第7話 一人いねぇ…

そんなこんなで早三十分が経過した。

二人のことが心配で明らか様子がおかしい人が多くなってきた。


「ねぇ、やっぱ心配じゃない?」


一人がそういった。


「でも、だからって俺たち何かできるか?」


「一人ぐらいいなくなっても気づかれないだろ」


「いや、見張られてるかもって、双川と速水が言ってたし…」


全員が、考えるために静かになった。この世界に来てまだ一日もたっていない。四宮さんはどのくらい戦闘ができるか知らないが、街遊さんはさっきに戦闘を見る感じ、ダメそうだ。しかも城の中なら地の利は向こうにある。もちろん、誰かに襲われるという展開がないとは信じたいがどうしても最悪の場合を考えてしまう。


「ああ、それなら心配しなくていいぞ」


速水が口を開いた。


藤村ふじむらがさっき探しに行ったから」


藤村ふじむらしゅん。運動神経がよく、かくれんぼが大好きな男だ。高校だとかくれんぼ部とかっていうそんな部活聞いたことないぞランキングがあったら確実に一位になりそうな部活に所属してるらしい。


「え?でも俺、ずっと扉のところにいたけど、誰もとおってなかったよ」


扉は確かに空いていたが、俺はずっとそこから離れずに、外を見ていた。しかし、この部屋から外に出る人はおろか、廊下を誰かが通ったりもしなかった。


「ああ、あいつ能力つかってたからな」


「え?速水藤村の能力分かるの?」


みんな驚いた反応をした。そういえばまだ能力についてまだ話してなく、みんなの前で使ったものしかわからない。


「ああ、あいつの画面のぞき見したからな。あいつの能力は消音隠密サイレントハイド。自身の姿と自身から出る音を完全になくす能力だったはずだ。かくれんぼ好きなあいつだから能力見た時ひそかにガッツポーズしてたぞ」


たしかに、かくれんぼにはもってこいの能力だ。


「ただ、一つだけ問題があるとすると…」


「すると…?」


「この話したことでさっきそこにいた見張りがどっか行ったってことだ。多分藤村探しに行ったか、四宮と街遊のところで待ち伏せしてるかの二択だろうな」


「それ、まずくないか?」


「非常にまずい」


「よし、バレたならもうやけくそだ。行くぞ」


そうして俺たちは部屋を出て三人を探してみたが…


「なぁ、これ見つけられるか?」


「厳しいと思う」


城の中が予想以上に広く、部屋が多い。おまけに初見ということもあり、すでに迷子になっている。


「今更だけどこれわざわざ30人まとまって探す必要あるか?」


「四人いないから26人」


「どっちにしろだろ」


「まぁそうだな。適当に二人組作って適当に散らばった探せ!」


ごたごたしながらもしっかりと周りに指示が行き届き、二人組を作ったところから探しに行っている。


「おい、暁。一緒に行くぞ」


青山がそういったかと思うと、返事を待たずに俺の手を引っ張った。


「ちょまって青山」


「待たねぇよ。お前誰とでも仲良くなれるけど誰かの一番にはなれない性格だから二人組作れは必ず余るだろ」


「偶数人だから余らないよ」


「知るか。行くぞ」


そうして俺は無理やり青山とともに3人を探すことになった

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