第53話

「きゃあっ!」


突然、ラクスの悲鳴が聞こえたかと思うと、ラクスの死体が地面に転がる。


★死体★

*USOでは、プレイヤーが死亡すると、死亡したプレイヤーの死体が地面に残る。

*死体の中には、死亡したプレイヤーの装備や、ドロップしたアイテムにゴールド等も残っている。


何事かと後ろを振り返れば、其処には赤色のネームプレートの3人組のプレイヤーが居た。


PKプレイヤーキラーだ。


PKプレイヤーキラー:ゲーム用語★

*一般プレイヤーを狙い、倒して回るプレイヤー達。プレイヤーキルとも呼ばれてる

*一般的には、愉快犯で【悪】で在るが。

*ゲーム内において、プレイするプレイヤー達に緊張感を持たせてくれる貴重な存在でもある。

*でも、たまにウザい(笑)


3人のPKプレイヤーキラーの内の1人が、弓を構えている所から見ると弓職のようだ。


恐らく、弓スキルでラクスに攻撃して、クリティカル判定でも出たのだろう。


「彩! 弓の奴を狙え!」


「水無月は左の大剣を!」


ガーランドが、間髪いれずに私たちに指示をする。


ラクスは、幽霊状態の姿で少し離れた位置に佇んでいた。



★幽霊状態★

*死亡したプレイヤーは、【幽霊】と呼ばれる状態になる。

*幽霊状態では、死亡して幽霊に為っているプレイヤーが話しかけないと、周囲からの視認は不可能な状態になっている。

*幽霊状態のプレイヤーの言語は、何を言っているのかは理解できない。

*幽霊状態のプレイヤーの言葉を理解するには、【霊媒師】と呼ばれるスキルが必要になる。


炎の矢ファイアーアロー! 炎の柱フレイムピラー!!」


彩が詠唱して、魔法スキルが弓使いに当たって……。いない。


弓使いのPKプレイヤーキラーは、あやが詠唱モードに入ると、素早くバックステップで魔法の射程外に出たのだ。


その為に、彩の魔法スキルは発動はしたが。


対象である弓使いが、魔法の射程内から居なくなってしまった為に、魔法自体が強制キャンセル状態に為ってしまったのだ。


*注意*

*魔法には最大射程距離が設定されている。

*最大射程距離から、対象が外れた時は、魔法の発動が強制キャンセルされる。

*強制キャンセルされると、魔法は不発なのに触媒である秘薬とMPは消費される。


魔法が強制キャンセル為に、彩が次の魔法の詠唱を始めた。


「フレ…」


爆炎フレア!を詠唱しようとしたあやに、弓使いのPKプレイヤーキラーの攻撃が彩に当たり、あやの魔法の詠唱が中断される。



二連続射ダブルアロー! 精密射撃スコープ! 追撃の矢ホーミングアロー!」


二連続射ダブルアロー!:弓スキル★

*対象に向かって、2本の矢を素早く放つ。

*消費MP16 ディレイ時間8秒。


精密射撃スコープ!投擲&弓スキル★

*投擲武器で、命中精度を上げるスキル。

*消費MP5  ディレイ時間:6秒。


追撃の矢ホーミングアロー:弓スキル★

*対象が動いても、少しだが命中軌道が修正される。

*消費MP15。 ディレイ時間25秒。



あやは、咄嗟に飛んできた矢を避けようとしたが。


一つ目の矢の回避には間に合わずに当たってしまい、2発目の矢は回避に成功したかのように見えたのだが。


「きゃぁ!」


彩の悲鳴と共に、地面にあやの死体が転がる。


2発目の矢を避けようと、3歩ほど横移動したのだが。


矢は、彩を追うように軌道を曲げてあやに突き刺さって、彩のHPを0にしたのだ。

 

私は、ガーランドの指示通りに、PKプレイヤーキラーの大剣使いに向かって駆け出す。


「換装2。 加速突きアクセル!」


大剣使いのPKプレイヤーキラーは、換装システムで武器をレイピアに持ち帰ると突進系スキルを使う。


加速突きアクセル:刺突スキル★

*刺突系武器での最速突進攻撃スキル。

*ハルバードの場合は最速攻撃+ノックバック+気絶の効果有り。

*消費MP16 ディレイ時間17秒



やばい! っと、思った時にはPKの攻撃が私に当たり、スキル効果で私の身体が僅かに後方に弾かれる。


だけど、HPは殆んど減っておらず、気絶効果も免れた。


《いける!》


内心で私は思った。


「換装1。


全力振りフルスイング! 衝撃陣ショックウェーブ! 円陣殺サークルエンド!!」


PKプレイヤーキラーは換装で武器を大剣に戻すと、私に向かって攻撃してきた。


受け流しパリィ! 強斬撃スラッシュ! 二連強斬撃ダブルスラッシュ!」


相手のスキル合わせて、私もスキルを3連続で発動させる。


PKのスキルと、私のスキルが、お互いのスキルを相殺する。


危なかった。


レイピアは、どうやら距離を詰める為だけに使用したようで。


本命は大剣だったようだ。


私も相手も、スキル後の硬直で身体が動かなくなる。


スキル後の硬直が解けたのは、私の方が先だった。

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