第16話 レベリング
伯爵と会った翌日シャロンさんから決闘が滞りなく行われると連絡を受けた。
「叔父様は予想通り動いています。妨害工作する余裕はないと思われますが気を付けて下さい」
「分かりました」
ノアには教会に残って貰った。心配していたが、俺個人なら撒くのもた易い。それに一番されて困るのは搦め手によるものだ。俺に嫌がらせをするとなると対象は教会の人たちしか居ない。
「ミヤビさんの方は準備大丈夫ですか?」
「レベルを上げるに越したことはないので何処かで鍛えようかと。なので、何処かいい所を教えて下さい!」
シャロンさんに可愛くおねだりしてみた。
「丁度良かったです。それではこれを受け取って下さい。少しでも足しになれば良いのですが」
「……これは?」
「冒険者ギルドが把握してる都市周辺の魔物分布図と目安となるレベルです」
「っ!? こんな重要な物を頂いても良いんですか?」
「ギルドでDランク以上の方に販売している物ですが、その頃には経験から知っているので必要ないという方が大半ですね。今回の戦いは私たちにも利が有りますので代金は頂きません」
「本当ですか! ありがとうございます!!」
シャロンと別れた後にレベリングへ向かう。
案の定付けられていたので〈自然体〉で近付いて、ノアに貰った麻酔針をプスッと。
「…………」
なんで彼女はこんなものを持っていたのだろうか?
「ぶくぶく……(ビクンビクン)」
しかも泡吹いて痙攣までしてらっしゃいます。
『マスター、ばっいちです……』
水溜まりも生まれたので、彼を気にするのは止めよう。悪を成敗したと思えば良いや。不用心に命令書を持ってたしね。
俺は暗殺者から命令書を抜き取り、レベリングに適した森へと移動した。
渡された分布図によると草原が広がる東がラビット、北がゴブリン、森となる南がオーク、西がウルフとなっている。東と北はレベルが低いので論外。南のオークは微妙、オーク同レベルだけど数の多い西の森に行くことにした。
さて、レベリングの前に現在のステータスを確認しよう。
種族:人族(半神半人:神度Lv.6)
性別:男性
職業:調律者(聖女)Lv.8
魔法:神聖魔法Lv.8、光魔法Lv.5、水魔法Lv.5、火魔法Lv.2、風魔法Lv.2、土魔法Lv.3、木魔法Lv.2、闇魔法Lv.2、生活魔法Lv.5、触手魔法Lv.6、無魔法Lv.3、空間魔法Lv.4、重力魔法Lv.2
治療行為だけで個人レベルが3つ。神聖魔法が1つ上がってディスペルの発動率が安定していた。
スキル:不老、鑑定Lv.7、性豪、言語理解Lv.10、魔力感知、魔力超回復Lv.5、並列思考、思考加速、収納Lv.10、体術Lv.6、身体強化Lv.6、気配遮断Lv.4、夜目、自然体、剣術Lv.5、短剣術Lv.5、弓術Lv.3、隠蔽Lv.10
スキルは人を見るのと限界まで魔力を使うのがコツらしく鑑定と魔力超回復が上がっていた。その他は特に増えたものはない。
「出来るならレベル10。ダンジョン挑戦の最低レベルを目指したい所だな。それに加えて魔法レベルも挙げられれば……」
今いる森の魔物の強さが平均レベル10なので個人レベルはそれ程心配することもないだろう。
しかし、魔法レベルは使わないと上がらない。
「複腕によるトレーニングも限界有るしな……。ミュウ、何か良い方法を知らないか?」
『それならお手玉しよう♪』
「お手玉……?」
お手玉ってあれの事かな? 玉状の物をジャグリングするやつ。
『たぶんイメージしてる物であってるよ。マスターはイシス様に魔力が同属性で密度が一緒なら跳ね返せる事を習ってないかな?』
「そういえば習った」
魔法はその魔力の密度次第で属性関係なく干渉出来る。
例えば同じ属性同で密度が同じで有れば、干渉して跳ね返す事が出来る。それが反属性ならば対消滅で打ち消せると教わった。
『なので、お互いにボール系を投げ合うの』
「お手玉というよりはキャッチボールでは? でも、面白そうし早速やってみよう」
お互いに10mくらい離れて
「《ファイヤーボール》!」
『《アクアボール》!』
「へっ? うわわっ、〈水〉魔力!!」
ファイヤーボールで始めると決めていたのにミュウはアクアボールを投げてきた。
あわてて〈火〉の魔力を消して、〈水〉の魔力に切替える。
『ほらほら、次は〈火〉を準備しないと火傷するよ?』
ここに来て、ミュウがやりたい事が分かった。
確かにこれはお手玉だ。次々飛んで来るボールに対応した魔力を纏わなければ対象出来ない。
だが、舐めるなでない。二属性くらい余裕さ!
