第18話 粗悪品

ダーン!


これでもう五十匹は倒した。でもまだ敵はたくさんいる。腕時計を見てみると、残り時間二分を切っていた。このペースじゃ多分間に合わないな。あの二人で何とかなるのか?

俺は少し不安になって、二人の方向に目線を合わせた。


「はぁー!」


ドーン!


安土さんがゴブリンを突き飛ばした。けど、突き飛ばした程度じゃいくらゴブリンでもやられることはない。すると…


「グボッ」


ゴブリンが苦しそうにうずくまり始めた。よく見ると白く光っており、紫色の泡が体から出ている。


「このゴブリン。他のと比べて少し毒に弱いみたい。残念だったね」


安土さんがゴブリンを煽っていると


ヒュン!


後ろからこん棒が飛んできた。こん棒は安土さんの腕にかすり、出血してしまった。


「やったわね…」


安土さんが後ろを向くと、そこにはこん棒を投げたと思われるゴブリンがいた。


「でもよかった。先にあのゴブリンに毒付けといて」


そう安土さんが言うと、出血していたはずの腕の傷が塞がり、血が止まった。


ドーン!


すると、突然こん棒を投げたゴブリンが遠くまで吹き飛んだ。


「やった!当たった!」


少し離れたところに桃山がいる。多分、石でも投げたのだろう。何か攻撃力にバフがかかる能力でも持ってるのだろうか?


「濃!ナイス!」


「茶々、まだまだ行くよ!」


そう言って二人はまた戦闘に戻った。向こうはどうやら大丈夫なようだ。




安土茶々 能力:ポイズンコネクト 

自身の攻撃に毒付与の効果をつける。毒状態の相手を発光させ、相手の食らった毒ダメージ分回復する。


桃山濃 能力:幸運 

自身の攻撃が確実にクリティカルになる。




さて、こっちもがんばらないとな。

ちまちま一匹ずつやるのもめんどくさいし一気にやろう。


俺はそう思って拳を振り上げた。


反逆時間リベリオンタイム30サーティーリミット】


俺は能力を発動して地面を思いっきり殴った。


ズドーン!


すると、ものすごい衝撃音とともに地面が揺れ、あたりの敵はそのまま倒れた。


「ふぅ、まぁ結構やれたかな?」


反逆時間リベリオンタイム・リミット】 残り時間を任意の時間削ることで、削った時間に応じた超火力を放つことができる。さっきは三十秒をあの一撃に圧縮した。なので、腕時計の時間は一気に減ったりはしていない。たった六分の一ですらあの火力だ。使ってる本人ですら少し恐怖を感じる。


「しかし、まだまだいるな…」


さっきの攻撃でかなりの敵をやれたが、それでもまだそれなりにいる。残り時間で狩ることは厳しそうだ。素のスペックで戦うの確定か…

俺がため息をついた次の瞬間。


ザシュザシュザシュッ


斬撃音とともに目の前の敵が倒れた。


「三人とも、大丈夫か?」


敵が倒れたところに立っていたのは、日本刀を持った双川だった。


「双川?お前その刀どうしたんだ?」


「クエストの報酬金で買った。安物だから素人でも分かるレベルの粗悪品だがな」


確かによく見ると刃こぼれをしており、柄もボロボロだ。


「お前、そんな刀で無理に戦わないで素手で戦った方がいいんじゃねぇのか?」


「刀は男のロマンだろ。使わない手はない。それに、俺にかかればこんな粗悪品でもなんとかなる!」


双川は、ものすごく自信満々に答えた。双川なら最悪の事態にはならないだろうし、もし最悪の事態になりかけたら俺が助けに入ればいいか。能力は温存しとくか。


「敵モブども!この刀の錆になれ!」


双川は刀でテンションが上がってるのか、子供のようにはしゃぎながら相手に斬りかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る