第44話

「回収、急いでくれ。」


「はい!」


蒼夜くんは急いで自分の死体に近づくと、自分の装備を拾って装備し直していく。



「終わりました!」


「取り合えず帰還リコールで飛んでくれ。そろそろ、竪琴の限界回数だから。」


「イクルさんは?」


「俺は自分の家に飛ぶから。」


「分かりました。本当に有り難う御座います。」


そう言って、蒼夜は深々と頭を下げる。


そして、腰袋から巻き物スクロールを取り出し使用する。


光のエフェクトが蒼夜を包み込み。


光が消えた跡には、蒼夜の姿はなかった。


蒼夜の帰還リコールを確認して、俺も素早く腰袋から巻き物スクロールを取り出して使用する。



   ****    ****    ****



   

これが、俺と蒼夜君との出会いだった。


あの後、偶然にも首都ツヴァイで再開して。



一緒に狩りに行き、俺が平和でタゲを外した所を蒼夜くんが剣で切りつけると言う作業をして。


集めた素材は蒼夜くんが、荷物持ちの役目を買って出てくれた。


俺は普段の倍以上の素材にウハウハで、蒼夜くんはスキルポイントが一気に上がった事で双方大喜び。


分け前は、蒼夜君7で俺は3。


既に家持ちの俺には、金は要らないが蒼夜君には必要だろう。戦士系なら尚更だ。


代わりに、素材を少し多めに貰ったが。それくらいは良いだろう?


武器防具を揃えて、所持金が殆ど無かった蒼夜くんは、USO内での初めての大金に目を丸くしていたが。



「蒼夜君。時間はある?」


「はい、空いてますよ。」


「なら、今から俺の家に来るかい?」


「USO内の家ですよね?」


「そそ。」


「ぜひ見てみたいです!」


「なら、ちょっとゲートを出すけど。俺の後に入ってくると良いよ。」


「は~い。」


俺は、腰袋からゲートの巻き物スクロールを出すと使用する。



転移門ゲート:魔法スキル★

帰還リコールが単体での転移魔法に対して、転移門ゲートの魔法は複数人数での移動の際に用いられることが多い。



目の前に赤い色の光で出来た、ドアみたいな物が出現する。


俺は、その光のドアを開けて中に入っていく。


続いて、蒼夜君も入ってくる。



「でかっ!!!」


転移門ゲートから出てきての開口一番の蒼夜くんの発言がコレだった。


まぁ、USO内で一番大きいタイプの家【キャッスルタイプ】。



縦横に100メートルの敷地面積。


正直、言えば。建てる敷地面積で、建てる場所を探す方が苦労した。


俺の家は、首都ツヴァイから一番遠い場所の辺境地帯の開けた場所に建ててある。


家の北側には巨大な山々が連なり。


東側には海が見える。


西と南は森林に囲まれている。


贔屓目に見ても、お世辞にも景色は良いとは言えない。


こんな、辺境に建てた理由はと言えば。



【狩場が近いから】


ただ、それだけの理由だった。

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