第71話 元暗黒騎士は村を発展させる
死の大地改めマヤトの地の環境が整って
相変わらず日差しは強いが、それでも俺の赤い雲が必要なくなった程度にはマシになった。
だが相変わらず暑くて湿気が多い。
ジメジメである。
ダークマターで生成した温度計で計ったら四十度を超えていた。ふざけてるよな。
『あっっつい!』
『もう冬のはずじゃないの!?』
『マヤトは四季があるのじゃ。十の月が終わるまでは夏が続くのじゃ』
『まんま日本の季節じゃねぇか!』
それでも、風が吹くようになっただけマシだろう。
この前まで、マジで風さえ無かったからな。
体感気温は少しだけマシになった。
それから、雨が降るようになった。
俺の結界の影響かはわからないが、自然発生する雲も赤いのはビックリしたな。
おまけに雨粒まで赤いとあれば、毒でもあるんじゃないかと心配だった。
『世界の終わりみたいな光景ですね……』
『こういう雨の中、空を見上げて佇んでるのが楽しいんだよ』
『ダーリン……確かにかっこいいけれど、それ何の意味があるの……?』
『自己満足だけど……え? 風邪引くからやめろ? そうだね……』
一応調べてみたら、魔力が含まれているが毒性は無いとのことだった。
それならいいのだが、ビジュアル的に最悪だよ。
厨ニマインド的には、赤い雲と雨は最高だけどね。
そうそう。作物は順調に育っている。
緑が豊かになったことで、他の地域でも採れる野菜を入手できるようになった。
ついでに俺の知る限りの前世の野菜や果物を、スキルで生成して育てることにした。
『甘いです~! これ、砂糖を使ってないんですか? 信じられません!』
『すごいわね……こんなの、毎食のデザートに食べたくなるわ……』
『一応、収穫量に限りはあるから気をつけてくれよ……? あと俺の分も残して……あ、もうない?』
フルーツ類は人気だったな。
特に梨やバナナが大人気だ。りんごやぶどうも好評だったが、この世界に似た果物があるらしく、感動は控えめだった。
それでも、かなり興奮していたようだった。嬉しいね。
前から挑戦したかった、スパイス作りも成功しそうだ。
カレーを
しかしよく考えたら、ダークマターで『カレー作りに必要なスパイスを生成しろ』と命じたら簡単だった。
そういうところも含めて、俺の想像力もまだまだ足りないなと反省。
『ダーリンの世界だと、この木の実がスパイスになるの?』
『ああ。この世界にもあるよな?』
『この世界だと、薬草やハーブを使ったのが多いわね』
『俺の世界にもそういったスパイスはあるはずだよ』
『気になるわね……生成出来たってことは、この世界のスパイスとは違うってことだわ』
『驚くぞ~。カレーは最高の料理だからな』
『ええ、楽しみにしてるわ! ダーリンの世界の料理大好きだもの!』
塩は塩湖から調達出来た。
これもダークマターで生成した魔道具の器具で、真っ白な塩を作り出すことに成功した。
『すごいな……本当に白い塩を作り出せるとは……』
『村長! これだけで何ゴールドになるか分からねえぜ!』
『売るのは慎重にした方がいいかもしれん。どこで手に入れたか、面倒事になりそうだ』
『なるほどな。販路の確保も重要ってことか』
一度コツを掴めば、こうやって様々なモノを作り出せる。
作り方が分からないなら、その方法を記した書物やらマニュアルを生成すればいい。
ようやく俺のスキルの使い方に慣れてきた。やはりダークマターはチートスキルらしい。
あと、一番大事なことといえば酒造りだ。
米を収穫した後、日本酒を作ろうと考えていたのだが、どうやって作ろう。
そうだ! 材料をぶち込んだら自動で作ってくれる魔道具の装置を生成しよう!
前世に存在したかは関係ない。俺が出来そうと思えば生成出来る。
その結果、米を入れると日本酒が出来上がる巨大な魔導装置が生成された。
難点は、ちょっとした工場くらいの規模になってしまったことだ。
村の面積を拡大して、酒造小屋を新しく作った。
ついでにビールやワインを作ってくれる魔導装置も生成した。
あんなに後回しにしていたが、いざ作ってみると一瞬だったな。
どうも、マヤトの地が発展したことでみんなの活力が上がったのがよかったみたいだ。
荒れた地でなんとなく生きるより、整った環境で明確な目標がある方が、モチベーションが上がるのだろう。
会社と同じだな。
『ちょっと試飲してみたけれど、王国のエールなんか勝負にならない美味しさだわ! ダーリン、この村のお酒は絶対に外に売り出しちゃ駄目よ!』
『そんなにか。俺も飲みたいけど、我慢……!』
アリアスがあまりにも嬉しそうに酒の感想を語るので、俺も興が乗った。
酒のつまみを作ろう。そう決心した。
食料の倉庫、食料を調理する作業小屋、乾燥小屋、燻製小屋を生成した。
全部の小屋に魔道具がふんだんに使われた贅沢な小屋である。
ここでつまみや保存食を作ることにする。
燻製に合うウッドは、マヤトに見繕ってもらった。
試作品のドラゴン肉のジャーキーを食べてみたが、これがかなり美味しい。
口に入れた瞬間は固いが、噛み続けると濃厚な肉の味が滲み出てくる。
塩味も加わって唾液が止まらない。
そこに、燻製でついた香りが口内に広がり、何とも言えない満足感を与えてくれる。
これは酒が飲みたくなるな……。
『ちょっと~! ダーリンだけおつまみを食べるなんてずるいわよ~』
『そうですよ旦那様。お肉を食べるなら、私にも言ってくれないと!』
『いや、俺は試食しただけだからね?』
『ずるい~』
こうして俺達の村は、マヤトの地が豊かになるのと比例するように、規模を大きくしていくのだった。
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