と舐めていたからなのか、ミュウは更なる苦難を強いてきた。
『残念。もう対応しちゃった……それなら《ストーンボール》を追加です。……そして間髪入れずの《サンダーボール》!』
悪戯っ子の笑みを浮かべながらミュウが3つ目所か、4つ目も投げてきた。これでお互いに1つ持ち、飛び交うのが2つになって安定……しそうに見えるが、上級属性〈雷〉を混ぜた事で難易度が爆上がりした。
「キッつ……」
ミュウの方がスペックが上なのか、上級属性の切替が遅くて手間取ってしまう。
「あっ、ーーミギャッ!?」
結局俺が取りこぼし、感電してしまったので他の属性は相殺して潰し、今回のお手玉は中止になった。
「でも、良い練習になったよ」
魔法の欄に雷魔法Lv.1が生えていた。
『このまま1週間毎日続ければ四属性くらいは最低1つ上がると思うよ』
「それなら明日は別の属性にしよう。基礎魔法を全体的に上げて無属性のレベルを引き上げたい。それから上級属性は〈氷〉にしよう」
無属性のレベルは基礎となる七属性の平均レベルとなるので全体的に上げる必要がある。
「それより警戒しよう。魔物が直ぐそこまで来ている」
魔法を相殺する時の音が大きかったので、それを聞き付けてやって来たみたいだ。
西の森のメインはウフル系。機動力と群れが難易度を底上げしている。
『数は5体、距離15m』
「接敵と同時に攻撃するからミュウは漏れた奴に攻撃をお願い!」
森を抜けてウルフたちが顔を出した。
「《エアスラッシュ》……《エアスラッシュ》!」
「キャウン!?」
「「「ガウッーーギャン!?」」」
風の刃を横薙ぎに放った後、少し間を置いてもう一度放った。
先頭のウルフが犠牲になり、残りのウルフたちが気付いて刃を飛び越えるもズラした刃の餌食になった。
「後方に1匹!仲間が盾になって逃れた!!」
『《ストーンニードル》』
「……ギャウッ!?」
地面から生えた棘に最後の1匹は貫き即死させた。死体を回収してアイテムボックスへと収納する。
「ナイス、ミュウ!この調子でどんどん行こう」
その後も4回程遭遇し、順調にレベリングを続けていった。しかしーー
「また、オーク?」
5回目くらいからオークとの遭遇率が異様に増えた。オークは西と南のどちらの森にも分布している様だが、それにしても多い気がする。
『何処かに集落が出来るかもね』
「集落って事は……経験値が沢山!! ギルドの報告も兼ねて偵察しよう。殺れそうなら当然狩る」
『それじゃあ、2手に別れて広範囲を索敵しよう。私はこのまま西を見るね』
「それなら俺は南だな」
2人で魔力感知を別方面に行いオークの集落を探す。
「『これは……』」
どうやら西南……つまりは丁度中間の地点に魔物が沢山集まる気配があった。
ミュウと一緒に早速その場へ向かうと。
「ビンゴ!」
オークが増えて来たので気配を隠して近付くとやはり集落が作られていた。建物はまだ無いが岩で城壁を築いている。
「上位種もいるけど、まだ進化したてなのかレベルが低いな」
名称:オークジェネラルLv.20
「しかもこれはやってみたかった魔法を試すチャンスでは? 元々ある岩を利用すれば……」
レッツ!3分でオークの大規模討伐!
