第14話 ゴブリン

外に出るとそこには速水と双川がいた。


「よっ、二人とも。こんな時間にどうした?」


「ちょっと眠れなくて、そこらへんうろうろしててな。そしたら双川もいたんだよ」


「ああ、明日の朝飯確保しないといけないし」


「双川もか。俺もそう思ってこれからクエスト受けに行くんだ」


「じゃ、三人で行くか」


そうして俺たちはこの村の冒険者ギルドの本拠地に行った。

寮ということもあり、本拠地は目と鼻の先の距離であった。スマホの時計によると、もう十一時を回っており、あたりのお店と思われるところのほとんどが閉まっており、本拠地も明かりは消えてるが、クエストは外にある掲示板からでも受けられるようだ。


「何受ける?」


「もう夜も遅いしあまり時間のかかりそうなやつは避けたいな」


「じゃあ、これとかいいんじゃね?」


そう言って双川は掲示板に貼ってあるクエストの書いてある紙を一枚破り取った。そういえば掲示板に貼ってある紙を破り取るのがクエスト受注の証明になるって案内してくれた人が言ってたな。その紙にはこんなことが書いてあった。


ゴブリンの落とすゴブリンのこん棒を10個もってこい。

難易度:E 報酬:5000円


クエストの難易度は簡単なのから順に、E、D、C、B、A、Sと表記されてる。俺たちはまだ新米なのでEかDのクエストしか受注できない。


「5000か。一人当たりざっと170円くらいか…一人一枚食パン食えるか?」


「そうだな。さっきそこにコンビニあったんだが、物価はそこまで俺たちの世界と変わらないようだし、大丈夫だろう」


「そうか。じゃあ、行こうぜ」


俺達は、村を出て昼の間俺たちが迷っていた森の中に入った。


「ところで、ゴブリンってどこにいるんだ?」


俺は、ふと気になって声に出した。


「双川、取ったってことは知ってるんだよな?」


「知らないけど?」


「え?」


「ん?」


「は?」


一気にあたりに不穏な空気が流れた。


「ゴブリンって、どんなところいるんだ?」


「知らん」


「というより今、夜だからあいつら寝てるんじゃね?」


「おいこれどうすんだよ!」


「知るかよ!」


「いや双川お前がこのクエスト選んだんだろ!」


「いやそんなの報酬だけ見て決めたに決まってんだろ!」


「もっとまじめに決めろ!」


「いや人任せにしといてそれはなんだよ!」


三人であーだこーだ言い合ってると…


ざっ ざっ ざっ


どこからか足音が聞こえてきた。


「何だこの足音?」


「どうやら、俺たちの騒ぎ声で近所の敵モブが目を覚ましたようだ」


「なるほど。で、こんな序盤で足音のする敵モブ。スライムではないな」


「てなると…」


奥の方から、何か影が見えてきた。近づいてくるにつれその影の正体があらわになっていく。

俺の腰ほどもない身長で全身が緑色。腰には茶色い布を巻いている。

ゴブリンが群れでこっちにやってきた。


「あれ、何人ぐらいいると思う?」


「ざっと十五匹はいるかな?」


「じゃあ、クエストはなんとかなりそうか」


「よし、じゃあ暁。先発頼む」


「え?なんで俺だけ?」


「俺能力の風でこん棒ぶっ飛ばしちゃうから」


「俺より戦闘慣れしてない暁行って練習した方がいいだろ」


「まじかよ…」


双川はともかく、速水はこの前もそんなこと言って戦わなかったよな…


「安心しろ。怪我したら治してやる」


「あー、もうわかったよ。だけど、一つだけ言っていい?」


「ん?なんだ?」


「俺はもうあの時戦闘のコツはつかんだし、速水に治してもらう怪我も今回はないと思う」


反逆時間リベリオンタイム


俺は地面をけって走り出した。


ドーン!


俺は一瞬にしてゴブリンの目の前に行き、一匹を殴った。

殴られたゴブリンは吹っ飛ばされ、後ろにあった木にぶつかり倒れた。


「あいつ、戦闘なれるの早すぎだろ…」


「双川、お前も人のこと言えないぞ」


「速水は初戦で無双してたじゃねぇか」


「まぁな」


「ちょっとあいつに負けてられないし、風抑えて俺も行くわ」


「待て、俺も行く」


「ご自由にどうぞ」


【サイクロン】


双川は、自身の後ろに竜巻を起こし、その風力を使ってゴブリンの方まで飛んでった。


「ったく、俺だけ素直に走ってあそこまで行くのか…ま、いいや」


速水は、地面を強く蹴ってゴブリンたちのところまで駆けだした。暁ほどではないが、十分早い。


そこからはもうめちゃくちゃ。各々が自由にゴブリンをぼこぼこにしていき、ゴブリンの抵抗もむなしくあっという間に終わってしまった。


「なんか、あっけなかったな」


「これまで戦ってきた奴らが異常なんだ。序盤の敵なんてこんなもんだろ」


「それもあるだろうけど、単純に戦闘向き能力。しかも戦闘に完全になれた三人で言ったらこうなるだろ」


「速水は戦闘向きじゃないだろ」


ゴブリンのこん棒を回収しながらそんなことを話していた。


ゴブリンのこん棒は、いくつかどこかに吹っ飛んでしまったが、十本は確保できた。


「双川。お前制御の仕方学ぼうか」


「はい…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る