第12話 ギルド

城のあちらこちらに散らばっているみんなを集めるのには一時間ほどかかった。


「ったく、この城無駄に広いんだよ…」


黒川が少しキレてる。


「まぁ、正直その気持ちはわかるが、一時間も待たせてんだ。愚痴ってないでさっさと行くぞ」


そう言いながら俺がドアノブに手をかけた時。


「ちょっと待って!」


引金ひきがねが声を上げて止めた。

引金ひきがね一射いっしゃ。サバゲ―が大好きで、銃に詳しい。グロック王のことを伝えた時は、「グロックって拳銃じゃん!」とテンション上がってた。実際、冠木父もそれから名前とったんだろう。


「引金、どうした?」


「国綱って奴はまだこっちに敵意ありそうなんだろ?」


「ああ、多分な?」


「じゃあ、入ってきた瞬間やられたりしない?」


「あー、確かに」


完全にその可能性に気づいてなかった。なんならグロック王も殺意は隠していただけで元からそのつもりだったかもしれない。


「じゃあ、どうする?」


「あ、じゃあ僕がなんとかする?」


そう言って佐久間さくまが名乗り出た。

佐久間さくま来都らいと。小説家になるのが夢で、そのせいか文系科目と理系科目の知識の差があり得ないほど空いている。高校だと演劇部で台本書いてるらしい。


「佐久間、なんかできるの?」


「うん。僕の能力【フューチャースキャン】は三秒後に起こることを見ることができる。それを使えば大丈夫だと思う」


「え?能力つよ」


「ああ、チートだろ」


佐久間の能力に速水と双川が反応した。現段階だと、この二人が戦闘力TOPワンツーだ。本人たちもその自覚があるのだろうか。常に戦闘が脳の一部を占めてるように見える。


「なんか、あの二人、似てるな」


青山がそういった。


「だな。戦闘うまいし気が合うんだろう」


「こっちから見たらお前も大概だけどな」


「え?そう?」


「戦闘うまくない奴はあのスピード乗りこなせねぇよ」


青山に言われて俺は少し恥ずかしく口元を手で隠した。


「じゃあ、行くよ」


そう言って佐久間はドアノブに手をかけた。


【フューチャースキャン】


佐久間は、能力を発動して扉を開けた。


「お前ら、遅かったな」


扉を開けた先には、グロック王と、国綱がいた。

部屋は縦長で、豪華。グロック王は奥の方の、他のところより高くなってるところで椅子に座っている。歴史の教科書に載っていた、戴冠式が行われるところみたいだ。


「すごいな…」


みんな、この部屋の豪華さに言葉を失っている。


「皆さん、そんな後ろにいないでもう少し前まで来てください」


グロック王が言った。この声、どことなく優しさを感じる。

俺達は言われた通り、前のほうまで行った。


「さて、まずは私の兵隊たちが乱暴なことをして申し訳なかった。謝らせてくれ」


「…すまなかった」


グロック王に続いて、国綱が言った。いや、言わされてるといった方があってるだろうか。謝る気ゼロの声である。


「さて、本題に入らせていただくが、君たちはどこから来たのかね?」


やべぇ、なんて言おう。馬鹿正直に本当のこと言っても信じてもらえるわけないだろうし…


「私たちは、冒険をしているものです。最近始めたばっかで慣れないこともあり、森の中で迷子になっていたところでここに着きました」


ゲーム大好きな堀井ほりい芸武げいむが言った。堀井、ナイスアドリブ。


「そうだったか。それは災難だったな」


グロック王は、堀井の言うことを全く疑っていない。


「もしかして、君たち、所属がないのかね?」


「所属?」


「なんですかそれ?」


みんなが頭の上に?を浮かべてる。


「冒険者は冒険者ギルドに所属しているものなんだが、もしやそれを知らないのか?」


「はい、まだ新米で勢いで出たものでして…」


「そうか…なら、これも何かの縁じゃ。我がはじめ村が運営する冒険者ギルドに入りたまえ」


「え?いいんですか?」


「グロック王。こんな怪しい奴らをギルドに入れるなんて、考え直してください」


国綱が明らか慌ててる。


「国綱、落ち着きなさい。私が大丈夫というのだから大丈夫じゃ。お前たち、この人たちを案内したまえ」


そうグロック王が言うと、兵隊が二人ほど入ってきた。


「ついてこい」


そうとだけ俺たちに行って、扉の外に出ようとした。

俺達は、グロック王に礼を言って、部屋を後にした

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