第22話 チェンジ

走ってる途中にも様々な敵が攻撃を仕掛けてきた。

先ほどのあのクソデカクワガタ。正式名「テラビートル」のほかにも、スライムやゴブリン、バンプドッグといった森の中でお世話になったような奴らもいた。


「なぁ、こいつらどこから来てるんだ?」


双川が口を開いた。まだこの村に来てから時間がたってないが、中にまでモンスターが来ているところは見たことがなかった。


「さぁな。そこらへんで沸いてるんだろ」


「にしてもこの量は異常だぞ?」


すると


「あ、いた!」


遠くからそう言いながら走ってくる人影が見えた。


才賀さいが?どうしたのそんな慌てて…」


不和色ふわいろ才賀さいが。元・3-Dのうちの一人だ。


「この中に、回復薬持ってる人いる?」


「あ、俺持ってるよ」


そう言いながら俺は五つほど回復薬を取り出し、不和色さんに渡した。


「ありがとう。あと、暁と双川。まだ戦える?」


「ああ、俺は構わないぞ」


「俺も。まだ時間消費してないから」


「じゃあ、僕の能力でちょっと送らせてもらうね」


「え?どういうこと?」


「あとそこのカップル二人は負傷者の手当て手伝って」


そう言って不和色さんは話も聞かなで俺と双川に触れた。触れられたところにはうっすらとではあるが、よくわからない紋様が見える。不和色さんに付けられたのだろうか?


「じゃあ、二人ともがんばってね」


【チェンジ】


不和色さんがそういったとたん、暁と双川が消え、そこにはケガをした村の人二人がいた。


「ほら、ボーっとしてないで手伝って!」


いきなりのことに頭が追い付いてない二人に声をかけながら、不和色さんは回復薬のふたを開けた。




ストンッ


さっきまで目の前にいたはずの不和色さんが消えた。


「不和色さんの能力か」


不和色さんの「送る」という発言。再び見るともう消えていた紋章。そして、【チェンジ】という名前からして対象同士を入れ替える能力だろう。回復薬を所望されたから、負傷した誰かと入れ替わったんだろう。



「おい、暁。あれ見ろ」


双川が、驚いた顔をして俺の肩をたたいた。俺はどうしたんだと思いながら双川の視線の先にあるものを見た。


「まじか…」


そこには、チュートリアルで戦った時よりも大きいゴーレムが、建物を壊していた。


「冠木の父さん、確かあの時出したのは弱体化させた奴って言ってたよな?」


「ああ、確かに言っていた」


あの時の奴は速水が一方的にボコボコにしていたが、今回はその時の奴よりも強い。速水と互角。いや、速水以上の強さは確実だろう。


「双川、これ持っとけ」


俺はそう言いながら回復薬を五つ、アタックアップ、タンクアップ、ファストアップをそれぞれ一個ずつ渡した。


「ありがとう。行くか」


双川は、そう言って薬を受け取るなり、すぐさまファストアップのふたを開け、飲み干した。


「ああ。行くぞ」


俺もファストアップのふたを開け、中身を飲み干した。


そして俺と双川はお互いの目を合わせ、ゴーレムの方まで走り出した。

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