第5話 不慣れな戦い
見た感じ相手は五人。弓矢を持ち、腰にナイフをさしている。さっきのゴーレムよりは弱いだろうが、全員体格は優れている。
と、言いつつも結局速水の敵ではないんだろうな。俺はまだ能力に慣れてないし、ここは速水に任せるか。
そう思いながら俺は周りを見ると、速水の姿がなかった。
「は?あいつどこ行った?」
俺はそう思いながらあたりを見渡した。すると、木の上で座っている速水を見つけた。
「おい速水!お前一番戦い慣れてるだろ!」
俺は木の上にも届くように大きな声で言った。
「いやだって俺ばっか戦っててもみんな成長しないじゃん。いつまでも俺が無双できるレベルの相手ばかりとは考えにくいし」
「いやでも…」
「まぁ安心しろ。危なくなったら助けてやる」
そう言いながら速水は自分のステータス画面を見始めた。しょうがない、俺達で何とかするか…
仲間は俺含め四人。俺、双川、矢部、
「放て!」
相手のリーダーだろうか。一番体つきのいい男がそう叫ぶと、相手全員が弓を射ってきた。
【サイクロン】
双川がそれに合わせて、俺たちの前にまた竜巻を出し、矢から守った。
しかし守ってばっかでは勝てない。こっちからも攻めないと。
竜巻が晴れて相手の位置が見えてきた。よし、やれる。
【
俺は能力を発動し、地面を強く蹴った。
これで相手を一人倒し、それに続けてもう一人、さらにもう一人…
なんてそう物事はうまく進まなかった。
ゴーン!
うまく制御できず、敵の横を通り過ぎて門に激突した。
「だから戦いたくなかったんだよ…」
「あいつ、何やってんだ?」
敵の一人がそういった。
うるさい。俺だってやりたくてやってるんじゃないんよ。
「しょうがない。じゃあ、私がやる」
そう言って街遊さんは一歩前に出た。
「お前、戦えるのか?能力なんだ?」
双川が聞いた。
「【命令】。その名の通り相手に命令できるらしい」
「へー…え?強くね?」
「強いよ。じゃあ行くよ」
【命令】
「動くな!」
すると、街遊さんの指から弾丸のようなものが出てきた。それは敵の方へと向かっていき、相手の頭にヒット…せずに横を通り過ぎた。
「いてて…やっぱ制御難しいな…ってえ?
その弾丸はようやく起き上がれた俺の方へまっすぐと進み、俺の顔にヒットした。
「あ、暁君。ごめん」
いやごめんじゃないのよ。
俺は体が動かせなくなるどころか、しゃべることすらできなくなった。「動くな」が、口にも作用したのだろう。臓器系は止まらなくてよかった…
「なぁ、街遊。お前、能力の命中率わかるか?」
「30%。初めて使ったからもっと低いかもだけど、能力説明のところにはそう書いてあった」
「お前、その命中率でよく自信満々で前出れたな」
「いやだって十回に三回は当たるんだよ?そりゃやるよ」
「お前、意外とギャンブラーなんだな…」
そう言いながら双川は少し引いていた。
「しょうがない。じゃあ僕が」
そう言いながら今度は矢部が前に出た。
「お前はギャンブルするなよ」
「分かってる。別にギャンブル要素はないから。僕の【式神術】には」
【朱雀の両翼】
すると、矢部の手に、赤く、何かの生物の羽根を模したような双剣があらわれた。
「【式神術】。かつて安倍晴明が従えたといわれる式神、十二天将の力を扱う能力。その中の【朱雀の両翼】は、朱雀の力をまとった双剣を出す。そもそも朱雀とは…」
「はなてー!」
矢部が長々と式神トークをしていると相手が矢を放ってきた。
「ぎゃー!やっぱ無理―!」
【玄武の盾】
そうして、矢部は能力で出した亀の甲羅のような盾に身を隠した。あいつ、人誘っといて何やってんだ?
