めたね・・・そこまで・・・」


「いやぁ~、実は最終日に、どうしても500万ゴールドほど足りなくてね。フレンド連中に頼み込んで借りて購入したんだよ。」


呆れる沙耶さやに、苦笑しながら返事を返すイク

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