第7話 魔法

「長くなるからリラックスして聞いてね」


魔法の話は魅力的だ。でも、今は凄く別の事が気になる。この教室セットは何処から出しました!?


イシスの立つ教壇と背後の黒板。俺が座る勉強椅子と机。ここはテーブル以外何も有りませんでしたよね!?


「この仕事部屋では管理者が指示を出すと望んだ物が現れる。消すのも同じ。例えばこれ」


"カラン"


机の上にシュークリームが現れた。


「食べれるよ」


イシスに言われてシュークリームを食べる。

生地の表面はサクッとしているが中はモチッ。中はクリームとカスタードの二重構造が美味い。


「あっ……」


半分食べた所で消された。本当に消えるんだ。そうか……そうか……


「消せることを見せただけだからちゃんと戻す。安心して」


シュークリームが帰ってきた。俺の歯型がついた食べかけの状態で。


「うん、の夫だ。そっくり。話が進まなそうだから食べてから話そうか」


お茶も出して2人で一服。


「それじゃあ、魔法の話をする。まず、魔法とは何か?」


それは魔力に指示を出し、形を変えて現象を引き起こす技能。


基本属性は、『木』『火』『土』『金』『水』『光』『闇』の全部で七つ。属性ごとに特性を持っており、"活性"や"加速"などの性質を持つが今回は割愛。


複合属性に『氷』『雷』『爆炎』などがある。


特殊属性には『空間』『重力』『時』などがあるけど、特に後半の2つは一般人は絶対無理。神でも一部の者にしか許されない。それも制限付きでだけど。


「ーーここまで分かった?」


「ゲームのチュートリアルを聞いてるみたいで思いの外すんなり入って来ました」


「なら、基本属性の相性は分かる?」


某ゲームみたいにタイプじゃなくて、単純な属性相性だけなら。


「火は木に強く、水に弱い?」


「よろしい。なら、省略。世間では魔法は詠唱によって引き起こされると言われている。でも、これ大きな間違い。本来は無詠唱が当たり前だった」


良い例が魔法を使う魔物だ。彼らは独自の言語を持っているが詠唱を一切しない。


「そもそも詠唱とは安定を求めた末に生まれたもの。これは魔法陣も同じ」


詠唱や魔法陣を分解すると属性と魔力量、発動イメージが含まれる。


「例えばボール系の魔法。詠唱は『大いなる〇〇〈属性〉よ。我が手に集いて(魔力量)球をなし、飛翔して弾けよ(発動イメージ)。〇〇〈属性〉ボール!』って感じになる。陣だと対応する物が記号や文字に置き換わるだけ」


「おぉ、凄く分かりやすいです。先生」


「えっへん」


なるほど。属性と発動イメージは分かるが、魔力量も詠唱に隠されていたのか。


「では、文章を組み替えるだけど新しい魔法を生み出す事も可能なんですね」


「YES。でも、現地の人は出来ない」


とても残念そうにイシスは肩を落とした。


「それは具体的なイメージが出来ないから。無詠唱にも関わってくるけど、詠唱が合っていても魔力があっても発動した状態をしっかりイメージ出来なければ魔力は形を失い四散する」


「イメージが重要って訳ですね」


「そう、そうなの! その点、貴方の世界は非常に面白い。こちらでいう所の空想や幻想が日常に溶け込んでいるからイメージがしやすい。それに新しい形すらも具体的に想像する根幹がある。アニメや漫画などのカルチャーだけでなく、家電製品なんかも発動イメージに繋がる事が実証されてる」


と、イシスは熱く語ってくれた。


「実証って誰が? イシスさん?」


「異世界から来た勇者」


「勇者か〜……いや、勇者!?」


聖女がいるならいそうな気はしたけど、まさか魔王もいる?

あっ、居るんですね。でも、それは魔族の長なだけでジョブじゃないと……。

そして、異世界から連れて来られた勇者は色々な魔法を作った訳ですか。


「彼らはホント色々やった……大変だった(遠い目)」


なので、空間魔法に規制が入った。特に召喚は禁止。ジョブもスキルも廃止したそうだ。


「今では禁忌魔法。使おうものなら神罰覿面。速攻潰す!!」


怒りがヤバい。めっちゃ苦労させられた様だ。


「あ〜っ、それで話を戻しますが無詠唱の魔力量はどうやって決めるんですか?」


属性や発動イメージは分からなく無いが、使用魔力量はどうやって決めるのだろうか?


