第23話 二人の一

村はゴーレムが荒らしたのか、建物は崩れ、火事も起こっている。幸いにもぱっと見は取り残された人はいないようだが、瓦礫の下にいるとかだったらわからない。何はともあれ、早いところあいつを倒さないと…

すると、双川がいきなり俺が走るのを止めるかのように腕を俺の前に出した。


「どうした?」


そう言った瞬間、俺は気づいた。


「いや、わかった。なるほどな」


「気づいたか。これ、どうする?」


目の前には、ミニゴーレムとでも表現するのがいいだろうか。俺の膝程度の背丈のゴーレムが大量にいる。


「俺は無駄に時間消費したくないぞ」


「だろうな。ゴーレムのこと考えるとここで暁は無駄に戦わない方がいい。だけど、お前能力であのミニゴーレムたちなんとかなるか?」


確かに勝てるかどうか。正直、自身はない。


「かといって双川、一人で勝てるか?」


「無理に決まってるだろ」


「じゃあ、どうする?」


「決まってるだろ」


『二人で速攻終わらせる!』


そう言って二人でミニゴーレムの相手をしようと、俺が腕時計に、双川が石切丸に手をかけた瞬間。


一点集中ワンポイント


ミニゴーレムたちが一か所に吸い込まれるかのように集まった。ミニゴーレムたちは抵抗しているが、まったく出られそうにない。


【グラヴィティ】


ズドーン!


ミニゴーレムたちは、何かにつぶされたかのようにペタンコになり、消えてしまった。


「二人とも、大丈夫か?」


瓦礫の上から声が聞こえてきた。


一ノ谷いちのたに阪馬はんま。元・3-Dの一人で、苗字が鎌倉時代の「一ノ谷の戦い」そのままだし、阪馬という名前も一ノ谷の戦いで義経たちの軍が坂、というか崖から馬で駆け下りてきたという話そっくりで、本人もその影響か歴史が得意なのだが、本人曰く歴史は得意だが嫌いらしい。


「ここは俺がなんとかするから二人はゴーレムなんとかしてくれ。多分俺行ってもなんもできん」


「わりぃ、頼む」


「ああ、任せとけ。ま、俺一人じゃないけどな」


そういうと、瓦礫の奥からもう一人あらわれた。


一橋ひとつばし天子てんこ。まじめでいい奴なのだが、他人に流されやすく、あまり自分の意見を言えないという少し不遇な特性を持っている。


「こいつが敵を一か所に集めてくれるから、後はそれを俺が潰すだけ。簡単な話だ」


「じゃあ、二人は早くゴーレムをなんとかして」


「分かった。がんばってくれ」


そう言って俺と双川は再び走り出した。


「さてと、こいつらめっちゃ出てくるな…」


一ノ谷は、二人を見送った後、そう言った。先ほどほぼ全滅までもっていったのに、もうあたりをミニゴーレムに囲まれた。


「天子、まだいけるか?」


「あ、うん。行けるよ」


「そうか。でも、あまり無理はすんなよ。最悪俺一人でもなんとかなるかもだし」


「ありがとう。でも、大丈夫」


一点集中ワンポイント


一橋は、そう言って能力でミニゴーレムを一か所に集めた。


「そうか。じゃあ、最後までとことん付き合ってもらうぞ」


【グラヴィティ】


一ノ谷は、そう言いながら集められたゴーレムをつぶしつつ、

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