第9話 間に入るな
「行け―!」
兵隊たちが大声をあげながら二人に突撃しに行った。
「ざっと七人ほどか。綾香、場所が場所だから俺は狩れて三人だ。後四人は頼んだ」
そう言いながら神白は背中にかけていた弓を出した。そういえばさっきみんなで城を回ってるとき、同じ弓を見たな。多分、その時に盗ったのだろう。
ギギギッ…シュン
神白は弓を放った。
ザシュザシュザシュッ
矢は、戦闘の一人に当たり、それを貫通して後ろの兵隊に。そしてさらに貫通して後ろの兵隊に当たった。
「まじかよ…」
神白が弓の扱いがうまいことは知っていたが、中学に弓道部がなかったこともあり、実際に見るのは初めてだ。
「神白、お前すげぇな」
「だろ?伊達に大会優勝してないんだよ」
神白が少し上機嫌に言った。
「ま、三人一気にやれたのは能力のおかげだけどな」
「そういえば、神白って能力何なんだ?」
「【スナイパー】。俺の使う弓の火力を底上げすることができる。レベルが上がると火力アップ以外にも何かついてくるらしいけど、始まったばっかだしまだわからん」
「そうか。お前にぴったりだな」
いいな、使いやすくてしかも本人にあってる能力って。俺なんて使いにくくて俺にあってないんだけど…
「あれ?そういえば、九十九さんは?」
「ああ、綾香ならそこにいるぞ」
そう言いながら神白は兵隊たちの方を指さした。
「うわっ、なんだこいつ!」
「なんで場内にスライムが」
「しかもこのスライム、なんか強いぞ!」
兵隊たちが戦っていたのは、RPGなどでは序盤に出てくるくそ雑魚、ラノベではチート並みに強いことで有名なあのスライムだった。
「綾香の能力、【変身】っていうんだけど、ボスとかの特殊な敵を除いた倒したことのある敵になれるらしい」
「え?九十九さん、スライムいつの間に倒したんだ」
「ああ、森の中で弱ってるやつを気づかずに踏み殺してた」
「えぇ…」
スライムもとんだ災難だったな…
とは言え、いくら九十九さんに身体能力が高いからと言って、そんなくそ雑魚スライムじゃまずいのでは?
そう思ってもう一度九十九さんの方を見ると
「終わった」
人の形に戻った九十九さんと、倒れてる兵隊がいた。
「お疲れ綾香。がんばったね」
「ありがとう。純人」
どうやら、九十九スライムはRPGではなくラノベに近い性能らしい。
「はっ、俺としたことが、すっかり寝てしまった」
突然、俺の真横で寝ていた青山が目覚めた。
「あ、青山。さっきはごめん」
「いや、大丈夫だ。じゃあさっそく調べてみる…」
すると、青山が神白たちの方を見た途端固まった。
「あれ?青山?おまえどうした?おーい」
俺が青山を揺さぶると、意識を取り戻した。
「暁、行くぞ」
「へ?」
「いいから行くぞ!」
「え?ちょは?」
そう言って青山は俺を引っ張って走り出した。
「おいまたこれかよ!」
そんなわけで神白たちが見えなくなって一分が経過しただろうか。ようやく青山が止まった。もうどこで曲がってここまで来たかわからない。
「青山、お前急にどうしたんだ?」
「いや、ダメだ…」
「ん?何がダメなんだ?」
「カップルが二人そろってるところを邪魔するなんてダメに決まってる」
は?
「いや、確かにいちゃついてるところを見てみたい気持ちもわかるぞ?俺だって見てみたい。でもな、ああいうのは二人をそっとしといてやった方がいいんだよ!」
「青山ちょっと落ち着いて?」
「いや、物陰に隠れてこっそりとみるのが正解だったか?いやでも隠れれるような場所はなかったしバレた時のことを考えると…」
「ちょっと落ち着け!」
「落ち着いてられるかこのやろー!」
そう言いながら青山は俺の頭をポカスカ殴ったり顔を引っ張ったりしながら言ってきた。
「お前な?人っていうのはな?恋愛してる時、特に好きな人と二人きりの時が一番輝くんだよ。そんな中三人目出してみろ三人目。だめに決まってんだろ!紫色作るときに赤と青に加えて他の色入れるか?入れないだろ。それと理屈は一緒だ。なのに俺とお前は居てしまった。しかも二人だぞ二人!ああ、どうすればいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと黙ってろ!」
【
俺は能力で青山をぶん殴った。青山はそのまま壁まで飛んでいき、気を失った。ごめん、青山。でも、今回ばかりはどっちもどっちだ。
ギギーッ
すると、青山がぶつかった壁が奥の方に倒れだした。
「は?なんだこれ?」
ばたん
壁が完全に倒れるとそこには一つの部屋があった。どうやら世に言う隠し部屋というやつのようだ。そしてそこには、探していた3人と国綱、そして少し偉そうな人が3人いた。
「あ、どうも…」
「貴様、何の用だ」
そう言いながら偉そうな3人はそれぞれ武器を取り出した。
ああ、これ俺死んだわ…
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