第19話 刀

ザシュザシュザシュッ


「やっぱ刀っていいな~」


双川は次々と目の前の敵を斬っていく。なんか、めっちゃ楽しそう…


「じゃあ、ここで一回飛ばすか!」


【サイクロン】


双川は、自身の刀に風をまとわせた。


「さぁ、吹き飛べ!」


【鎌鼬】


双川が刀を上から下に振り下げた。


グウォン!


すると、強風とともに巨大な斬撃が飛び、相手を斬り飛ばした。


「まじか…」


俺は、驚きのあまり唖然としてしまった。あんなボロボロな刀であれほどの技を出せるとは、刀について無知に等しい俺でもそのすごさはよくわかる。


「さて、そろそろ仕上げと行きますか」


そう言って双川はわずかに残った敵の方を向いたとき


【電光石火】


ものすごい光と雷音とともに目の前の敵が斬り倒された。敵がいたところには、誰かが素早く駆け抜けたのだろうか、土埃が立っている。


「四人とも、大丈夫⁉」


光と土埃が晴れたところには、聖徳しょうとくさんがいた。

聖徳しょうとくむらさき。中学の時はとにかく働いており、放送委員委員長、演劇部部長、どんな仕事も頼まれたらやるという完全に社畜そのものだった。


「ああ、ありがとな」


「これで全部片付いた?」


「多分な」


「そう。よかった」


そう言って双川と聖徳は刀を鞘にしまった。


「じゃ、こいつらのドロップアイテム回収して報酬もらいに行くか。みんな、行くぞ」


双川がそう言って村に戻りだした。俺達も自然とそれに着いて行った。




「えーと…ものすごい量ですね…」


冒険者ギルドのクエストクリア窓口のお姉さんが引きながら言った。

話によるとスライム液が413個。ゴブリンのこん棒が329個。バンプドッグの牙が216個。これだけでも凄いのだが、あれだけの数を倒したんだ。レアドロップも結構ある。

スライムの内臓が149個。これは見た目が見た目なので正直みんな拾いたくなかったが、スライムの内臓なんてあまり聞いたことないし、レアアイテムなのは明らかだったので無理して拾っておいた。ゴブリンの腰布が23個。これは基本倒したときに一緒に消えるか、攻撃の巻き添えでボロボロになったりでなくなるらしいが、俺と桃山さんは物理。安土さんが毒だったのであまり消えずに済んだようだ。最後にバンプドッグの爪が132個。これに関してはそもそも一匹からとれる量も少ないらしい。


「やったー、大儲けだー」


建物を出ると、安土さんと桃山さんがはしゃぎだした。報酬は均等に分けたが、それでもかなりの量になった。


「なぁ、これからどうするんだ?」


俺は、みんなに聞いてみた。


「私と濃はもう少し森でモンスター狩ってくる」


安土さんがそういうと


「じゃあ、私もついて行くよ。モンスターサンクチュアリ怖いし」


聖徳さんがそういった。

モンスターサンクチュアリ。俺たちがさっき遭遇した、一か所にモンスターが大量に出現する現象のことらしい。低確率ではあるが、前触れもなく訪れて、起こる場所によってはトップレベルの冒険者でもやられてしまうらしい。

またあれに遭遇したら二人だけで何とかなるとは思えない。聖徳さんはある程度戦えるようなので着いて行くというのであれば安心である。


「双川はどうするんだ?」


「俺はちょっと新しい刀買ってくる。いいもの使えばその分いいだろうしな」


「そうか。商店街か?」


「そうだ」


「じゃあ、俺もいろいろと買っておきたいものがあるし着いて行くわ」


「了解。じゃ、ここで二組に解散かな?」


「そうだね。じゃあ、また後で」


そうして俺たちは二組に分かれることになった。

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