「まずは土魔法で城壁を利用して逃げられない様に包み込みます。ミュウ、中の空気を薄くしてくれ」
『あっそういうこと!……これで良いのかな?』
「グット! 魔物たちが苦しみ始めたら蓋をします」
あとはギルドカードで討伐数が増えるのを見るだけだの簡単なお仕事です。
オーク討伐数 20up↑
5分程で20体を突破、どんどん上がるぜ!
オーク討伐数 30up↑
オークジェネラル討伐数 1up↑
最後まで残っていたオークジェネラルさんもご臨終です!
オークが全て死んだのを確認し、ドームを崩す。窒息死により綺麗な死体が残されていた。
「むふふ……」
個人レベルも魔法も上がって最高だった。今日はこれくらいにしよう。
早速冒険者ギルドに戻ってシャロンさんに報告だ。
"ガヤガヤガヤガヤ……"
「何かあったのかな?」
冒険者ギルドに到着すると何かやら騒ぎになっていた。
「シャロンさん。何かあったんですか?」
「あっ、良かった!ミヤビさん、無事だったんですね! 今、西の森周辺にオークの集落が出来てるかもしれないと連絡が来たんです!!」
「あ〜〜っ、…………それももう有りませんよ。討伐されてます」
「へっ?」
キョトンとするシャロン。俺は個室の利用を取り付け、彼女へと説明した。
「これが証拠です」
俺はシャロンさんにギルドカードの討伐履歴を見せた。
「はぁ、ミヤビさんは魔力量が多いとはいえ新人冒険者ですよね。こんな無茶をして……無茶をしている私たちが言うのもおかしな話ですが」
「無理そうならしませんでしたよ。やれそうだったからしただけです。最悪ミスしても逃げられるだけの手段は残してましたから」
ヤバそうなら俺かミュウが
「……そうですか。分かりました。それではミヤビさんはオークを解体場の方に直接搬入して下さい。ベッカルという男が居るはずです。私はこの事を至急ギルドマスターに報告する必要がありますので。報酬は受付で受け取り」
シャロンと別れて解体場へと移動する。
「すみませ〜ん。ベッカルさん居ますか?」
「おうよ。呼んだかい? 別嬪さんがこんな所にどうしたよぉ?」
「ドワーフだ!!?」
やって来たのはツナギを着た、小柄で髭もじゃのおっちゃんだった。
「はっはっはっ、良く言われる。じゃが、残念ながらオジサン人間なのよね。まぁ、爺さんがドワーフだからその血じゃねぇかと思ってる」
「なんだ残念。あってみたかったのに」
「そいつは悪かったな。そんで何か用かい?」
「そうそうシャロンさんにオークは直接解体場に搬入してくれって言われたから持って来たよ」
「おっ、嬢ちゃんはアイテムボックスが使えるのかい? それとも魔法袋でも持ってるのか?」
「魔法の方だよ。それで何処に出せばいい?」
「こっちの床に頼む。あとで運ばせるから」
「それじゃあ出すね」
「おう。ーーって、どんだけ出すんだよ!? ……えっ? まだまだ入ってる? マジで!? 一体全体何があった!?」
おっちゃんのツッコミを受けながらオークとウルフを納品した。
「ふう〜〜っ、全部出した出した。スッキリ」
貯めた分を放出して一種のスッキリ感を得た。
「おう……これは残業確定だな。今受取書書いてやるから受付に持っていきな。必要な部位とか有るか?」
「例えばどんな?」
「そうさな。定番といえば……コレだな。オークの睾丸」
ナイフで近くのオークの玉袋を切り裂き、金色をした玉を取り出した。
まんま金玉!解剖したカエルみたいに黄色とかじゃない!!
「錬金術師の所に持って行けばいい精力剤になる」
その他にも色々な部位を説明して貰った。
「睾丸10個だけ頂きます。他は特に要らないです」
持っていって精力剤にするも良いし、俺の錬金術の練習にするのも有りなので。
「それじゃあ、明日も大量に持ってきますね」
「明日も大量に来るんかい!!……休もうかな?」
次の日に行くと普通にベッカルさんは居たので、ウルフを大量に渡すと『本当に休めば良かった』と愚痴ってたww
その次の日は逃げる様に休んでいたので、黒い笑みを浮かべた他の職員さんたちから明日渡してねと言われました。
どうやらベッカルさんは大量の仕事から逃げられないようです。
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