第20話 石切丸
この村の商店街は、村の中心部に位置している。
商店街とはいっても、ほとんどの店は室外に出ており、市場と言った方が正しいかもしれない。
「で、刀ってどこに売ってんだ?」
「そろそろつくぞ」
俺は、売っている食べ物のおいしそうな見た目やにおいを感じながら双川に着いて行った。
「ついたぞ。ここだ」
そう言って立ち止った双川の前には、この商店街では珍しく、立派な建物があった。
「ウェポンマスター…」
俺は、店の看板に書かれた言葉をつぶやいた。おそらく、店の名前だろう。
「入るぞ」
そうして、俺と双川は建物の中に入った。
ガララッ
「いらっしゃいませ~」
中に入ると、扉につけられた鈴の音とともに、店員さんの元気な声が聞こえた。
店には刀や槍、弓や盾。拳銃やライフル、バズーカまでもある。
「前この店来た時に、良さそうなのあったんだけど金が足りなかったんだよね」
そう言いながら双川は迷うことなく店の中を歩いていく。
「これだ」
双川は立ち止ってそう言いながら、指を指した。
そこには、ショーケースに入った日本刀が入っていた。そして、その横に値札があり、そこには「石切丸」と書かれている。
「もう完全にひとめぼれだよ。この世界来るまで刀なんて全く興味なかったはずなのに、今では興味しかない。もっと刀について知りたいよ」
双川の目がものすごく輝いて見える。まるで、ヒーローショーに始めてきた子供のようだ。
「なるほど。確かに高いけど、今のお前の持ち金で買えないほどではない。俺は刀については全くわからないし、仮に何か知ってたとしても横から口だしていいことでもない。好きにしていいんじゃね?」
「だな。すいませーん」
双川は、店員さんを呼んで、石切丸を購入した。
ガララッ
「ありがとうございました~」
「くぅ~、かっけぇ~」
双川は、興奮のあまり石切丸を両手で抱きしめている。俺にはこういう経験はないが、そうなる気持ちは少しわかる。ただ、双川がこうなるタイプなのは少し意外だった。
「それで、暁はどこ行きたいんだ?」
「ああ、俺はちょっと薬屋さんに」
「なるほど。回復薬か」
双川はすぐに薬屋に行く目的を理解した。
この世界がゲームである以上、回復薬、もしくはそれにあたる回復アイテムはどこかにあるはずだ。この世界での死が現世でどのような影響があるのかわからない時の恐怖は、正直この世界の死=現世での死だと知ってた方がましだと思えるほどだ。なので現世よりも命、この世界ではHPは精神的な意味でも大切なのだ
「分かったんなら話は早い。早速行くぞ」
「おう」
そうして俺と双川は薬屋まで走り出した。
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