第32話 総攻撃⑤
「よお国綱。もう少し強いのかなと思っていたが、そんなだったんだな」
ボロボロの国綱を煽るように、速水は言った。
「ああそうだな。少し油断したよ。素人には負けないって。でも、速水。俺はあんただけは素人認識してない」
「そうか。じゃあ、これで負けたら言い訳出来ないな」
「いい訳なんて考えるだけ無駄だ」
【抜刀・鬼丸】
タンッ
お互いは強く地面を蹴り、攻撃を仕掛けに行った。
ダッダッダッシャキーン
打撃音と斬撃音があたり一帯に響き渡る。国綱はさっきまでとは別人のような素早く、力強い動きをしている。
「なんだ、まだまだ本気じゃなかったパターンか」
「悪かったな。少し勝てるかもって思わせちゃったか?」
「いや、あまり関係はない」
そう言いながら速水は何か小さなものを国綱に向かって投げた。
ジャキーン
国綱は、飛んできた何かを反射的に斬った。
「石ころ?」
国綱は斬った後にそれを見てそう言った。
「正確には瓦礫のかけらだ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢しててくれ」
【キランリバイブ】
すると、あたりの瓦礫の一部が国綱。いいや、正確には国綱の斬った瓦礫のかけらに集まっていき、一枚の壁を作り出そうとしていた。
「はっ、まずい」
国綱は慌ててそこから逃げ出そうとしたが、時すでに遅し、壁の中に閉じ込められ、手と足、顔だけが出ている少し面白い見た目になってしまった。
「よし捕まえた」
ジャキーン
国綱はすぐさま切り裂いて脱出した。
「あ、逃げ出した」
ジャキーン
国綱は、刀を振り下ろし斬撃を飛ばした。先ほどまで飛ばしていた斬撃よりも大きく、鋭い。当たったらひとたまりもないというのはあからさまである。
【デリート・ゼロ】
すると、突然斬撃が何もなかったかのように消えた。
「あー、なるほど。白星、ありがとう」
速水は、後ろを少しだけ見てそう言った。そこには、白星さんがいた。
「じゃあ、せっかくだし二人で行くか」
「わかった」
そう言って二人は国綱の方に走り出した。
「二対一とはなかなか卑怯なもんだな」
国綱は刀を構え、二人からの攻撃に構えた。
「戦いに卑怯もくそもあるか」
二人は、国綱の防御が間に合わないほどのスピードで攻撃を続けた。そして、最後に二人で同時に蹴りを入れて、国綱を遠くまで飛ばした。
吹っ飛んだ国綱にさらに攻撃を入れようと白星は近づこうとしたが、速水がそれを止めた。
「何で止めるの?」
「俺達ばかりでしゃばるのもあれだろ。それにこの中で唯一まだ見せ場のない奴がいるだろ」
「なるほど。そうなんだ」
「一番おいしいところを譲るのはちょっと嫌だけど、もう十分すぎるぐらい活躍した。この戦いに関しては俺じゃなく、あいつが主人公だ」
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