第49話

「ヒール!」


女性の声が聞こえて、蒼夜を光のエフェクトが包み込む。


光に包まれた蒼夜のHPが見る間に7割まで回復する。


「有り難う!けい


「カナタ!右!」


けいの声に釣られて右を見れば、更に2匹のドレイクが蒼夜そうや達をロックしていた。


最初の残りの1匹と、新たに5匹のドレイクにターゲットロックされて窮地に立たされる蒼夜達。


「湧きすぎだよ・・・・」


シャナが、か細い声で言う。


「だな・・・・」


カナタが同意。


次の瞬間に、右手のドレイクの2匹が炎の玉を吐き出す。


炎のブレスは、カナタと沙耶さやに当たり。沙耶のHPゲージを3分の1を奪う。


カナタのHPも4分の1を奪れた。


ブレスの直撃を受けて、カナタと沙耶さやの体制が崩れる。


そこに、蒼夜そうやけいに向かい。ドレイクが接近しての噛み付き攻撃と、前足の爪で攻撃を繰り出す。


「アースウォール!」


けいが詠唱していた呪文スペルを唱えると。地面が盛り上がり、土の壁がけいに向かってくるドレイクの進路を塞ぐ。


蒼夜はドレイクの攻撃を躱しながら、剣を薙ぎ払い反撃をする。


そこに、追い討ちを掛けるように。新たなドレイク2匹が、蒼夜達の前方にPOP湧くする。


《あ・・・・終わったな・・・》


5人が諦めた瞬間。


竪琴の音色が響き渡り、蒼夜達をターゲットロックする、全ドレイク達のターゲットロックが外れた。


蒼夜そうや以外の4人は、何が起こったのか理解できていなかったが。


蒼夜は、この現象を知っている。


「みんな!こっちだ!逃げるぞ!!」


そう言って、沙耶さやの腕を撮り、音楽が聞こえた方に走り出す。


蒼夜が走り出したことで、カナタにシャナにけいも、蒼夜が向かう方に走り出す。


蒼夜の向かう先には。


イクルが、ニッコリと笑みを浮かべながら、竪琴を構えて立っていた。


「今の内に、出口に向かってね。」


それだけ言うと、イクルは更に竪琴を奏で始める。


煽動アジテーションを奏で、前方の3匹を争わせる。


更に、もう一度かなでで、平和ピースで周囲一帯のドレイクのターゲットロックを外して、イクル自身も出口に向かって歩き出す。


出口の方を見れば、蒼夜と沙耶がイクルの方を見て大声を上げていた。


「「うしろ!うしろぉぉぉ!!!!」」


イクルが2人の言葉を理解して、後ろを見れば。


ドレイクが1匹、イクル目掛けてブレスを吐き出そうとしていた。


《あ・・・1%が出たのか・・・》


USOでは、どれだけスキルを上げて上限にしても、100%成功と言う言葉はない。


99%の成功値と、1%の失敗値。


これが、USOでの不文律。


そして、次の瞬間、火の玉ブレスが吐かれてイクルに直撃した。


火の玉ブレスがイクルに直撃し、次の瞬間にはイクルが死亡エフェクトを発しながら死体が地面に転がる。


そして、幽霊になったイクルが、蒼夜と沙耶の目の前に現れる。


「うそ!!」


「一撃死!?」


沙耶さやの言葉に続き、蒼夜が驚きの声を上げた。




イクルが2人のそばに歩いて行き、何やら話しているが、霊媒のスキルを持っていない2人には。イクルの言葉が理解できるはずもなく。


イクルは2人の前を通り出口から外に出る。


幽霊になった状態で、ダンジョンの中から出てきたイクルを見て。


カナタ、シャナ、けいも驚いていたが。


けいがイクルの前に立ち話しかけた。


「蘇生させて貰えませんか?」


「出来るの?」


「はい。成功率は高くないですが。魔法のスキル上げも兼ねて、やらせて欲しいのですが。」


どうやら、けいは霊媒のスキルホルダーだったらしい。


幽霊状態のイクルの言葉を理解した。

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