第50話

「それじゃ、お願いします。」


そう言って、イクルは軽くお辞儀をする。


蘇生リザレクション!」


けいの言葉に連動して、呪文スペルワードが口から発せられて、イクルを光のエフェクトが包む。


ボフン。魔法は失敗して、イクルは生き返らなかった。


「もう1度、行きます。蘇生リザレクション!」


再度、イクルを光のエフェクトが包み込む。


ボフン。


が、またしても失敗。


「あうぅ・・・MP回復待ち・・・・」


どうやら、けいのMPが尽きたようだ。



★魔法の失敗★

USOでは、魔法が失敗した時でも、魔法の触媒と為る秘薬材料と、魔力MPは消費される。

失敗時の消費魔力MPは、成功時の半分が消費される。


「OKOK。待ってるから、慌てなくていいよ。」


イクルがけいに返事を返す。


いつの間にか、蒼夜そうや沙耶さやもダンジョンから出てきて、けいとイクルのやり取りを見ていた。


「彼、何で死んだの?」


「余程の数に囲まれたのか?」


シャナと、カナタが蒼夜そうやに尋ねる。


「えっと・・・・吐息ブレス1発で逝った・・・・」



「「はい??」」


蒼夜の返事に、シャナと、カナタの声がハモって帰ってきた。


「彼。 ドレイクの吐息ブレス1発で、死亡したのよ・・・・・」


「・・・・・・生命力HP減ってた?」


カナタが尋ねると。


「見た感じは、満タンだったと思う。」


蒼夜が答える。


「うぇ!?ソロでドレイク狩り出来る人が。ドレイクの吐息ブレス1発で死亡?冗談だろ?」


「本当よ。」


沙耶さやが、驚くカナタとシャナに、笑みを引き攣らせながら答える。


4人の前では、5度目の蘇生リザレクションを唱え終えたけいと、復活して幽霊ローブ1枚の姿で立っているイクルの姿があった。


「有り難う。 けいさん。」


「いえ、こちらこそ。すぐに復活させれなくてゴメンなさい。」


「イクルさん。回収に行かないと。」


復活したイクルに向かって、蒼夜が声をかけると。


「あぁ、全然大丈夫。回収はしないから。」


「「「「えっ!!」」」」」


5人の声が見事に重なる。


「どうせ、素材が数個と。 壊れる寸前の竪琴しか残ってないから。回収しなくても問題ないよぉ。」


「いや、防具は?」


カナタが困惑の表情でイクルに尋ねると。


「幽霊ローブだけだけど?」


「いや、何で。そこで、不思議そうな顔で答えるんですか!普通は防具とか着るでしょ!?」


「ん?防具を着たら、最大所有量ウェイトが増えて、素材の持ち帰り量が減るじゃん。」


さも、当然と言わんばかりにイクルが答える。


「それで、あの量を持ち歩けたのか・・・・・」


蒼夜そうやが1人納得する。


以前、イクルとペア狩りした時に。イクルの素材回収量が、半端なく多かった事に驚いたものだ。


「えっと・・・。 予備の武器とかは?」


シャナが遠慮がちに聞くと。


「竪琴2個有れば十分。それ以外は持ち歩かない!」


「あんた、それで狩りしてたの?」


イクルの答えに、沙耶さやが呆れた表情でイクルに尋ねる。


「他に何かいる?」


「いやいやいや・・・。回復剤とか、包帯とか要るでしょ・・・。普通は・・・。」


カナタも呆れながら、イクルに言うが。当のイクルは、どこ吹く風ど。


「取り合えず、俺の家に行かない?流石に、楽器無しで、ダンジョン前で立ち話もなんだし?」


とことん、マイペースを崩さないイクル。


「ですね・・・。けい、このルーン石でゲートを開いてくれ。」


蒼夜が、腰袋からルーンブックを取り出し、桂にルーン石を手渡す。


転移門ゲート

赤い色をした、転移門ゲートの魔法。

転移門ゲートと言っても、高さ2メートル50センチ、幅1メートルの光の塊。


「うん。」


けいは短く返事をして、ルーン石を手に持ち転移門ゲートを唱える。


6人の前に、赤い色のドアのゲートが出現して、蒼夜がドアを開いて中に入っていく。


蒼夜の後に続いて、イクル達5人も入っていく。


そして、ゲートを出て蒼夜そうや以外の4人の第一声が。


「「「「デカッ!!!!!」」」」


4人の声が、綺麗に重なって発っせられる。


その4人を見て、既にイクルの家を知ってる蒼夜は横でクスクス笑い。


イクルは満足そうな表情を浮かべていた。

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