第2話 開戦の夜

「おーい、暁。はよ起きろー」


体を揺さぶられながら声をかけられ、俺は目を覚ました。


「あ、やっと一人起きたよ…」


速水はやみか。ありがとう」


俺はそう言いながら体を起こした。


速水はやみそう。こいつも元・3-Dの一人だ。運動神経が良く、運動会の時は速水がいるかいないかで作戦が大きく変わっていた。


あたりを見渡すと、壁がなく、真っ黒な空間にいた。そしてそこにたくさんの人が転がっている。


「何だこの空間…」


そう言いながら近くに転がっている人の顔を覗き込んだ。そして、俺はその顔を見て驚いた。


「え?これってまさか…」


俺は別の転がっている人の顔を見た。そしてまた別の人、また別の人と、おそらく全員の顔を見ただろう。


「やっと気づいたか」


「ああ、見事なまでに元・3-Dの奴ばっかだな」


おそらく、元・3-Dほぼ全員がこの空間にいる。唯一、冠木だけがいないが。


「俺も最初起きた時驚いたよ」


「とりあえず、全員起こすか?」


「起こしてもいいけど、くそめんどくさいぞ」


「そんなにか?」


「俺が目覚ましてから腕時計で時間見てたけど、一時間かけて起こせたのお前だけだ。それを30人近くやるのか?」


「面倒だな…」


「一応全員脈はあるし、何かやばい状況ではないからそのうち起きるだろ」


そうして俺は速水とともにみんなが起きるのを待つことにした。大体二時間ほどたったころだろうか。全員がぞろぞろと起き始めてきた。


「やっとみんな起きてきたよ…」


「なぁ、ここどこだ?」


「知らん」


「どうすれば出られる?」


「俺たちが知りたい」


「とりあえず助け呼ぼう」


「ここ携帯つながんないぞ」


「くそが」


今起きたみんなが俺と速水にそんなことを聞いていた。やはりみんなこの状況を呑み込めてないようだ。


「おや、皆さんようやくお目覚めですか」


いきなり、どこからか声がした。


「おい、あれ見ろ」


誰かがそう言いながら指を指した。その方向を見てみると、空中に一人の男性が浮いていた。年齢は50ほどだろうか。髪の所々が白く、顔に少ししわがある。


「あれ?冠木のお父さん?」


何人かがそんなことを言った。冠木と特に仲が良かった人や、小学校や幼稚園が一緒だった人は見たことがあるのだろう。


「いきなりで申し訳ないが、皆さんにはあるゲームに参加していただく」


いつの日かアニメで見たようなべたな始まり方だ。もっとも、これ以外に言い始め片があるかと言われると思いつかないが。


「皆さんには私か作り出した世界に行って、ラスボスを倒してもらいます。とはいっても、皆さんはただの高校生。正直、序盤に戦うようなスライムにすら勝てるかどうか怪しい。なので皆さんに一つずつ、特殊な能力をプレゼントしましょう。それを駆使して、このゲームをクリアしてください」


言葉の一つ一つに不気味さがある。何か俺たちの怖がってる反応を楽しんでるような、不思議な感じだ。


「うわっ、なんか出てきた」


誰かがいきなり大きな声で言った。声のした方を見ると、その人の目の前に、近未来が舞台の作品によく出てくるような、液晶のパネルが目の前に浮いていた。


「あ、俺も出た」


「これ、自分の意志で出したり閉まったりできる」


そう聞いて俺も目の前に出してみた。そこにはゲームのステータス画面のようなものが出てきた。それをなんとなく見ておると、【能力】と書かれた欄が目に止まった。


反逆時間リベリオンタイム


これが俺の能力のようだ。俺は、自分の手でそこに触れてみた。すると、もう1枚、俺の目の前に液晶のパネルが出てきて、そこには能力の説明が書かれていた。


反逆時間リベリオンタイム】自身の攻撃力、スピードを3分間上げる


「何だこれ?ウ〇トラマンか?」


俺は思わず大きな声で言ってしまった。周りのみんなも、自身の能力の確認をしている。


「あ、言い忘れてたけど能力関係なしにある程度身体能力を上げといてあるから。じゃあ、チュートリアルがてらちょっと戦ってもらうか」


冠木の父さんがそういったとたん、地面が揺れ始めた。地震?いや、違う


すると、地面を突き破りながら体で岩でできた巨人が出てきた。


「これはゲームの序盤に出てくるゴーレムっていう中ボスを弱体化させたものだ。じゃあ、がんばってね」


そう言いながら冠木の父さんはとたんに消えてしまった。


「あ、ちょまて!」


しかし、消えた後にそんなことを言っても効果はない。もっとも、消える前に行っても素直に従ってくれるとは思えないが。


「おい、暁。ボーっとするな。弱体化してるとは言え中ボスは中ボスだ。しかも全員戦い慣れてない。普通に死ぬかもしれない」


速水が真剣な顔で言った。


「分かった。やるか」

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