第6話 現状

「さて、これから君には異世界で生活して貰う訳だけど、ここに長くいられません」


「何ですとっ!?」


さぁ、これから異世界生活と思いきや創造主ウラノレーヴェにいきなり不穏な事を告げられた。


「ちゃんと説明しろ!」


ハリセンの"パンッ!"と小気味の良い音が響き渡る。ブリギッテさん、今日はハンマーじゃないんですね。


「え〜っと、ごほん。まずはここ。異世界と言ってもこの場所は所謂神界または幽世と呼ばれる別空間なんだ。神度が高ければアクセス出来るけど滞在時間に制限が付く。向こうと同じだね。滞在時間の制限を取り払うには神度Lv.8以上が必要になる」


「地上なら制限はないが、逆にニュンフェは立場もあって干渉不可。結婚したてで申し訳ないが別々に暮らして貰う事になる」


今の神度がLv.6だった筈なので、最低2つ上げる必要があるのか。結構難しくないか?


ミューに聞いたが、俺の神度が上がった理由が全部で5つ。


・高位聖職者のジョブに付いた

・創造神の加護

・その他の神々の加護(重複しても効果なし)

・神の伴侶となった

・神と交わい神気が馴染んだ(Lv.2上昇中)


だった筈だ。これを更に上げるとなると……


・神気の生成

・信仰を集める

・神器の作成

・眷属を増やす


だったかな? 俺にカルト宗教でも創設しろと?


「そこでレベリング。今の雅は神度に対して格が足りてない状態になる。まぁ、分かり易く言うとレベルが低い。神気が十分馴染んでいるのに神度が上がらないのはそれが影響している。なので、レベルを上げると自ずと神度も上がってくる筈さ」


「何、心配する事はないよ。1年もすれば人の上限値に届くだろう。なんせ私達の加護を受けてステータスが底上げされているからね。そうだ鑑定を持っていた筈だから自分を見てご覧。意識すると一部だけ見る事も出来るよ」


加護……加護……ステータスといえば変な称号もあったな。


「鑑定……あっ」


加護と称号が出ちゃった。


加護:創造神(ウラノレーヴェ)の加護、豊穣神(ニュンフェ)の加護、生命神(イシュタル)の加護、技能神(ブリギッテ)の加護、天秤神(ソフィア)の加護、武神(アレス)の加護、魔法神(イシス)の加護、精霊神(アネモイ)の加護、商業神(ヘルメス)の加護、時空神(クロノア)の加護


称号:世界を渡りし者、創造神の寵愛を受けし者、永遠のショタ、豊穣神の夫、ショタコンキラー(笑)、聖槍を生やし男、搾り取られし者、白濁100回達成者、女神を白に染めし男、夜の覇者、絡繰技巧師、夜の女神に勝ちし者、神々に同情されし者


「「「…………」」」


よく異世界モノで称号がネタ化されることがあるのは知っていたけどこれはねぇよ!

しかも、神様から同調されて加護がめっちゃ増えてるやん!!


「しょっ、称号は地上だと見られる事はないから大丈夫だよ!」


「お主より神度が高くても必罰でないから本人の意思で隠蔽すれば隠せる筈だ!」


「そうなんですね!早速、します!!」


消し方は簡単。ステータスの称号を謎れば黒文字になる。そうすれば鑑定されても表示されなくなるらしい。早速、色々消すか……


「しかし、この加護の数はどうするか……」


「神度の影響で二段階上の鑑定じゃないと見えないがこれはこれで問題になるな。よし、アタシが隠蔽用の魔導具を用意してやるよ」


「だったら、彼のジョブを調律者にしてあげてくれ」


「あぁ、それは確かに良いな。任せろ」


「調律者とは?」


「表向きは魔法使いと治療師の良いとこ取りした職業。その実態は神の使徒さ。神が地上に介入する際の代理人みたいなものだね」


「ところで知らない方から加護を頂いているのですが……」


「あぁ、それはワタシの家族と母様だな」


「アンタ結婚してるやないかい!!」


既婚なのに異世界から俺を連れ出して結婚を迫ったのかよ!!

俺は嫌だぞ!浮気相手に間違われるのっ!!


