クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい ~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活していきます~
第51話 聖女は清楚系デカパイロイヤル聖女にランクアップした!
第51話 聖女は清楚系デカパイロイヤル聖女にランクアップした!
アリアスのご両親に結婚を認めてもらえて、一息ついた。
お土産に持ってきた酒は気に入ってもらえたようで、三人とも大はしゃぎで飲んでいる。
アリアスの酒好きは両親譲りだったんだな。
流石についていけないので、俺は家の外で夜風に当たることにした。
「ローレシアも休憩か?」
「ええ、みなさん美味しそうに飲んでますけど、私は未成年ですので」
そういえばそうだった。アリアスはまだ十六歳、この国では酒を飲んではいけない年齢なのである。
そんなアリアスに酒を強要したクズがいるらしいが、俺は昔のことを振り返らない主義なので、忘れた……ということにしておこう。
「今回はごめんな、ローレシア。アリアスだけ、結婚を祝ってもらうことになってしまった」
「いえ、いいんですよ。私が出ると、かえって事態が混乱したでしょうから」
「ありがとう……。今度は、ローレシアのご両親にご挨拶に行こうな」
さっきまでの恐怖心はどこへやら、我ながら単純な脳みそをしてるなぁ、
一度結婚の挨拶を経験したからか、すっかり恐怖心は消えたらしい。
アリアスだけじゃなく、ローレシアのご両親にも挨拶するのが筋だというものだろう。
「え?」
と、ここでローレシアが不思議そうに首を傾げた。
そうだ。アリアスの両親は、ユグドラ国民の可能性が高い。
それならば魔王の仕業で、魔族へ変化してしまったのかもしれない。
既にこの世にいない可能性が高い。
自分の失言に、どことなく気まずさを感じる。
「あの、レクス……もう私の親には会ってますよね?」
「へ?」
「え?」
いつお会いしたのだろうか。
俺がローレシアと結婚して、ご両親に会いに行くタイミングなど無かったはずだが……。
それとも、以前何処かでお会いしたことがあるのだろうか。
「なぁ、ローレシア。俺はご両親に会ったことがある?」
「いいえ」
「でもさっき、親に会ったことがあるって言ったけど」
「はい。レクスは会ってますよね?」
「それは俺が知ってる人?」
「はい。というか、どうしてクイズ形式なんですか?」
前世でウ◯ガメのスープを、仕事中の暇つぶしにやってた癖が出てしまった。
いやそんなことより、ローレシアの親は俺が知ってる人だって?
ローレシアの言葉から、ご両親が健在というわけではないのか。
ということは、父親か母親、どちらかしかいないご家庭ということだ。
実のところ、ローレシアの生まれや育ちについて、俺は何も知らない。
なにせ暗黒騎士時代は、俺とローレシアは月とスッポン、国の暗部と聖女様って立場だったからなぁ。
そんな高嶺の花のような女の子と、会話できる機会があっただけでも幸せだった。
プライベートなことを聞く余裕なんて、全く無かったのである。
結婚した今も知らないのは、色々忙しかったのだ。
言い訳じゃなくて、本当に忙しかったから仕方ない。
そう思っておこう。
「レクスは、今日も会ってましたよね……?」
「え!?!?」
俺が今日、ローレシアの親と会った?
そんな記憶は無いのだが……。
第一、ローレシアの親がユグドラ国民なら、魔王のせいで亡くなってるはずだ。
止めを刺したのは俺だが、それは置いておこう。
なんだ……? もしや俺は、記憶喪失にでもなったのか?
それともローレシアの記憶が操作されている!?
この状況、能力バトル漫画でよく見るやつだ。
些細な会話から、異常な事態に巻き込まれてると判明する展開。
早速新手の敵が出てきたのか!?
クソ、今度の敵は記憶操作の能力者か!
どこだ、どこにいやがる!
