第4話 帰還
伝説に語られる様な長い長い聖戦であった。お互いに蹂躙し、認め合い、和解した。
「「「…………」」」
どれくらいの時間が経ったか分からないが、ニュンフェ改めてニューと元の部屋に戻ると待っていた三人に可哀想な者を見る目を向けられた。
「うふふっ……」
隣のニューがもの凄くニコニコで仲睦まじさをアピールする。大人の階段を登った僕は俺を名乗っても良いだろう。少しコケているかもしれないが晴やかな笑顔で彼女に寄り添った。
「えっと……父親的にはおめでとうと言うべきかな?」
「凄くつやつやしてるわね、ニュンフェ……」
「うわぁ……神度がLv.6になってる。どんだけだよ……」
なんか憐れみの様な目で見られているが、俺に後悔はない。お互いに愛を誓いあってきた。
「帰ってきて早々に言うのもなんですが……お父さん、ニューを俺に下さい!」
「えっ? あっ、うん。お幸せに……で、良いのかな?」
「良いんじゃねぇ? むしろ、雅の方が心配」
「おっ、おめでとう?あっ、本当。スキルも増え、うわぁ……」
なんか、向こうの家族にアッサリ受け入れられたよ。本当に良いのかな? 返せって言われてもニューを離さないよ?
「安心して下さい。雅さんを束縛する事は致しません。それに悟りました。もっと知識を増やさなければ勝てないと」
「っ!?」
まだまだ彼女は強くなるというのか!?
「まぁ、うん。殆どにね?」
閑話休題。
「取り敢えず、人間止めてきました」
「そうね。最低要件を満たし様だし、これからどうしますか?」
「向こうでずっと暮らすのは無理なんですよね?」
「えぇ、もうこちら側の者として世界にカウントされているから」
「なら、家族への説明。それから退職とかマンションの解約とかですかね。色々手続きしないと」
「戸籍とかは実家に残して置けば、また帰った時に困らないよ。物品の移動も影響が出ない範囲なら可能だし」
そうか、長期滞在はできなくても短期で帰ることはできるのか。それに物品の移動。向こうの文化レベルは分からないが助かる。質屋による資金作りも可能かもしれない。
「さて、一番の問題は家族への説明だよな」
「確かに……いなくなって既に3日が経過してるから騒ぎになりかけていた」
「はぁ!? 三日!? 急いで説明しな……いた?」
"いた"って言ったか、この人は?
「そうだよ。安心してくれ。向こうの神が介入してくれてね。失踪も無断欠勤も事故にあって意識不明だったとすり替えてくれた様だ」
「お父様が役立たずなので、本当に向こうの神にご迷惑をお掛けしました」
辻褄合わせが出来てる様でほっと胸を撫で下ろした。事故なら事故で騒ぎそうな家族だが一安心だ。
「一応、謝罪も兼ねて夢枕で家族にも説明しておいたよ」
「でしたら、ご挨拶に行きましょう♪」
「確かにその方が説得力ありそうだ」
「手続きはしておいたから何時でも構わないわよ」
「ありがとうございます、ソフィアさん」
俺はミューに手を引かれ、また部屋の扉を潜ると別の部屋へに繋がっていた。
「よう来た」
声をかけてきたのは初老の男性だよな?
