第24話 全部壊す
ゴーレムに近づくにつれ、荒れ具合がひどくなってきている。
「暁、ファストアップまだあるか?」
双川が走りながら聞いてきた。
「あるにはある。みんなの分だがな」
「緊急事態だしょうがない。くれ」
双川に催促され、俺はファストアップを手に持った。しかし
「いや、その必要はないみたいだ」
俺はそう言いながらファストアップをしまった。
「ああ、なるほど。ちょっと危険だけど、その方が早いな」
双川も俺の考えてることが分かったようだ。
「じゃあ、行くぞ」
「オッケー飛ばされんなよ!」
【サイクロン・上昇気流】
双川が目の前に起こした巨大な上昇気流に二人で乗った。
「ところで暁。これ別方向に飛ぶこと考えたか?」
「え?あ、そうか…」
「え?まぁなんとかなるか!」
「だな!」
そうして俺と双川は、風の勢いを使って、ゴーレムの方まで飛んで行った。遠心力とかそのあたりの物理的な計算を二人ともできないので明後日の方向に飛ぶ可能性も十分あったが、俺たちは運よくゴーレムの方向一直線に飛べた。
吹き飛んで三秒ほどで、俺たちはゴーレムの真上を飛んでいた。
「暁!叩き落してくれ!」
「了解!」
俺は双川に指示されるがまま、怪我をしないギリギリの強さで双川を叩き落した。
【竜巻落とし】
双川は、重力と俺が叩き落した力を利用して、ゴーレムを上から切り裂いた。
「グゥォォォォォ!」
ゴーレムは叫び声をあげた。双川に斬られたところが一瞬、赤く輝いたような気がする。そういえば確かあいつの刀「石切丸」って言ったっけ?名前的に鉱物系の敵にキラーでも乗るのだろうか?
いや、今はそんなのはどうでもいいか。アイツを倒すことだけ考えよう。
【
俺は、吹き飛ばされた先にあった瓦礫を力強く蹴り、ゴーレムのところまで飛んだ。
ドゴーン!
俺の殴ったところの石、ゴーレムの足に穴が開いた。よく見るとこいつ、上半身はえげつないほど大きいが、そんな上半身を支えてるにしては細い足をしている。それでも力士ぐらいの太さはありそうだが。
「グゥォォォォォ!」
メキメキメキ…
すると、あたりの瓦礫が突然、俺が穴をあけたところに集まってきた。
「なんか嫌な感じするな…」
俺はそう思いながら後ろに下がった。
メキメキメキ…
瓦礫は穴を塞ぐように集まっていき、次第に白く輝き、輝き終わるとゴーレムの足の穴が完全に塞がっていた。
「回復持ちか…」
「だとしたら、ちょっと場所が悪いな」
ゴーレムを挟んで反対側にいる双川が言った。
確かに、ここら一帯は瓦礫が多い。これでは無限に回復されてしまう。
「クソッ、これどうする?」
すると
「それなら俺に案がある」
聞きなれた声が聞こえてきた。
「速水、お前いたのか」
俺と双川の間。三人を線でつなげると正三角形になる位置に速水がいた。
「いるも何も、お前らが来る数分前から戦ってたぞ」
「え?まじ?」
「ああ、上の方から双川が降ってきたから少し引いたけど」
「それで、案ってなんだ?」
「案って言っても、そんなたいそれたもんじゃないし、正直かなり難しい」
「前置きはいい。難しいかどうかは聞いてから判断する」
「説明は簡単だ。修復不可能なレベルで全部壊す。以上」
「なるほどな。確かに、説明文の短さに似合わないほど難しいな」
双川は、上を見上げながらしゃがみ、石切丸を地面に突き刺し杖のようにした。
「でも、行けるんじゃね?」
「その心は?」
双川は、俺の方を見ながら聞いてきた。
「だって、自分で言うのもあれだけど、多分火力だけで言ったらTOP3そろってるだろこれ」
「ほんとに自分で言うんだそれ」
「多少無理があっても、自分ならいけると信じ込まなきゃスタートラインにすら立てないぞ」
「そうか…そうだな!」
双川は、そう言いながら立ち上がり、刀を構えた。
「お前ら、まじか…」
速水は、少し驚いたような顔をしている。
「まじかってお前が始めたんだからな」
「そうだけど、却下される前提だったから」
「速水、安心しろ。俺も却下しようと思ってた」
「え?じゃあ、まじめにこれで行こうって最初から決めて他の俺だけ?」
「確かに、暁だけだ」
「まじかよ」
俺はそう言いながら腕時計に手をかけた。
「鳩尾より下は俺が壊す。暁と双川でその他頼む」
「大丈夫か?そんな広範囲一人で」
「問題ない。下半身は脆い」
「じゃあ、行くぞ」
『おう!』
そう言って俺たちは地面を強く蹴り、ゴーレムに飛びかかった。
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