第6話 髪色

速水と国綱。二人はいったん距離をとった。


「仕事熱心なのはいいことだが、俺らは別にお前らと戦いに来たんじゃないし、さっきの雑魚が言ってたゴーレムの手下とやらでもない」


え?雑魚?あの人たちが?俺そんな奴らに攻撃すらできなかったの?

俺の心が、ひそかに傷つけられた。


「そうか。悪かった」


そう言いながら国綱は刀を鞘にしまった。


「じゃあ、お前ら何しに来た」


「気が付いたらそこの森の中にいて、みんなで歩き回ってたらここに着いた」


「なるほど。とりあえずお前ら、ついてこい」


そう言われ俺たちは国綱の後に着いて行った。

その影響で村の中には入れたが、見た目はRPGとかの最初の村でよくあるような、木でできた一軒家が並んでいる。

ただ、村の中央にある城だけは立派に作られている。

俺達はそんな城の中に入り、ある部屋の中に入った。


「しばらくここで待ってろ」


そう言って国綱はどこかへ行った。

そこは壁が白く、大きい、学校の会議室のような部屋だった。


「ここで待てって、俺たち何すんだよ」


「これ、大丈夫なのかな?」


みんな、これからのことについて不安になってきている。


「まぁ、大丈夫じゃない?別に何か悪いことしてるわけじゃないし」


俺はそう言ってみんなを落ち着かせようとした。


「いや、安心はできない」


双川がそういった。


「ここまで来る途中、陰から俺たちは常に見張られてた。殺意むき出しで。国綱とかいうやつも、口ではわかったとは言いつつも、信用してないんだろうな」


「見張られてるのは俺も感じた」


双川に続くように、速水も言った。


「何ならこの部屋も見張られてるぞ」


そう言いながら速水は誰もいない空間に向かって手を振った。それを見て、双川も見張られてるのに気づいたのか手を振った。


「なんかカメラでもあるか?」


「いや、見えないけど…」


みんなは混乱している。二人を除いて誰にもそこに何かがあるようには見えないからだ。当然、俺にもわからない。


「それよりも、みんなっていうか、何人かに聞きたいことがあるんだが」


速水が少し言おうか悩んでる様子だった。


「ん?どうしたんだ?」


「何ていうか、その…何人か髪、染めた?」


「へ?」


俺は何言ってんだこいつと思いながらみんなの方を見た。確かに、大半は中学の時と同じ黒や茶色だが、何人かは、ピンクや青などの色になっている。


「いや、高校の校則的に髪染めても大丈夫なやつがいることは知ってるんだけど、これ何人か高校髪染めちゃダメなやつも髪色染めてるんだよ。どういうこと?」


「ああ、なんかこのゲーム変えられるみたいなんだよね」


そう言って一人が画面を出した。


青山あおやま千春ちはる。髪が赤になっている。それなりに明るい性格をしてて、顔もいいのだが、全然モテてないらしい。こいつは中学の時から男女の組み合わせを見ると興奮するレベルのカプ厨だ。本人曰く、高校では抑えてるらしいが、案外すぐばれたそうで周りから変な目で見られるらしい。かわいそうに…

俺は青山に哀れな目で見ながら画面を開き、身体状況の欄を見た。

そこには、身長や体重、誕生日などが記載されてる。髪色のところは黒になっているが、その隣に変更と書かれている。


「あ、ほんとだ」


そう言いながら一人が髪色を変えた。それに続くかのようにみんなが髪色を変えた。やっぱみんな、一度は髪染めてみたいんだな…


「暁、お前は変えないのか?」


速水がそう言いながら俺に近づいてきた。


「そうだね。俺はそう言うの興味ないし。速水は変えないの?」


「ああ、冠木父が何考えてるかわかんないからな」


「警戒心強いね」


すると


「あれ?仕切いなくね?」


誰かがそういった。確かにあたりを見渡しても街遊さんが見当たらない。


「ああ、仕切だったら、ここに来る途中にこの城の人に連れてかれたよ。代表者と話したいって言われたから」


『いや勝手に行くなよ!』


全員が口をそろえてそう言った。いくら元学級委員だからって、無断はないだろ。


「あ、でもそのあと心配だから私も行くって一人着いて行ったよ」


あー、よかった。街遊さん一人だったら心配だったけど、もう一人いるんなら大丈夫か…


支江ささえが」


四宮しのみや支江ささえ。仕事熱心のいい奴なんだが、別に有能というわけではなく、何かと空ぶることも多いので、信用はしてるが一人で何かさせられないなどと言われていた。

ん?まてそんな奴がついていったの?


『じゃあダメじゃん!』


一気に安心が絶望に変わった。

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