第12話

「はい。 さすがに、使い込み過ぎたのか。 損傷が酷くて。」


顔を顰めながら、私が言うと。


「見せてみろ。」


ダンさんの言葉に、私はロングソードを具現化して、ダンさんに手渡す。


「1時間少しで、こんなに使い込んだのか?」


ロングソードを見ながら、ダンさんが私に尋ねる。


買った時には、500の耐久値だったロングソードだが。


今の耐久値は、僅かに28。


もう、ほとんど壊れる寸前だ。


「はい。 共用墓地の最深部でスキル上げをしてたので。」


「はぁっ!?」


私の返した言葉に、ダンさんの顎が落ちた。


「えっ!? 何か変なことを言いましたか?」


顎を落とすほど、ビックリしてるダンさんに聞き返すと。


「いや、いや、いや。 最深部と言ったら、普通は初心者3~4人で行く所だぞ。


お前さん、何人で行ったんだ?」


「2人です。」


「はぁっ!?」


再び顎を落とすダンさん。


「えっと。 共用墓地で、トレインして………。。」


私は、ラクスとの出会いを、ダンさんに語った。


「お前さん、運が良いなぁ。 初心者とは言え吟遊詩人バードと知り合えるなんて。 羨ましいぞ……。」


心底、羨ましそうな表情で、私を見るダンさん。


「そんなに、珍しいのですか?」


CBクローズベータをプレイした奴なら、誰でも吟遊詩人バードのフレンドを欲しがるくらいには貴重な存在だよ。


お前さんも、吟遊詩人バードの戦い方を見たろ?」


ダンさんの言葉に、私は頷いてみせる。


MOBモンスターのターゲットを外せて。


MOBモンスター同士を争わせることもできる。


そこに、お前さんみたいな前衛系が加われば、殲滅速度も上がる。


魔法職が居れば、回復にサポートも困らない。」


ダンさんの説明に、私は思わず納得。


「そこで、ものは一つ、相談なんだが……。」


ダンさんが、キッと顔を引き締めて、私を見つめる。


「頼むっ! その吟遊詩人バードのプレイヤーを紹介してくれ!」


それはそれは、見事な土下座を披露しながら、私に向かって言うダンさん。


「ちょっ! ダンさん! 皆が見てる! 辞めて!」


傍から見れば、女性に土下座する男性。


かなり、他の人の視線が痛いですから!


「取り敢えず、頭を上げてください! 恥ずかしいですから!」


私の言葉に、ダンさんが頭を上げて、立ち上がる。


「ただとは言わん! これをやる!」


具現化したロングソードを、私に見せるダンさん。


NPCノンプレイキャラクターの店で購入したロングソードとは違い。


一目で、切れ味の違いが分かりそうな程に、刀身が煌めいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る