第38話 たい〜ほ

治療を頑張った俺はそのまま気絶した。

目が覚めると…………檻の中でした♪


「どうなってんだよ!? 何処ですか、ここ!?」


騒ぎを聞きつけた看守がやってくる。


「あーっ、君か。起きたんだね? 罰金は代理人が支払い済みだから引取人が来たらもう帰って良いよ」


看守さんから告げられて、待つこと1時間。シリウスさんが迎えにきた。


「すみませんでした」


「ぶははっ、まぁ、うん、どんまい!」


俺が謝罪すると彼は爆笑しながら俺を引き取ってくれた。


「今回は運がなかったね!」


「…………」


待ってる間に、なぜ留置所に入れられたのかを看守さんに聞いてみた。全てはあの治療が原因だった。




数時間前。


宝石族の妹ちゃんを治療する為に大規模な魔法を行使した。

その結果、彼女は目を覚まし喋れるまでに回復したそうだ。ここまでは良し。俺も少しは覚えてる。

問題はここからだった。


「大変です! 衛兵たちが店の前に集まっています!!」


「なに、それは本当か? 今すぐ確認するぞ!」


奴隷商を取り囲む様に集まった衛兵たち、対応した支配人の男性は問われた。


「ここで大規模な魔力行使が観測された。届出のない大規模魔法は禁止されている。何を行ったのか、その内容を述べよ」


「はっ!それは特殊奴隷の治療を行っていたからです!!」


俺が気絶していることもあって、ノアが代理で説明にあたった。


「なるほど。では、その者たちを確認しても構わないな?」


「二人共、今は疲れて寝ておりますが、見るだけなら問題ありません。お静かにお願いしますね」


そうして治療された少女と気絶した俺を確認し、身元確認も行われて潔白だと証明された。

しかし、それだけでは終わらなかった。


「では、治療を行った娘を連行する」


「ちょっと待って下さい!それは何故ですか?」


「違反者を牢屋に入れるのは当然であろう?それに先程申したではないか。この者は冒険者であり、関係者ではないと」


俺の身分が問題だった。

やった事は治療行為でも、届出のない大規模な魔力行使をした事実であり犯罪だ。


これが教会関係者や教会内部で行われた事だったら治外法権で罪にはならない。


しかし、冒険者の場合は別だ。身分は保証されるものの、危険な力を持った集団故に厳罰に処されるのだ。


「内容が医療行為故に罰金は安くなる。牢屋に入れるも引取人が来れば直ぐに受け渡そう」


「……分かりました。罰金はこの場で私がお支払い致します。それから扱いは丁寧にお願いしますね。洗礼を受けていないとはいえ、教会関係者なのは事実ですし。二人の伯爵の保護下に有ります。引取人はリュミエール伯爵にお願いするとしましょう」


「おお、分かった。丁重に扱うと約束しよう」


というやり取りが有った様で、牢屋にぶち込まれはしたが貴族対応の扱いだった。魔導具を無理やり回収されたりしていないので性別とかもバレてはいない。


それにしても医療行為でもダメなものはダメと衛兵さんたち厳し過ぎるよ。ステラさんたちには何かしらの身分を発行して貰っておくんだった。






「ミヤビさん、ご無事で何よりです!」


「心配かけてごめんね、ノア」


伯爵邸にてノアと再開した。結構迷惑をかけたようで申し訳ない。


「今回の件を受けて、神官のタリスマンを貰って来ました。公式発表されるまでこれを提示した下さい」


治療行為でまた逮捕されるとか嫌なので凄く助かる。


「罰金も代わりに払わせちゃってごめんね。お礼に、ノアのお願いを出来る範囲で何でも1つ聞くよ」


ノアにお金を渡しながらそう提案すると彼女の目がキラリと光ったのを見逃さなかった。


「分かりました。少し考えたいので夜に伝えしますね」


変なお願いでないことを祈ろう。


「そういえば、コロンさんが契約を進めたいから店に来て欲しいと言ってました」


「コロンさんって誰だっけ?」


はて? そんな名前の人が知り合いにいたかな?


