第75話 元暗黒騎士はチンピラ共の首を折まくる
雑多な国家、ケイオス。
色んな人種や種族、民族が混じり合い暮らしている国だ。
ここには様々な国や地域からやってきた人が集まり、生活をしている。
「当たり前のように亜人がいるな……むしろ人族の方が少ないかもしれない」
「ユグドラで育った身からすると、誰も気にしてないのが信じられないわ……」
「ユグドラとはまるで別世界ですね……」
リザードマンやドワーフ、人狼やハーピィが街を闊歩している。
なんだここは、一部の性癖の人からすれば楽園じゃないか。
「ほ、本当にここで商売をするんですか……?」
「ああ。ユグドラ陛下に紹介してもらった商会と合流する予定だ。その人は人族らしいけどな」
「それにしてもエルフはいないわねー。まぁ、エルフは森の中が大好きだものね」
そういうアリアスは、結構興味津々そうだが。
まぁ元々好奇心が強いんだろうな。
だから故郷の森から飛び出したわけだし。
しかし周囲の人達に注目されてる気がするな。
アリアスが美人だからか?
それともローレシアが可憐だから?
「おい、あんた。結構イケてんじゃねぇか。どうだ? 俺と一緒に遊ばねえか。天国が見えるくらい、気持ちよくしてやるぜぇ」
蛇のような雰囲気の男がアリアスに話しかける。
おい、人の嫁にナンパしてんじゃねえよ。
舌をチラチラさせるな。怪しさが半端ないだろ。
「あら、私には素敵な旦那がいるの。あんたみたいな安い男、お断りよ」
「な、なんだとぉっ!?」
「大体天国が見えるような快感って、どうせクスリでしょ? 自分のテクニックで相手を満足させてから物を言いなさいよ」
「ぐ、テメェ……!」
危ない雰囲気になったので、俺は男の背後に周り首を捻る。
安心して欲しい。殺してはいない。昏倒してもらっただけだ。
音も無くやったので、周囲の人も気付いていない。
我ながらこんな作業ばかり上手くて嫌になるなぁ。
「アリアス……見知らぬ国でいきなり喧嘩を売らないでくれ」
「あら、先に喧嘩を売ってきたのはそいつじゃないかしら」
「確かにどう見ても怪しい売人みたいなやつだけどさ……もしものことがあったら心配だろ」
「大丈夫よ、私強いから。それにこうやってダーリンが助けてくれるもの。ねっ♪」
「それはそうだけどね……」
しかし、アリアスの挑発には俺もヒヤリとした。
クスリに頼らず自分のテクで相手を満足させろ、か。
もしかしたら、アリアスは俺にもうちょっと技術を磨けと言っているのか?
アリアスにしてもらうばかりで、俺はなすがままって感じだからなぁ。
「そこのかわいいお嬢ちゃん。おじさんといいことしない? 金はねえけど、いい物持ってんだよ……グヘヘ」
「わ、私ですか!? あ、あの困りますっ!」
「そう言わずにいいだろ……なぁ? そこの路地ですぐ済ませるからよぉ……ぷげっ!?」
アリアスの次はローレシアにナンパか。
やれやれ、どうやら俺の嫁達はどこの国でもモテるらしい。
近寄るやつは容赦なく首を捻る。
汚いおっさんや怪しいやつは要注意だ。
「エルフのチャンネーかわうぃねー。このクスリすごく体にいいヨ。買うと気持ちよくなるヨ」
「いらないわよ」
「今なら安くするヨ。お金がないなら体で払ってもオーケーヨ……ふげっ!?」
またつまらぬ首を捻ってしまった。
どうなってんだこの国は。
入国した途端に怪しいナンパか押し売りがたくさん来るじゃないか。
「お嬢ちゃんたち、どこから来たんだい? ここらじゃ見かけない顔だねぇ。移民かい?」
また来やがった。
今度は怪しい黒眼鏡をかけた亜人のおっさんだ。
どうせまた怪しい勧誘なんだろう。
というか、アリアスとローレシアには声をかけるのに、間に挟まってる俺は無視か?
そんなに影が薄いのか、俺って。
「ローレシア、こんなの無視しましょう。いちいち構ってらんないわ」
「そ、そうですね。怪しい人が多いですし、声をかけられても知らないふりをしまひょう」
「移民の女の子なら、手っ取り早く稼げる方法があるよ〜。一日三千ゴールド! ちょっと大変だけど、お客さんの相手をするだけの楽な仕事だよ〜! 大丈夫、お嬢ちゃんたちなら美人だからすぐ客がつくよ!」
これ、完全に娼館のスカウトとかだろ。
うちの嫁をそんなもんに勧誘するんじゃない。
ぶっ飛ばされてえのか。
「ダーリン……守ってくれるのは嬉しいけれど、首を折るのが早すぎて怖いわよ?」
「旦那様は職業病で相手の首を真っ先に狙っちゃいますからね……それが強さの理由なんですけど」
「人の嫁に手を出そうとする奴なんて、これくらい痛い目を見た方がいいんだよ。あとアリアス、首は折ってないぞ。捻ってるだけだ」
「白目を剥いて泡吹いて倒れてるわよ……」
「大丈夫。運が良ければ数時間で起きるさ」
「アリアスさん……運が悪いとどうなるんでしょうかね」
「怖いから聞かないでおきましょうか。私達を思っての行動なんだし、気にしないでおきましょう」
「二人とも、待ち合わせの商会まで行くから逸れないようにな」
それから一時間ほど市街地を歩いたが、アリアスとローレシアにナンパする奴の多いこと。
俺の首捻り作業が過去一番で捗ってしまった。
バレないようにやったけど、数百人が泡を吹いて倒れてるのは流石にやりすぎたか?
いや、異国の地で舐められたら終わりだ。
こういうのはビシッとやらないとな。
首折り職人の腕が鳴るぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます