第8話 五感
「おい、待て青山。一回止まれ!」
俺は何回も俺を引っ張って先に進む青山にそう言った。もう三十回は言ったころだろうか。ようやく青山が止まった。
「どうしたんだ暁そんな何回も言ってきて。一回行ったらわかるから何回も言わなくていいんだぞ」
「いやじゃあはよ止まれや」
「わりぃわりぃ。で、なんだ?」
「そんななんも考えもせずに走り回って、見つかるのか?ていうかこの道、さっきみんなで通ったぞ」
「え?まじ?」
青山は驚きながらそう言った。確かに俺は方向感が優れているのでわかるが、城の中の道がどこもあまり変わらないのでそのことに気づかないのには無理はない。
「あ、でもあてならあるぞ」
「え?まじ?どこ?」
「まぁちょっと待ってろ」
【五感覚醒・聴覚】
「俺の能力は五感を超人並みに研ぎ澄ませることができる」
「え?まじ?すげぇ!」
俺は大きな声でそう言った。すると
「ぐえっ、耳が…」
そう言いながら青山が倒れてしまった
「え?青山?どうした?」
俺がそう言いながら青山を揺さぶったが、呻くばかりで起き上がらない。
「こいつ、いきなりどうしたんだ。せっかく耳よくしたのに…」
ん?まてよ。俺、さっき大声出したよな?まさか…
「青山、お前、俺の大声で倒れたのか?」
俺はこの時、人の五感が鍛えることが難しい訳を知った。
「あれ?暁。久しぶり」
誰かが俺に対して声をかけてきた。
「あ、
九十九さんは中学の時は女子の中ではトップで運動神経が良かった。まぁ、速水がバグってたから正直九十九さんに限らず他の運動神経いい組まとめて運動系の個性がとられていたが。
それで、なんでこの二人がペアになってるかというと
「二人とも、まだ続いてたんだ」
「まぁな、そんな生半可な気持ちで告白してないし」
この二人、卒業式の日に神白の方から告白して付き合っている。学校生活から二人とも両片思いなのはあからさまでクラス中で有名だったのでいつか付き合うだろうなとは思っていたが、まさか卒業式までかかるとは
「それもそうか」
「それで、えっと…青山は何やってんの?」
九十九さんが少し引きながらそう言った。
「こいつ、能力で耳よくしたんだけど、その直後に俺が大声出しちゃったからぶっ倒れた」
「暁お前何やっとんねん」
「正直、やってしまったと思ってしまった」
そんなことを話していると
「あ、いたぞ!捕まえろ!」
城の兵隊さんたちがこっちに走ってきている。ぱっと七人ほどだろうか。
「完全に俺たち悪役みたいだな」
俺がそう言いながら前に出ると
「いや、暁お前は青山を頼む」
神白に止められた。
「暁、どうせまた事故るだろうし」
九十九さんの発言が、俺の心を傷つけてきた。
「じゃあ、お願いします」
俺はそう言いながら青山のところまで下がった。
「綾香、戦える?」
「うん。行くよ、純人」
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