第31話

「話してみろ。


胸の中に詰まっているもんを吐き出すだけでも、結構楽になるもんだぞ。


リアルで顔見知りの人なら話せないかもしれないが。


ここは、ゲームの中の世界で。


俺達は多分、あやの事を現実世界リアルで知っている人物ではないと思うぞ。」


ダンがあやに、優しく言葉をかける。


あやは、黙ったまま3人の顔を見る。


「ちなみに、俺は北海道の室蘭むろらんに住んでいる。」


唐突に、ガーランドが自分の住んでいる所を言う。


自分の住んでいる所を言って、あやを安心させようと思ったのだろう。


狭い日本とは言え、おおよその所在地を明かした所で、正確な所在までは調べようがないし。


明かした所在地が、嘘なのか本当なのかも解らない。


それが、オンライン世界に置ける怖い所でもある。


「私は、○○県の桃花市だよ。 桃花高校の2年生。」


水無月みなづきも、ガーランドに続いて、自分の住んでいる所を明かす。


「オープン過ぎだろ。 ほぼ正確な所在地を明かすなよ。」


水無月を見ながら、ガーランドが注意する。


「普通なら、ここまで言わないよ。 皆だから、言ったんだよ。」


笑顔で答える水無月の言葉に、ダンと、ガーランドの顔が少し赤くなる。


「俺は、大阪の住吉区だ。


初詣で有名な、住吉神社の在るところだ。」


照れながらも、ダンが自分の住んでいる場所を明かす。


「私は……。」


「言う必要はない。」


あやの言葉を遮って、ダンが言葉を被せた。


「でも……。」


ダンの言葉に戸惑う彩。


「現状に流されて話すのなら、住んでいる場所は話さなくていい。


俺たちのことを信用しても良いと思うのなら、話し終えた後に教えてくれればいい。」


「ガーランド……。」


彩は、ダンと水無月みなづきにも視線を向ける。


ダンと水無月は、あやと視線を交わすと、黙ったままで頷いてみせた。


少しの沈黙が続き、彩は口を開き話しだした。


あやには遠縁の親戚で、幼馴染で仲良しの友達だった、【小鳥遊たかなし 加奈かな】と言う女の子がいた。


中学の2年生の2学期半ばに。


加奈は、虐めの対象になっていた。

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