それにしてもやはりみんなまともに戦ったことなんてないからだろうか、事故りまくってる。俺だけじゃなくてよかったと、ひそかに安心した。
「しょうがない。じゃあここは俺がなんとかするか…」
そう言いながら双川が前に出た。双川ならさっきの奴らと違ってなんとかしてくれるだろう。そう考えていると
タッタッタッ…
双川の隣を白星さんが駆け抜けた。
「あ、白星まて!」
双川が呼び止めたが白星さんはそれを無視して敵に向かっている。
正直、白星さんにはあまり運動が得意というイメージがない。何なら下手な方だったはず。それなのに大丈夫か?
「小娘一人とは、俺達もなめられたものだなぁ!」
相手は腰のナイフを取り出した。
【デリート・ゼロ】
すると、相手の持っていたナイフが全部、突如として消えてしまった。
「な、何が起こった?」
相手が混乱しているところに、白星さんが蹴りを入れた。
「ぐはっ」
そして、もう一人、さらにもう一人と攻撃し、早くも三人倒した。
ま、まじか…
残る相手はあと一人。多分これ勝ったな。
ん?あと一人?あれ?確か最初五人いて、白星さんが三人倒したから5-3=2であと敵は二人。あと一人どこだ?
俺はあたりを見渡そうとしたが、街遊さんのせいで首どころか、目すら動かない。ほんとあいつ何してくれたんだ。
すると、上の方から微かに足音がした。確か俺の真上は門の屋根だったはず。まさか…
いきなり、白星さんの上から一人敵が飛び下りてきた。どうやら【デリート・ゼロ】を打った時からいなかったようで、手にはナイフを持っている。白星さんも気づいたが、その時にはすでに白星さんの真上にいる。今からじゃ能力も受けも間に合わない。まずい、どうしよう…
しかし、考えても結局俺は今動けない。何もできない。俺は見ることしかできない。目の前で人が死ぬ。目を背けることもできない現実が目の前で起こる。そう思った時。
【サイクロン・上昇気流】
相手は上に吹っ飛んだ。吹っ飛んで上空にいるところに、双川が飛んで相手の目の前まで来た。あいつの風の能力を使えばそんぐらい余裕なのだろう。
【サイクロン・トルネードラッシュ】
双川が相手に連続のパンチを食らわせてる。あれは耐えられないな。
相手は、双川がパンチをやめたと同時に下に落ちて行った。地に着く直前、双川が風を吹かせたのか、ゆっくりと地に着いた。
「白星、大丈夫だった?」
双川は地面に下りて、そう言いながら白星さんに近づいた。
「あ、うん。ありがとう」
そういえば、もう一人の奴はどこに行ったのだろう。さっきまでいたところを見てみるが、そこには相手がゆっくりと双川達の方を見ながら門に近づいている。多分逃げようとしてるな。
あれ?そういえば俺、いつの間に動けるようになってる。なら俺、あいつ捕まえられるな。幸いにも、相手は俺に気づいてないし、この距離ならさっきみたいに外すことはない。
【
俺は、相手にタックルをし、そのまま木にぶつかった。
「いってぇ…お前、絶対離さないからな!」
相手は無言で抵抗を続けてるが、なんとか抑えられてる。
「おい、お前ら。何の用だ」
突如、門の方から声が聞こえた。そこには、一人の男がいた。
背中から刀を下げており、水色の髪を結んでいる。ぱっと見は俺達と年齢は変わらなそうだ。
「まぁいい。斬って終わりにする」
いきなり、男はその場から消えた。
ターン!
大きな打撃音とともに、目の前に速水があらわれた。
「速水、お前いきなりどうし…え?」
速水の目の前には、さっきの男がいる。その男は俺に向かって刀を振り下ろしており、速水はそれを受け止めている。
「お前、何者だ」
速水が、真剣な声で聞いた。
「俺の名は
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