「奴隷商の支配人ですよ。ミヤビさんの案内をかって出ていた」


「ああ、あの人か。えっ、そんな女っぽい名前なの?」


あの人のイメージからはかけ離れている気がする。


「本人もそう思っているからか、または付き合いが短いから名乗らなかったのかも知れませんね」


「よく考えると気絶しちゃったから、契約更新できてないんだ」


「そういえば聞いて無かったけど、奴隷は何人買ったんだい?」


「6人ですね。人が3人、亜人が3人って所です」


「ミヤビさんの足りない所を補う人材として、元貴族と商人、冒険者から主に選びました」


「良い人選だ。貴族と商人を預けてくれるなら情報を更新させてあげよう」


「そこら辺の情報はからっきしなんでお願いします」


「分かった。家令に伝えておく。それと奴隷の部屋は来賓客が連れてくる使用人の部屋を開けておくよ」






教育と部屋の準備をお願いして、奴隷契約を行う為に再び奴隷商に戻った。

今回通されたのはステージのある部屋でなく、貴族の対応が出来るような来賓室だった。


「それでは特殊奴隷の精算を行います。全員で70万ドラコ(円)になります」


コロンさんに大金貨1枚と金貨4枚を手渡した。


「……確かに確認しました。それでは奴隷たちをこちらへお呼びします」


総勢6名だから大丈夫だろうと思い気や同族さんと妹ちゃんも居るので少し部屋が手狭になってしまった。


「まずは契約内容ですが、原則ルールは竜王国の法に有る物を採用しております」


所謂、守秘義務や奴隷の虐待、意識の制限といったものだ。


知り得たことを漏らすことは禁止して、理由なき体罰を禁止する。また、主の命令には絶対服従とするものの、命の危機に瀕する命令はこの定めでないといったものだ。


特に問題ないので、このままでいい。


「次に愛玩用故の性の範囲ですね。彼女たちは全てを委ねるとの事ですが……」


「こちらから強制すつまりはない。嫌な嫌と言って構わないです」


「分かりました。では、その様に。知識に関しては、必要で有れば望む望まざる関係なく伝える形で宜しいでしょうか?」


「そうですね。時には耳の痛い言葉も必要なことが有るかもしれないです」


間違っていると指摘できることは必要なことだ。


「戦闘に関してはどの様に考えていますか?最初に紹介した子達は冒険者だった子を除いて力を持ちえていません」


「自衛できる位には力を付けて欲しいけど、無理やり連れ出すつもりはないよ。ただ、緊急時には命令に従ってもらうけどね」


「それなら基礎契約内容の範囲で十分でしょう。戦闘参加は本人の自由意志とさせて頂きます」


その後、色々話し合って奴隷契約の内容を決めた。


「それでは最後に奴隷契約の証をどれするか決めましょう」


主なものは2つでどちらにもメリットとデメリットが有る。

まず一つは奴隷紋。安価で壊れる事がなく、好きな位置に刻む事ができる。その代わり、命令違反時のペナルティが少ない。

もう一つは、首輪や腕輪などの装飾品型の魔導具だ。壊れる可能性がある分、命令違反時のペナルティが大きく、素材によっても変わるそうだ。また付ける場所が限られているので目立つことになる。


「自分としては奴隷紋が良いですが、そこは彼女たちに選ばせましょう」


という事で彼女たちの意見を聞く事にした。


元貴族「私は奴隷紋を希望します。輪だと目立ち、交渉時に侮られる可能性が有るので」


元商人「ボクも同じです。更に言うなら服を脱いでもあまり目立たない位置が良いです」


元冒険者「アタシはどっちでも良いから主様の要望通りにするよ」


エルフ「刻むのは怖いので足輪を所望します」


鬼人「身体に刻む物は呪いを連想して嫌だ。私は首輪かな? 主のものだと分かり易いし」


宝石「奴隷紋をお願いします。主様」


エルフと鬼人以外は奴隷紋を刻むという事で決まった。


「それでは刻む位置に、コレを押し当て魔力を流して下さい」


奴隷紋が描かれた紙を手渡された。

練習も兼ねて目立たない位置に奴隷紋を刻んで欲しいと言った商人さんの足の裏に紙を押し当てた。


契約ゲッシュ


「〜〜〜っ!」


紙に魔力を流すと奴隷紋が消えて、問題なく彼女の足裏へと移り刻まれた。

作業を終えた彼女が立ち上がると契約したての影響か、電気が流れた様にビクッと震えて倒れ掛けた。


「あ〜っ、……これは聴き流して頂きたいのですが、愛玩契約が含まれている場合、刻んだ奴隷紋が性感帯へと変化致します」


「……やり直しをお願いします」


支配人さんも分かっていたのか、契約破棄からの新規作成は早かった。


「普段の服装はどんなのを来るんだ?」


「夏場は半袖半ズボン。パーティーでは胸や背中の空いたドレスを着ます」


つまり、薄着やドレスになっても目立たない場所で有りながら、あまり触れない所に付けないといけない訳だ。


その結果、貴族と商人は内太ももに刻む事となった。

悪いことをしてないのに罪悪感が凄かった。あとムラッとしないように心を殺して作業した。


「主様。私はお腹……子宮の所にお願いします」


「それじゃあ、要望通りに……」


「また、何処と言いませんが感度上昇や受胎率を上げる効果も得ることが出来ます」


マジでどうしよう。遠回しに子どもを産みたいと誘われてるって事だよね?


「 ( -`ω-)b 」


今は何も考えずに要望に応えよう。何故か、ノアがゴーサインを送ってきてるしね。


「アタシはおっぱいが自慢だし、ここでも良いよ。一緒にいるお姉さんに良く抱き着いてたし、大っきいの好きなんでしょ?」


「………」


一瞬、この子にこそ足裏に奴隷紋を付けてやろうかと思ったが、宝石族の娘よりも上のお腹に付けた。感度だけ上がるがいい。


「要望に有った輪はこれらになります。素材によってペナルティの内容が変わりますのでご注意を」


こっちは皮系から金属系、植物系まで色々と取り揃えていた。

〈鑑定〉を使い、ペナルティを確認する。


皮系……締め付けながら刃が食い込む

金属系……電流(微弱・中・大)を流す

植物系……毒(麻痺・睡眠・媚薬)を流す


一番安いのは皮系だが、ペナルティがヤバい。流血待ったなし。最悪、首が飛ぶとまで書かれていた。


一番高価な植物系はペナルティが弱かった。人気なのは媚薬。わざと奴隷が嫌がる命令をして、その気にさせるなんて客もいそうだ。


「値段は気にしなくていい。それでペナルティなんだが……」


彼女たちにペナルティを説明すると選ばれたのはーー。


「「植物系(媚薬)」」


「………」


まぁ、愛玩有りの子たちだし……そうなるのかな?


ちなみに輪の代金が一般奴隷一人分と変わず目が飛び出る程に驚いた。

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