向こうの神様たちと違って姿が分かりづらい。見方によっては青年に見えるし、お婆さんの様にも見える。
「わしはこちらを統括する神じゃんな。姿色々、名も色々有るが……お主的にはそうさな。閻魔大王と言った所か。エンマと呼ぶがよい」
「エンマ様。お世話になります」
「全くお主も災難よの……さぁ、扉が繋がった。行くと良いぞ」
エンマ様に促され、ミューと一緒に扉を潜るとマンションの玄関へと帰ってきた。
「ここが雅さんのお部屋ですか〜」
夢……じゃない。横を見ればしっかりと隣にミューがいる。
「それじゃあ、やる事やって実家に帰りますか」
そこから怒涛の手続き祭り。まずは退職。
「事故の後遺症がある為、辞めます!」
人手不足はどこも同じ。部署移動を勧められたが、実家に帰るの一点貼りで退職届を提出。
その後、引き継ぎ作業を開始したがなんだかんだで一週間かかりそうだ。
唯一良かったことは、仕事を押し付ける相手がいなくなって同僚が爆死した。俺も消えるが、あいつも消えるかもしれない。ざまぁみろ。
その他の手続きは早かった。
水道光熱、それから転居届などはタイミングが合ったのか干渉されたのかその日の内に全てが終わった。
「荷物はどうしよう?」
マンション解約手続き自体は終わっている。あとは荷物の移動だけ。引越し費用も馬鹿にならないし、複数見積もりで安くなるかな?
「それなら私が収納しといてあげるよ」
向こうでいう所のアイテムボックスに収納して貰ったので安上がり。
「好きな物を食べくれ」
「おぉーっ、これが雅の世界の食べ物なんだね。どれも美味しそう。それじゃあ、これとこれ」
お礼に近くの少しお高めのレストランで好きなだけ注文して貰った。
「「美味いっ!!」」
めっちゃ堪能してお腹がパンパン。気分は最高。
「3万円になります」
「…………」
1LDKの引越し費用と相殺できてない気がするが、ミューの笑顔でプライスレス。うちは退職金あるし良いか。
「そういえば、今日の宿はどうしますか?」
マンションでまだ生活出来るが荷物は既に収納済み。実家への挨拶は明日の朝を予定している。
「取り敢えず、実家近くのビジネスホテルの予定」
「へぇ〜っ、どんな所ですか?」
「あんな感じの建物にある」
「なるほど。おっ、この国にもお城があるんだぁ〜。でも、なんか小さくないですか? それになんか凄く光ってて派手だね〜」
「…………」
ラブホです。ここらでは有名なお城がモチーフの二階建てです。
「えっ、アレも宿なの!?」
「そうだよ。恋人たちが行く所だね」
「決めた! あそこに止まってみたい! だめかな?」
うっ、可愛い。コテっと首を傾げながらお願いするのはズルい。
確かにラブホの一泊ならダブルの部屋と比べて安いがグレードで変わるんだよな……
「パネルで選んで入ります」
今日の宿はラブホに決定!
なんで、童貞だったのにラブホの使い方が分かるかって?
姉妹にファッションショーするからと連れてこられたのだよ。最近は女子活とかでも利用するらしい。
「じゃあ、これしよう♪」
彼女が選んだ部屋のお値段は一泊(15時間)で1万3000円。2人でも余裕な大きなベットと透けた浴室。アメニティで色々グッズが売ってるぜ。
「…………」
ミューがめっちゃグッズをガン見している。
ただ、ちょっと待って欲しい。それは百合さんや薔薇さんが使う物ですよ。
まさか、入れるのか!?俺に入れるつもりなのか!?
「とっ、取り敢えず、テレビを付けるね」
俺は忘れていた。ここはラブホ。テレビを付けようものなら、最初に映るのはセックスシーン。
"あぁあん!いっちゃうぅぅ!"
「「…………」」
"ガチャ!"
ふっ、俺は覚悟を決めて彼女を見た。スイッチの入った彼女は、もう既に色々購入なさっている。
「こっちの世界は性に対して最先端を行ってるね。これらの使い方を教えてくれるよね?」
よっしゃあ、昼から夜戦開始じゃあぁ! 耳年増な姉妹に聞かされたおもちゃテクを試してやんよぉおおおっ!
その後、知識量の差から今回は俺の圧勝であった。窓から射し込む朝日が勝者の俺を祝福してくれた。
「……寝よ」
結局、実家へと挨拶に出向いたのは昼過ぎになりました。
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