「それもイメージ。現象に対する魔力量をイメージして込める。だから、威力を通常より弱くしたり強くしたり出来る。非効率だけど大きさなんかも。それじゃあ、表示したステータスにどう魔法が影響するか記載して表示するから確認して。上級権限 〈ステータスオープン記載有り〉」


魔力(魔力量):B

DEX(命中率):C

INT(知力・魔法攻撃力):B

MND(精神力・魔法防御力・回復力):SSS

LUK(成功率):SS


魔法:神聖魔法Lv.5、光魔法Lv.3、水魔法Lv.1、生活魔法Lv.2

スキル:不老、鑑定Lv.4、性豪


「MNDが最高値……何をすればこんな短期間でそんなに上がるの? 加護があるとはいえコレはおかしい……」


わぁ〜い、神様からおかしい判定頂きました。

上がった理由か? 記載項目を見た時点で何となく察しが付いてしまった。


「聞いた話だとBくらいだった筈……ねぇ、教えて」


「えっと……その……」


上目遣いでお願いしてくるイニスに応えたいが、恥ずかし過ぎて言う事が出来ない。


「私は先生。でも、無対価で教えてる。生徒なら報酬を支払うべき。教えくれないならもう中止にする。残念」


「分かった。言うよ。言うから。誰にも言わないでね?」


こう見えて魔法のスペシャリスト。この機会を逃したくない。

仕方なく周囲に誰もいない事を確認し、はっきりと言いたくないので彼女の耳元で予想を語った。


「………えっ? 2回戦ごとに回復魔法を? ……1時間に6〜8回!? 更に水魔法を使って……っ!!!?」


"ボンッ!"


「おわっ!?」


危ない落とす所だった。

イシスが顔を真っ赤にして崩れ落ちた。


「あっ……えっと……ごめんなさい。やっぱ無理っ!恥ずかしいぃいい!」


イシスは黒板に走り出すとデカデカと『自習』と書いた。


「わっ、私が帰るまでじっ自習にします!復習して置くように!この部屋は魔法が発動しても影響なし、的は黒板!以上!!」


"バンッ!"


慌ただしく彼女は部屋を飛び出していった。

仕方ないので魔法の発動確認だけでも確認する事にした。


「取り敢えず、詠唱から始めるかな?」


魔法のイメージは色々あるが既存の魔法をそもそも知らない。


「確か……大いなる水よ。我が手に集いて球をなし、飛翔し弾けよ。アクア? 〈ウォーターボール〉!」


"バシャ!"


あっ、出来た。技名が分からないけど、手のひらに水が集まり水球を形成して黒板に当たった。


「…………えい、無詠唱? おっ、一発で出来た」

〈ウォーターボール〉


"バシャ!"


「なら……」

〈アクアボール〉


"バシャ!"


「…………」


どっちの技名でも発動しましたね。イニスが言ってた通りイメージが重要なんだな。名前が長いし、水はアクアで良いや。

さて、ゲームとかの技とかを再現出来るかに挑戦。しっかりイメージして腕を振り抜く。


〈アクアスラッシュ〉


振り抜いた瞬間、水が刃を形成した飛んでいった。それじゃあ、コレは? 刃が複数飛んでいくやつ。


〈アクアクロー〉


「……やべぇ、ニヤけが抑えられない」


めっちゃ楽しい。夜戦で飲水の生成を習ったから水で始めたけど思い通りに再現出来る。これは行っちゃう、水触手とかいっちゃうか?


「ふっふっふ……」


その後、イシスが帰ってくるまで色々な魔法を再現して楽しんだ。


水触手は?

安心してくれ。長さもサイズ調整も完璧だ。動かし続けると魔力を爆喰いするけどな。


魔法:神聖魔法Lv.5、光魔法Lv.3、水魔法Lv.5、火魔法Lv.1new、風魔法Lv.1new、土魔法Lv.1new、木魔法Lv.1new、闇魔法Lv.1new、生活魔法Lv.2new、触手魔法Lv.5new

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