第42話

「吟遊詩人のイクルさんだよ。ほら、一昨日の晩に話した人。」


彼は、USOを始めて、まだ15日目の初心者プレイヤーだ。



 * 蒼夜そうやとの出会い 回想 *

   


四日ほど前に、好奇心でデスパに来たのは良いけど。


ソロで来ていた為に、ドレイクに袋叩きにされて幽霊となって俺の前に現れた。


USOでは、死亡すると。死亡した場所に、自分の死体が現れる。


死体の中には、自分が装備している武器防具は勿論の事。狩りで手に入れた素材や、レアなアイテムまで死体の中に残ることになる。


そして、死亡したプレイヤー本人は。幽霊となって死体の傍に現れる。


幽霊なので、話し掛けない限りは、周囲のプレイヤーからは視認できない。


唯一、幽霊の状態で話しかければ、他のプレイヤーからも視認が出来る様にはなる。


視認が出来るだけで、幽霊状態のプレイヤーの言葉は意味不明の言語にしか聞こえない状態だ。


あいにく、俺は霊媒師のスキルは持っていないので、幽霊状態のプレイヤーの言葉は聞き取れないが。


死亡したプレイヤーが言う事は9割が決まっている。


「蘇生して!!」  だ。


だが、蘇生しようにも。魔法スキルも50しか振り分けていない俺には、最上級扱いの蘇生魔法は使えない。


なので、「蘇生は出来ないけど、NPCヒーラーの所まで案内できるけど?」


そうすると、幽霊状態の彼【蒼夜】はお辞儀をする。


デスパの外に出て、走ること5分(現実時間で)。


デスパ周辺の教会に辿り着く。


教会にはNPCノンプレイキャラクターの神父が居て、幽霊状態の蒼夜が近づくと瞬時に蒼夜を蘇生してくれた。


ここの協会のNPCは、不在の時も有るのだが。それを、考慮してか。蘇生料金は無料になっている。


「お気を付けて。」


NPCノンプレイキャラクターの神父は、それだけ言うと教会の椅子に腰掛けた。


蘇生された蒼夜は、幽霊ローブと言われる、灰色のローブ1枚だけの格好で蘇生される。


「有り難う御座います。」


蒼夜は俺に向かって礼を言うが。


「礼は良いから。早く荷物を取りに行かないと。」


「はい!」


そう言って、デスパに向かって走り出す蒼夜だが。


あの子・・・・・ローブ1枚だけって自覚してるの?


「蒼夜くん!待った!」


大声で、走り出す蒼夜を呼び止める。

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