第26話

酒場に着いて、円形のテーブルを囲む様に座る。


それぞれ、飲み物を頼んで話し込んでいる最中で。


女3人集まれば、かしましい(騒がしい)とは良く言ったもので。


女子3人で、話が盛り上がっており。


男1人、ガーランドは蚊帳の外。


と、そこへ。


ようやく、ダンが姿を見せる。


「やぁ、遅れて済まない。


改めて、さっきは助かったよ。 有り難う。」


ダンは、1人会話に入っていけないガーランドに話しかけた。


「いや、こっちこそ。助けに入るのに遅れて申し訳ない。」


ガーランドは、ダンに向かって先程の事を説明し始めた。


ダンが死亡する前には、既にガーランドと彩の2人は入口に居たのだが。


下手に助けると、シーフ扱いされてしまうので戸惑っていたこと。


★シーフ:ゲーム用語★

*レベリング制ゲームの場合は、戦闘に割り込み経験値をかすめ取る行為。

*レベルのないUSOでは、アイテムルート権利の事を指す。


その為に、ダンが死亡してからの助勢になってしまったこと。


「いや、2人が来てくれなかったら、全滅してた可能性の方が高いから。


本当に助かったよ。


お陰で、掘り出した鉱石oreも、荷馬も最小限の被害で抑えられたし。」


「ってか。ダンジョンの中でも掘れるんだな。」


ガーランドが、ダンに聞く。

 

「おぅ、それも。 掘り出せる量は、通常フィールドの2倍だぜ。」


「ほぉ、2倍かぁ。 それは凄い。」


「だろ。 まぁ、普通はダンジョンで何か掘ろうとは思わないからな。」


そう言って、笑うダン。


吟遊詩人バードが居ないと無理だな。」


ガーランドも、クスッと小さく笑う。


「そうそう。それと、お礼と言ってはなんだけど……。」


そう言って、ダンがステータスウィンドウを弄り、ガーランドに向かってトレード申請を飛ばす。


「ん?」


ダンから送られてきたのは、ノーマルクオリティーだが、白銀の鎧一式だった。


「ノーマルで悪いんだがな。」


ニッと、暑苦しい笑顔をガーランドに向けるダン。


「おいおい……。 良いのかよ?


白銀だぜ?


いくらノーマルでも、今の時期なら、軽く30万以上はするんだろ?」


トレードされてきた、防具を見て驚くガーランド。


「あんらた2人も、CBクローズベータ組だろ?」


驚くガーランドに、ダンが聞き返す。


「まぁね。 あやとは、CBクローズベータからの仲間だし。」


彩に視線を向けながら答えるガーランド。


「んで、まぁ。 下心を言えば。


2人に、フレンドになって欲しいってのがある。」


頭を掻きながらダンが言う。


「これを着て、狩りに付き合えと。」


笑顔の表情は崩さず、ガーランドがダンに聞き返す。


「担当直入に言えば、そうなるな。


なんせ、ウチは見ての通り所帯が小さい上に、戦闘職は1人だけだし。」


「ダンは?」


「俺は、完全生産職だ。


魔法も使うが、移動と回復魔法しか覚えていない上に。


魔法スキルも上げていない。」


そう言って、自分のステータスを公開表示でガーランドに見せるダン。



プレイヤー名:ダン


メイン職業:鍛冶屋


取得スキル


鍛冶屋 :86.3%

裁縫  :78.6%

大工  :68.3%

細工  :69.6%

穴掘り :86.7%

木こり :89.6%

魔法実技:68.6%


 

「ってか。 簡単に見せるなよ……。」


呆れ顔で、ガーランドが言う。


「構わんさ。 どうせ、完全生産職だ。


スキル構成を見られようが、見られまいが。


PKプレイヤーキラー連中からすれば、カモには違いないんだから。」


肩を窄めながら答えるダン。


PKプレイヤーキラー:ゲーム用語★

*ゲームの中で、一般プレイヤーを倒して喜ぶプレイヤーを指す。

*基本的に、大多数のゲームでは、PKプレイヤーキラーに為ると、ネームプレートが赤色に為る事が多い。

*ゲームの中での、緊張感を醸し出す為の必要悪の存在。

*たまに、本気でウザい時もある(笑)。



「ギルドは?」


★ギルド:ゲーム用語★

*仲の良いプレイヤーや、同じ目的を持つプレイヤー達が集まって、プレイヤーで立ち上げる事の出来る組織的な集合場所の事を指す。

*町内会や、職業的な組合と思えばいい(笑)。



ガーランドが、単語だけをダンに言う。


ガーランド的には、ギルドを作る気なのか? と、聞いてるつもりだ。


「ん? まぁ、仲間内だけの小さなギルドを作ろうかと思ってる。


元々、SWORDソードONーLINEオンラインクロスや、ULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインCBクローズベータ時代から、小さなギルドを作ってたしね。」


ニッと、暑苦しい笑顔を向けて答えるダン。


「へぇ、SWORDソードONーLINEオンラインクロスもやってたのか?


差し支えなければ、そんときのギルド名を聞いても良いかな?」


ガーランドもSWORDソードONーLINEオンラインクロスはプレイしていたので、訪ねたのは本当に興味本位だった。


「ん…。まぁ……。」


だけど、ダンから帰ってきた言葉は、どこなくハギレの悪い返事だった。


「あぁ、すまん。 興味本位で聞いてしまっただけだ。


言いたくないなら、言わなくていい。」


軽く頭を下げながら、ガーランドが謝る。


SOXソード・オンライン・クロス邪馬台サーバー。


ギルド名は〝天空の覇者〟」


「ブッ!」


「「ええええええっ!」」


ダンの言葉を聞いて、ガーランドは口の中に含んでいた飲み物を吹き出し。


いつの間にか聞いていたのか、水無月と、彩は、驚愕の声を上げていた。


ラクスだけは、SOXソード・オンライン・クロスをプレイしていなかったので〝なにそれ?〟と言う表情で、4人を見ていた。



★ 天空の覇者:血盟ギルド ★


邪馬台サーバーは勿論。


飛鳥あすか大和やまと幻夢げんむ、と言った他のサーバー間でも有名な傭兵ギルド。


構成員、僅か150名と、ギルド単位としては余り大きくはないが。


攻城戦に、天空の覇者が加わるかどうかで、戦況が一転すると迄に言わせしめる。


彼らの特筆すべき点としては。


装備とプレイヤースキルも然ることながら、情報伝達率の高さによる所が多い。


「ちょっ! 邪馬台最強ギルド!」


ガーランドが、興奮しながらダンを見て言う。


「らしいな………………。」


ダンは、特に誇張するわけでもなく、肩を窄めながら言葉を返す。


「いやいやいや。 私たちからすれば、憧れの象徴だったんですけど!」


彩が、ダンを羨望の眼差しで見ながら言う。


「別に、そう言うのを狙ってギルドを立ち上げた訳ではない。


気が付いたら、そう言う風に呼ばれていたってだけだ。」


少しウンザリしながら、ダンが表情を曇らせながら言う。


最初は、それこそ10名足らずの小さなギルドだった。


楽しくプレイ。


それをギルド目標に、本当に知り合いだけで楽しくワイワイと遊んでいた。


「で、2人は、どこかに入る予定は?」


彩とガーランドに聞くダン。


「特にはないね。」


「同じく。」


ガーランドと、彩が答える。


「まぁ、気が向いたら連絡を寄越してくれ。」


「OK。」


ダンの言葉に、ガーランドと、彩は頷いて返事を返した。

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