ルビーひめときしサファイア

冬野 向日葵

大ピンチにヘタレ主人公はいらないって話

 みなさん、物語を作るのはお好きですか? ――私ですか? こんなところに文字を残すくらいには大好きですよ。幼稚園のころから落書き帳に絵本を書くのが好きだったんです。絵本から小説に形態こそ移りましたが、そのままやめられずに続けて、今に至ります。

 ごめんなさい、少し盛りました。実は一年くらい、書かなかった時期があったんです。思い出語りみたいなものですけど、エッセイとしてここに書き残しておこうかなって。




 小学三年生の時の話です。その頃の私は、自由帳を丸々一冊使ってオリジナル絵本を作っていました。表紙の「自由帳」って文字に横線を入れ「ルビーひめときしサファイア」ってタイトルをつけて。

 ドラゴンに捕らわれたルビーという名の姫を、サファイアという若者が救出に向かうという内容の、タイトル通りな王道ファンタジー作品です。当時の私はおとぎ話に結構あこがれがあったようです。


 内容がシンプルなこともあり、サクサクと楽しく描けたんですよ。そしたらそのうち登場人物の行動が想像できるようになってきて。いわゆる登場人物が動き出す、っていう現象でしょうか。

 そしていよいよ終盤のドラゴンとの対決シーンまで描きました。やっぱりクライマックスは主人公が最大のピンチに落ちるところが見どころですもんね。当時の私はルビー姫がドラゴンに食べられるシーンを入れました。

 そしたらなんということでしょう、騎士サファイアは戦意を喪失してしまったじゃありませんか! 登場人物が動き出すと、シナリオ通りにならないこともあるんですよね。様々なイベントで彼を発起させようとしたんですが、中々いいアイデアが思い浮かばず、翌日に考えることにして自由帳をランドセルの中にしまい込みました。


 翌日のことです。続きを描こうとして自由帳を開いたら、勝手に続きが書いてあったんですよ。そこには騎士サファイアは結局ドラゴンを倒すことなく、前に向って

「この世は絶望だらけだ。こんな世界にした神をゆるさない」

 と言い放ち、そのまま「おわり」って。

 ファンタジーのオチとしては失格ですよね、これ。最後は最大のピンチを乗り切るところがいいんじゃないですか。こんなヘタレ主人公ではいけないと思い新しい主人公、きしエメラルドを考え、同じ絵本を最初から描き直しました。


 結局のところ騎士エメラルドもドラゴン退治に成功することはなかったんです。そして、翌日開いたらになったらまた続きが書いてあって。

『騎士エメラルドはあなたのほうを見て言いました。「一難去ってまた一難の人生。神は平穏な生活を認めないのか。これが最終警告だ」 おわり』

 またヘタレ主人公になってしまいました。でも当時の私は諦めが悪く第三の主人公、きしダイアモンドでまた描き直しました。

 ――もうお分かりですよね。騎士ダイアモンドもヘタレでした。もう慣れてきて、続きが書いてあるだろうという気持ちで翌日開いてみると、

『「神はこの世界にとって有害。今から退治する」あーあ。あなたがいじめたせいです。せいぜい報いをうけることですね。 ほんとうのおわり』

 あなたがいじめた? どういうこと? って思っていると突然後ろから殴られて、そのまま意識を失ってしまいました。


 次に目覚めた時は病院のベッドの上でした。どうやら私は急な病気の発症で、倒れていたようです。そもそも、自室で描いていたので私以外の人はいないはずなのに、だれが私殴ったんでしょうかね。その点でも病気というのは納得がいきます。

 でも、幼い私には絵本の心霊現象か何かだと思い込み、半年くらい物語づくりをやめたんですよ。




 ――というのが、私の小学生の時の出来事です。どうせあいまいな記憶からできた偶像でしょうけどね。今の私は心霊現象なんて信じるほどバカじゃないです。

 退院して相当経った後、ふとテレビをつけたらドラマをやっていたんです。学園もので小さな子供がまわりから暴力を振るわれていじめられているシーンでした。やっぱり主人公はこのくらい大きなピンチに逢わなきゃって、私の創作欲を刺激されて再び物語を書くようになりました。

 でも当時の私は心霊現象を恐れていたためか、書くのを絵本ではなく小説に変えたんです。そんなしょうもない理由で、私ながらアホらしいですね。


 最後に今の話を。私の好みとしてバッドエンドは無し派なので、ピンチに負けない強い主人公が必要なんですよ。なので主人公は結構作り直しを繰り返します。なんせこの程度のピンチに負けてるようではヘタレなんですから。初めて主人公を作り直したのがこの「ルビーひめときしサファイア」なんでその経験が今に生きているんですよ。でも実はこの作品完結してなくて。今度時間あるときにもう一度書いてみようとこのエッセイを書いて思いました。当然、当時以上の大ピンチも添えて。


 ここまで読んでくれてありがとうございました。次回はこのリメイク版「ルビーひめときしサファイア」を投稿しようかな。それではまたー。

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