「レクスも散々、お話してたじゃないですか。飛空艇で。私の父と」
「飛空艇で……父と……? あっ!」
まさかとは思うが……ローレシアの父親って……。
「へ、陛下……?」
「はい。……もしかして、知らなかったんですか!?」
「え、いやだって! ローレシアっていつもフルネームを言わないし、もしかしたら俺と同じ孤児なのかなって思って……。あまりそういった話題に、触れられなかったというか……!」
「私はてっきり、知ってるものだと思ってました……。お城の皆さんは知ってましたよ……?」
じゃあどうして俺は知らないんだろう。
決まってる。教えてくれるヤツがいなかったのだ。
嫌な奴らだなぁ、相手が王女様って知ってたら、流石の俺も話すのをためらったかもしれないのに。
いや、こんな可愛い子がいたら、話せる機会があったら話すに決まってる。
止めない奴らが悪い。
「ふふ、なんだかおかしいですね。今更自己紹介をすることになるなんて。……改めまして、私はローレシア・ユグドラ。現国王陛下である父の一人娘です」
「ってことは、俺……一国のお姫様を嫁にしちゃったのか?」
「ほ、本当に知らなかったんですか? あ、でも確かに聖女として活動するために、素性を隠すよう父に言われてました! だから父も、私のことを聖女って呼んでましたし、私も父のことを陛下って呼んで私情を持ち込まないようにしてました……! で、でもでも、レクスは父と親しかったですし、知ってると思ってたんですよ!?」
「どうやらお互い、すれ違いがあったみたいだな……」
「そ、そうみたいですね……。でも私は素敵だと思ってます。騎士と姫のラブロマンスは、女の子なら誰もが一度は夢見ますから」
なんとも可愛らしい夢だ。
その夢に負けず劣らず、ローレシアも可愛い。
問題があるとすれば、騎士役の俺が暗黒騎士でクビになってるってことだ。
ロマンチックの欠片もない。
「しかし、まさかローレシアが王女様だったなんて……」
今までずっと、ローレシアがフルネームを言わないのが、伏線だったとはな……。
前世がオタクだった俺も、流石に気付けなかったぜ……。
どうりで暗黒騎士時代、ローレシアと話してると周りから殺意の眼差しを向けられてたわけだ。
そりゃ、ロイヤル聖女とイチャイチャしてる職場の爪弾き者とか、殺意沸くわな。
「あれ? ということは、騎士団長や大司教は知ってたのか?」
「もちろん知ってましたよ。王都の皆さんも知ってたんじゃないでしょうか」
尚更ローレシアを処刑しようとした、ユグドラの民度やべぇな!?
同情する余地ないじゃねぇか!
こう言ってはなんだが、殺して清々したわ!
「これからは絶対に、俺がローレシアを幸せにしてみせる!」
「きゃっ……もう、レクスったら……急に抱き寄せないでください……恥ずかしいです……」
「す、すまない。痛かったか?」
「い、いえ……その、ドキドキして、心臓の鼓動が聞かれてしまわないか、恥ずかしいんです……」
ローレシアは俺の胸に顔を埋めて、耳まで真っ赤になっていた。
か、かわいい……!
「たとえ恥ずかしく思われても、はっきり言うぞ。君のことは、絶対に幸せにしてみせる!」
「れ、レクス……。あ、アリアスさんには秘密ですよ……?」
そうしてローレシアは、俺がアリアスにされたのと同じことをしてきた。
「あ、あぅ……は、はしたないですよね……! ご、ごめんなさい! 頭を冷やしてきます……!」
ローレシアはどこかへ走り出してしまった。
「一日二回、違う女性から大人のキスをされる。こんなことって、あるんだな……」
俺は夜風に当たりながら、紅潮した頬を冷やす。
なんだか、ようやく実感が湧いてきた。異世界ハーレムライフの実感が……。
そして脳内で、ローレシアへの印象が変わった。
あの子は清楚なようで、実は結構むっつりだ。
ローレシアは【聖女】から、【デカパイ清楚系ロイヤル聖女】へランクアップした!
たぶんゲームなら、こんなテキストが流れていたに違いない。
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