第2話 子供達
洋館の中は広く、下駄箱がないタイプの玄関。両端には階段があって、その横に廊下が広がっている造りになっている。玄関ホールで走り回っている少女がこっちに寄ってきた。
「わー!フローラ!おかえりなさい!おにいちゃん、だれ?」
俺はゾッとした。
ロビーで走り回っていた少女は、猫耳が生えていて目がギョロッと飛び出ていて、金髪ショートカットだ。
「ただいま。たまちゃん。わたし いそいでるから、またあそぼうね」
このギョロ目の子は“タマちゃん”って言うのか。
そんでこっちの花の子は“フローラ”だっけか?
「うん!わかった!おにいちゃんもやくそくね!」
ギョロ目の幼女は小指をたてて待っている。怖かったが俺も小指をたててみた。
「ゆびきりゆびきり!」
タマは指切りしたあとしばらくあのギョロ目で俺を眺めた。
だがすぐに「キャハッ」と笑ってどこかへ走り去ってしまった。よく見ると尻尾が爬虫類のようになっている。
「さ!はやくきてきて!」
フローラと一緒にすぐ左手に向かって歩いていく。
すぐそこにある重そうな扉を開けると、そこには子供がたくさんいた。
その子供たちはどれも個性的で、髪色や目玉が夜空のようにキレイだが、腕がフクロウみたいになっていたり、少し発光していて夜でも安心そうな子がいたりした。
「コモリさん、ただいま。やっと見つけたよ。コモリさんのお手伝いになれそうな人。」
フローラは“コモリさん”と話しているようだ。
コモリさんはみんなとは違い、普通の若い女性に見える。だがフローラと似ていて、花が咲き、ツルが髪に巻き付いている。
ここにいる人達はみんな独特な見た目をしてるんだな。
…待てよ?俺は?いや、俺はさっき確認したはず。鏡だって………
そうだ鏡!
俺は急いで部屋にあった姿見で自分を見てみた。
う、なんか生えてる…
これは、うさぎの耳?尻尾は?!
は、生えてる……。
俺はこの世界ではウサギ人間として生きていかなきゃいけないなんて…うぅ…
「こんにちは。あなたがお手伝いさん?」
コモリさんが丁寧に挨拶した。
「こんにちは。コモリさんで良かったですかね、へへ…」
昔から俺は不器用で、愛想笑いが目立ってしまうのだ。
「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。コモリと呼んでくださいな。えっと、あなたは…」
「あぁ!!俺の名前、えっと、アキラといいます。アキラとかアッキーとか、好きに呼んでください!」
コモリさんはフフッとほほえみながら
「それではアキラさん。よろしくお願いしますね。」
「ええよろしく…」
よろしく…?
「待ってください!よろしくってなんのことですか?俺、まだなんにも…あ!そうそう宿!住まうところがなくて、一晩だけでいいので泊めてもらってもいいですか?」
コモリさんはぽかんとしている。
「あ、すみません。色々と口走ってしまって…俺、何したらいいのか…」
「あぁ、フローラから何も聞かされていないんですね?それでは…」
言いかけたところで、ふわふわとしたクラゲみたいな少女がコモリさんに手に持っているものを見せた。
「みて。すごく、きれいでしょ?わたし、これすき」
ニコっと笑ったその少女の手には、シャボン玉みたいなクマに、群青色のスライムみたいなものがキラキラ輝いている。
「あら。すてきね。自分で作ったの?」
「くまはわたし。でも、あおのキラキラは、ナウトちゃんがやってくれた。」
ナウトちゃん…か。こんなに子供がいるんだ。誰が誰だか…でもタマは覚えてる。印象に残るからな。
「そうなのね。とってもよくできてるわ。」
それを聞いたくらげみたいな少女はニコっと笑ってまた少女達の中へ去っていった。
「話がそれちゃってごめんなさいね。今のはバブルくらげのべジュリーちゃんよ。」
「ん?バブルくらげって?」
「細かいことは一緒にお話しますから、別室でお話しましょうか。ここだと子供たちが、ね?」
俺は暗黙の了解でコモリさんの後をついて行った。
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