第48話

「今日は、仲間達と来ているので、遠慮しておきます。」


蒼夜そうやの後から、4人ほどのプレイヤー達が見える。


「あら、残念。荷物持ちをGET出来なかったか。」


そう言って笑う俺。


「あはは、また今度、荷物持ちさせていただきますよ。」


「誰?」


蒼夜の後ろの、蒼夜と同い年くらいの女性が蒼夜に尋ねる。


吟遊詩人バードのイクルさんだよ。ほら、一昨日の晩に話した人。」


「あぁ、蒼夜の言ってた、成金吟遊詩人バードね。」


沙耶さや!」


沙耶と呼ばれたプレイヤーに、蒼夜が険しい表情で何かを言おうとするが。


「あぁ~、気にしない気にしない。」


すかさず、俺が蒼夜をなだめる。


「私だって、その内、あのくらいの武器を作ってやるんだから。」


俺を睨みつけて、他のメンバーの元に向かう沙耶。


「すいません、イクルさん。」


蒼夜そうや君が、俺に頭を下げる。


「全然OK。ただの、ヤキモチだよ。」


「えっ?」


「彼女だろ。君のHQハイクオリティー武器防具を作ったのは。」


「そうですけど。良く判りましたね?」



「ん~、何となくね。それに彼女「作ってやる。」って言ってたでしょ。


彼女、鍛冶屋ブラックスミスなんだろ?」



「はい。鍛冶屋ブラックスミスのスキル持ちです。」


「自分が作った武器を、君が使ってなくて、気分を害したようだ。


ただの、嫉妬だよ。気にする事はない。」


「ほんっと、スイマセン。」


再度頭を下げる蒼夜。


「蒼夜!いつまで話してるのよ!さっさと、狩るわよ!」


俺と話している事も気に入らないのか。沙耶さやが蒼夜に向かって大声で急かす。


「いま行く! それじゃ、また今度。」


大声で返事をして、軽く頭を下げて蒼夜が仲間の元に走って行く。




 * * * 視点:蒼夜パーティー * * *



「蒼夜!」


沙耶が、蒼夜に向かって叫ぶ。


ドレイクに向かって、蒼夜が手に持つ剣を振り下ろす。


蒼夜が振り降ろした剣は、ドレイクの頭部を斬るように切り裂いていた。


頭部を切り裂かれたドレイクは倒れて動かなくなる。


「カナタ!」


自分が倒したドレイクから、次のドレイクに視線を向ければ。


カナタの後ろから、ドレイクが襲いかかろうとしていた。


蒼夜そうやが叫ぶが、カナタは自分の目の前のドレイクに注意が向いていて、後ろから襲ってくるドレイクの攻撃からの回避行動は間に合わない。


「げっ!」


ドレイクの攻撃を食らって、カナタの体制が崩れる。


USOでは、攻撃を食らった際の痛みは殆どない。


痛みと言うより、軽い振動みたいな感覚だ。


せいぜい、素手で背中を少しだけ強めに叩かれた時の感覚を思い浮かべてもらえばわかるだろう。


体制を崩したカナタに、カナタの正面のドレイクが襲い掛かる。


「させない!」


沙耶さやが自分の持つ、片手斧を振りかざして、カナタに襲い掛かるドレイクの牙を受け止める。


「シャナ!」


沙耶に名前を呼ばれて、沙耶の後ろから槍を構えてドレイクに向かって攻撃するシャナ。


シャナの一撃は、ドレイクの身体に刺さり。ドレイクの動きが一瞬とまる。


そこに、すかさず。蒼夜そうやの剣が斬りつける。


だが、蒼夜の斬撃が浅かったのか。ドレイクは身体を反転させて、尻尾で蒼夜を打ち付ける。


尻尾の攻撃の直撃を受けて、体制を崩す蒼夜。


そこに、何処からか。炎の玉が飛んで来て、蒼夜そうやに直撃する。


炎の玉が飛んできた方を見れば、新たに3匹のドレイクが蒼夜達にターゲットロックしていた。


ドレイクのブレス攻撃。それが、蒼夜に当たったのだ。



蒼夜そうや!」


今の攻撃で、蒼夜のHPゲージは一気に減り、残り僅かになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る