第14話 玄関先の男★★
夜の8時くらい、だったかな。あれは。
夕食を済ませてテレビを見てたらインターホンが鳴った。
うちのアパートは玄関先のチャイムにカメラがついていて、部屋から訪問者を確認できるようになっている。
モニターを確認すると、玄関先には男が立っていた。
スーツを着た20代くらいの男。顔つきは若いが、目はうつろで肌が青白く、覇気がない感じだった。スーツもダボダボで、くたびれた格好をしている。セールスマンだと思うが、こんな雰囲気で契約取れるんだろうかって正直思った。
とりあえず俺は居留守を決め込むことにした。とはいっても部屋の電気はついてるんだから無視に近い。少なくとも宅配便とかの人じゃなさそうだから放っておいても問題ないだろって思ったんだ。
再びテレビを見て、飽きたらシャワーを浴びて寝た。それでその日は何事もなく終了。
しかし翌日、また夕食を終えた頃にインターホンが鳴った。
モニターを見ると、玄関先に昨日と同じ男が立っている。
セールスマンから買いたいものなどないので、再び無視をすることにした俺。そっからしばらくスマホをいじってたんだけど、気になって再びモニターのスイッチを入れてみた。
そしたら玄関先の男はまだそこにいた。
さっきと同じ位置。ぴくりとも動いていない。
思わず時計をみた。インターホンがなってから15分くらいは経っている。
いや粘るな、って思ったが、その割には1度しか呼び鈴を鳴らしていない。
なんだこの男。
なんか不気味に思えて、俺はリビングのソファに転がって電気を消した。寝たとなったら帰るだろうって思った。
なかなか寝付けなかったけど、気づいたら朝になってた。時計を見たら朝の9時前。ゴミ出しの日だったから急いで外に出たんだけど、男はいなくなっていた。まあ当たり前なんだけどさ。
その日の夜のことだ。また8時ごろにインターホンが鳴った。
モニターにはもちろんあのスーツの男が映っている。
これで3日目だぞ……。俺はいい加減イヤになっていたので、きっちり断ってやることに決めた。しかし心の片隅で「なんかコイツ不気味だな」ってのはあったから、ドアを開ける前にチェーンをかけた。
そしてドアを開くと、玄関先に男の姿はなかった。
10秒前にはモニターに映っていたはずの男が、だ。
は? って思ってドアの隙間から見える範囲を見渡してみる。アパートの廊下の先にも男の姿はない。
昨日は15分くらいそこにいたのに今日はいない? いやその前に、インターホンが鳴ってすぐ俺は玄関の扉を開けたはずだ。
人間がそんなすぐに姿を消すことなんてあるのか?
怖くなった俺はすぐさまドアを閉じて鍵をかけた。もちろんチェーンもそのままで。
そして再びリビングに戻ろうとしたその時、背中から男の声が聞こえた。
『おじゃまします』
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