第55話
「
片手剣のPK、小次郎がガーランドに言う。
小次郎の言葉を聞いて、ガーランドの表情がニヤリと笑うのが見て取れた。
「「
ほぼ同時に、2人の声が重なり、スキル同士が相殺される。
「
「
ガーランドのバッシュを、小次郎が
*注意*
スキルワードは、連続スキルならば全部を言わなくても、連続スキルのワードさえ言えば発動できる。
スキル同士が相殺された瞬間、小次郎が右足でガーランドに蹴りを出して体制を崩させる。
「
ガーランドに向かって、小次郎の
「くっ!」
小次郎の
「換装2。
武器をハルバードに換装させて、小次郎がスキルを発動させた。
小次郎のスキルを食らって、ガーランドは……。
辛うじて生き残っていた。
HPゲージは、0に近いが耐えていたのだ。
「ぐぁつ!」
そこに、弓使いアランの矢がガーランドに突き刺さり、HPゲージを0にして、ガーランドの死体が地面に残る。
小次郎がアランの方に視線を向けると。
「タイムオーバーだ。 文句は言うなよ。」
小次郎に向かってアランが言う。
3人のPKは、地面に横たわっている水無月、彩、ラクス、ガーランドの死体から装備品とゴールドを回収すると、
「スマン。」
幽霊の状態で、ガーランドが水無月たちを見ながら謝る。
「ううん。 私こそゴメンね。」
水無月。
「時間稼ぎも出来なった。」
彩。
「申し訳ございません。」
ラクス。
気まずい雰囲気を引きずりながら、4人は幽霊状態のまま徒歩でユノーの町まで戻り蘇生屋のNPCヒーラーに生き返らせてもらう。
「「「「ダンさん! ゴメンなさい(すまない)!」」」」
4人揃えて声を出しながら、ダンに向かって頭を下げる。
4人の一斉謝罪に、ダンが驚きながら事情を尋ねる。
4人はダンに、PKされたことの経緯を話した。
「まぁ、対人戦は〝慣れ〟だからな。
どこまで、狩り中でも周囲に気を配っていられるか。
対人でも、それは同じ事で。
どこまで、周囲を見ていられるか。
どれだけ早く、
ダンは4人に向かって笑顔で答える。
「どうすれば、対人慣れできます?」
水無月がダンに尋ねる。
「そうだなぁ……。」
顎に手を当てて、4人を見ながらダンが考える。
「まず、ガーランド。
ガーランドは1対1での対人戦では、間違いなく上級プレイヤーの域に為るが。
武器での戦いに、こだわり過ぎる傾向がある。
別に、剣士としての戦い方に縛る必要はない。
周囲の障害物や、足技ってのもある。
足技はダメージこそ0~1だが、相手の体制を崩すのに有効だ。」
確かに、先程のPK戦でも、ガーランドは相手の足技をまともに喰らい、体制を崩した所で決め手を入れられてしまっていた。
「次に水無月。
水無月は、目の前の敵に集中しすぎる傾向がある。
それは悪い事ではないが、良い事ばかりでもない。
視野が狭いということは、予期できない事がらには反応できないという事だからな。
すこしだけ、目の前の事以外の動きに注意すれば良いだろう。
それと難点は、駆け引きに不慣れという事だ。
まぁ、駆け引きだけは。回数をこなして、慣れていくしか方法がない。」
「次に彩。
彩は、癖なのか性格なのかは判らないが。
高威力の魔法を使いたがる傾向がある。
これも、対人戦ではNGだ。
数十人以上の、集団戦においては有効だが。
少人数での対人戦では、威力が低くても相手のスキルの発動の邪魔をする事のほうが有効だ。」
「最後にラクス。
ラクスの場合は、対人慣れ以前の問題で。
ラクスはVRゲーム自体が初めてだろう?」
「はい。」
ダンの言葉に、静かに答えるラクス。
「ラクスはゲーム慣れしていなせいで、
イキナリは難しいとは思うが、
相手より先に見つける事ができれば、即逃げもできるし、臨戦態勢も直ぐに取ることが可能になる。」
要約すれば、ガーランドは武器以外での小ワザの使い方の練習。
水無月は、複数人を相手に出来る練習。
彩は、初期魔法の繋ぎ方の練習。
ラクスは、
「ま、今日の事は。 高く着いたが、良い授業料だと思えばいいさ。」
ダンが4人を見ながら言う。
確かに、私たちは。
ラクスが居る御陰で、
ダンさんが作ってくれる、
「それと、言い忘れていたが。
複数での対人戦で、一番重要なのは【連携】だからな。
仲間の動きを何処まで把握できて、このタイミングなら仲間が何をしてくれるのか。
〝どう動いてくれるのか?〟〝それを信じられるのか?〟
仲間の動きを見て行動して、相手の動きを見て自分も動く。
はっきり言って、かなり難しいぞ対人戦は。
でも、だからこそ。
対人戦が上達すると、凄く面白く感じる。」
ニッ、と笑いながら言うダン。
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