「大丈夫。安心しろ。クソ親父は既に離婚されてる。原因は言わずとも分かるな?」


「はっ!!」


まさか、今までにもこんな感じで色々やらかしているのか?


「ぐすん。ひどい言われよう……もう少し私を敬っても良いんだよ?」


「胸に手を当ててよく考えて下さい、クソ父様。今回問題を誰でしたっけ?」


「うぐっ! でっ、でも、いつも結果的にら良くなるし良いじゃん! ニュンフェも雅も幸せだよ!!」


「その余波でアタシたちはあっちこっち走り回されたがな!!」


「大体、君は他の子みたいにお淑やかさ持ったらどうなんだい? いつもいつも私をーー」


俺をそっちのけで2人の喧嘩が始まってしまった。完全に蚊帳の外である。


"クイクイ"


「貴方がミヤビ?」


「うん?」


服を引っ張られた先を見てみると魔女の三角帽子を被った同じ背丈の少女が傍に来ていた。


「えっと、どちら様?」


「イシス。ニュンフェ姉さまたちに頼まれてきたんだけど?」


「イシス……」


確か魔法神の加護をくれた神様か?

まさか、こんなに幼いとは……俺と同じで年齢より幼く見えるタイプ?


「あってるようで合ってない、私末っ子。魔法自体は昔からあるけど、その中に法が生まれたのは知性が生まれてからだから。まぁ、それでも貴方よりは年上」


ドヤ顔で無い胸を逸らすイシス。


「それでイシス様は、ミューからは何を頼まれたんですか?」


「イシスでいい。なんか貴方見てると既視感が湧く。頼まれたのは魔法とスキルの習得。時間ギリギリまで行ってもらう。空いた時間は基礎知識の習得かな?」


という訳で、2人を放置して別の部屋に移動した。中央のテーブルにルーレットの様な円盤が置かれている。


「この中央の針で血を一滴。それで貴方の属性が分かる」


「定番の水晶パリッとかじゃなんだ」


まぁ、アレは冒険者ギルドとかのネタだしな。


「ナニソレ?」


彼女に軽く説明。異世界モノでのアレコレを。


「非効率。出来なく無いだろうけど、これみたいに抵抗値まで見れないと思う。それに上限決めてたら壊れるの当たり前。こっちだと基本属性に得意不得意はあっても使えないものはない。使えないのはその人に原因がある」


なるほど。このルーレットのマス目の色が属性という訳か。


「それじゃあ、早速ーー」


覚悟を決めて人差し指を針にプチッ。離すと針に血が一滴落ちる。そんなので良いのかと思っていると針から赤いモヤが発生し、薄く広がっていった。


「ねぇ、この闇の適性率は何? 高過ぎ。ジョブの影響で抵抗値上がるのは分かるけど」


見方を教えて貰ったので確認。


【闇の適性値MAX、抵抗値MAX】


うん、知ってた。そんな感じがしたから……


「ふっ、日本の社畜はこんなものさ……」


ブラック? そんなの隠蔽体質と思考停滞があるだけで正気に戻ってバレてしまえば終わりよ。


一番ヤバいのはグレー。ルールを守って精神を摩耗させる。


週休二日? 完全付いてないなら休日出勤や呼び出しがあるね!

それか休日で緊急呼出の為の電話番をさせられて、仕事場へ2時間以内に到着出来ないといけないから実質自宅待機とか?


労働時間はシフト制で複数有り。

はっ、インターバルに7時間以上開ければ良いだけ! 人数少ないとシフト時間も毎度バラバラ! だから、深夜勤務明けで寝ると夜なのに次の日は早朝勤務なんて事も起こるし、夜勤勤務から早朝勤務への勤務もありえたのさ!!


こちとら緊急呼び出しも合わせて擬似20連勤達成したよ。残業込でな!連続勤務にならなかったのが不思議でしょうがないわ!!


疑似だろ、疑似って言う奴。11連勤務は法律で普通にセーフだからね。何度かあるし。そこから休日挟めば新しい勤務スタートさ。


「……あっ、うん。頑張ったね。良い子良い子。そっ、それじゃあ、魔法の話を始めようか」


イシスは気まずい空気を払拭するように、魔法について話し始めた。

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