第28話 総攻撃①

「何人になろうと、関係ない」


そういって国綱は即見さんのバリアーを破壊した。


「え?あれ、結構固いはずなんだけど…」


即見さんは、思ったよりあっさり破壊されたことに少し衝撃を受けている。


「元から期待はしてないから安心して」


じゃくちゃん?ひどくない⁉」


天野あまのじゃく。毒舌で、流行りを嫌う、自己中心的な一面もあり、一見欠点しかなさそうだが、関わればかかわるほどなぜか嫌いになれなくなる、少し不思議な人だ。


「でも確かに、壊れないんだったらこのゲームとっくにクリアしてるしな」


「それはそうだけど…」


「でも、ある程度は止められてるっぽいし、それなら何とかなると思う」


真央まおちゃん…そうだね!」


代々木よよぎ真央まお。普段は大人しいが、肝が座っており、中学の時、教室にふらっと現れた某Gで始まる黒い昆虫を素手でつかんだという伝説がある。


【抜刀・鬼丸】


国綱は刀を構え、今にもこちらに斬りかかってきそうだ。


「行くぞ」


そういって国綱が地面を思いっきり蹴ろうとしたとき


【鎌鼬】


【電光石火】


ズジャーン!


無防備な背中から、双川と聖徳さんが攻撃を入れた。

そして、それを合図にみんなが攻撃を仕掛けだした。


【グラヴィティ】


一ノ谷は、能力で国綱をその場にとどめさせた。


「やれ!純人!」


「わかった!」


【スナイパー】


ヒュンヒュン…ズバズバズバ


神白の放った矢が国綱に命中した。神白と国綱の間は少し距離が開いてるが、あの程度の距離で動かない的を外すほど、神白は弱くない。


「やっぱ、弓の扱いうまいな。ナイス」


「一ノ谷も、止めてくれてありがとう」


一ノ谷坂馬 能力:能力 グラヴィティ 重力操作が可能。

神白純人 能力:スナイパー 自身の弓にバフをかける




「佐久間、お前3秒先まで未来見れるんだよな?」


堀井が佐久間に聞いた。


「うん、そうだけど…」


「オッケーじゃあ俺にあいつの次の行動できるだけ短く教えてくれ」


「え?あ、うん。わかった」


【フューチャースキャン】


佐久間は、能力を発動して国綱のことをじっと見た。


「こっちに来る!一直線に!」


「隙はあるか?」


「2.83秒後、左わき腹」


「了解。ありがとう」


行動指定ルート


堀井は、自身の能力を発動させて走り出した。

ものすごく速い。これが堀井の能力なのかと少し感心した。


「あ、あいつ途中で遠距離技飛ばしてくるよ!」


佐久間は慌ててそういったが、堀井は軽く手を振り、聞こえてると合図するだけだ。



グウァン!


国綱は堀井に向かって斬撃を飛ばした。確かに早いが、あの速度の堀井なら十分避けられる。しかし…


ザシュッ


堀井はそれを避けるのではなく、腕でガードしてそのまま走った。腕からは血が流れ、痛みをこらえるような苦しそうな顔をしている。そして、その速度を維持したまま国綱の懐に入り込み


ドーン!


国綱を殴り飛ばした。


「っくそ、めっちゃいてぇ…」


堀井芸武 能力:行動指定ルート 自身の行動パターンを制限し、その間の身体能力を向上させる。

佐久間来都 能力:フューチャースキャン 未来のことを数秒先まで予測する。



ヒュン


「あ、やっばい…」


不和色さんの投げたナイフが明後日の方向に飛んで行った。素人がナイフを正確に投げられるわけないのに…

国綱は、不和色さんの方に向かって襲い掛かってきた。


「え?僕?ど、どうしようこのままじゃ…」


不和色さんは恐怖のあまり、その場から動けないようだ。そして、国綱が不和色さんの目の前で刀を振り下ろそうとした。


「ギャァァァァァァ…なんちゃって」


【チェンジ】


不和色さんが消え、不和色さんがいたところには海野がいた。


「見方を捨てるか。あいつ」


国綱は、そんなことをつぶやきながらそのまま刀を振り下ろした。


【運命共同体】


国綱の刀が海野を斬ったとたん


ブシャッ


海野と同じところから国綱も出血をした。予期していない痛みに驚き、国綱は慌てて距離をとった。


「ガハッ、やっぱこれむやみに使うものじゃないかもな…」


海野宅也 能力:運命共同体 自身が負ったダメージの一部を対象にも食らわせる。

不和色才賀 能力:チェンジ 味方との位置を入れ替える。




みんな、凄いな…よし、俺も頑張らないと!

そう思って俺も国綱に攻撃を仕掛けようとしたとき

何か変なのが目に映ったような気がした。

いや、気のせいかもしれない。気のせいであってほしい。俺はそう思いながらもう一度そこを見てみると…


天野さんを殴っている夜桜さんがいた。


「え?ちょ、ちょっと待ったー!」


俺は慌てて二人の間に入った。


「え?仲間割れ?二人とも急にどうしたの?」


自分でも汗をだらだら掻いてるのがわかる。本当に二人ともどうしたんだ…


「だから言ったでしょ?変な誤解されるかもって」


「でもいいじゃん。これで惹が強くなれるんだから」


「それで変な目で見られるの私なんだよ…」


「でもまぁ、あと一回成功すればいいだけだから。お願い!」


「わかったよ…」


そういって夜桜さんはもう一度天野さんを殴ると…


打運下方ダウンダウン


夜桜さんの拳と天野さんとの接触位置が紫に一瞬、小さくだが輝いた。


「よしきた!」


「なにがきた?」


「攻撃力六段階ダウン。一段階ずつ夜桜さんの能力で運ゲーして下げてた」


「え?まじ?すげー…いや下がったらダメだろ!」


あまりにも労力を割いていたようなので俺も一瞬素直にすげーと思ってしまった。


「まぁ、普通はね。でも、私なら大丈夫」


【リバース】


「…なんか変わった?」


何か能力を使ったのは分かったが、ぱっと見はいつもの天野さんだ。


「なんか、自身のバフとデバフを逆転できるらしい」


「ああ、なるほど」


「よし、じゃあ、行ってくる!」


そういって天野さんは、別に速度面は何も変わってないはずなのに目にもとまらぬ速さで土埃を上げながら走り、国綱の方まで走っていった。そして数秒後、何かが瓦礫に飛ばされた様子がうっすらと見えた。


「え?なに?あいつギャグマンガの主人公だった?」


「かもね…」


俺と夜桜さんは、少し。いや、かなり引いていた。


夜桜星霜 能力:打運下方だうんだうん 自身の攻撃ヒット時に、相手にデバフを一定確率で与える

天野惹 能力:リバース 自身のバフとデバフを逆転させる。

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