第2話 幼女を誘拐から助ける

「ぐへへへ……っ! お嬢ちゃん、捕まえたぞお~~」

「助けてっ!」


 明らかにヤバそうな笑みを浮かべるオッサンと、助けを求める小さな女の子。

 俺は考える間もなく、二人の前に出て行った。


「やめろ」


 俺はオッサンの手を掴んだ。


「ぐ……っ! 誰だお前は?」


「俺は……別に誰でもない。ていうかさっさとその子の手を離せ。おっさん」


 冷静に俺が言うと、おっさんは自分の立場がマズイことを悟ったのか、


「わたしは別に……ただこの子にカードをあげたかっただけで」

「じゃあなんでその子を連れて行こうとしているんだ?」

「いや、それは……」

「早く消えろよ。警察呼ぶぞ」

「くそ……っ!!」


 おっさんは走って逃げて行った。

 かなり逃げ足が早いみたいで、すぐに見えなくなった。


「大丈夫?」


 俺は女の子に話しかける。


 (すげえかわいい子だな……)


 ツインテールにくりくりした大きな瞳。

 たぶん幼稚園ぐらいの年齢だろう。


「うん! 大丈夫だよ! ありがとう!」


 さっき誘拐されかけたというのに、すごく元気に返事する女の子。

 とにかく何もなくてよかった。

 もしもこの子のトラウマになっていたら、かなりかわいそうなことだ。


「星奈! ここにいたんですか!」

「もお! すごく探したんだよ!」


 聞いたことのある声が聞こえた。


「鏡さん?」

「「さ、西城くん……?」」


 鏡さん姉妹――陽菜さんと月那さんが、俺のところへ駆け寄って来た。

 二人ともすごく心配そうな顔をしている。そしてかなり汗をかいていた。


「お姉ちゃん!!」


 星奈と呼ばれた女の子は、鏡さん姉妹の元へ走っていく。


「よかった! すっごく心配したんだよ!」


 月那さんが女の子の顔を撫でる。


 それから三人で抱き合う感じに……

 どうやら俺が助けた女の子は、鏡さん姉妹の妹らしい。

 シチュエーションから考えるとそれが自然だ。

 感動的な光景――妹さんを相当探し回っていたみたいだ。


「あのね、このお兄ちゃんがね、あたしを助けてくれたの」


 妹さんが俺を指さす。


「西城くん……何があったんですか?」


 鏡さん――陽菜さんのほうが俺に聞いてくる。

 ここはちゃんと事情を説明しておかないといけない。

 俺は鏡さん姉妹に、さっき妹さんが誘拐されそうだったことを話した。


「そうだったんですか……本当にありがとうございますっ! もしも西城くんがいなかったら、星奈が攫われていました」

「シルバー様……じゃなくて、西城くん。本当にありがとう。命の恩人だよ」


 鏡さん姉妹に頭を下げられる俺。

 命の恩人……はさすがに言い過ぎな気もするが、あの変なおっさんは実際に何をしでかすかわからない感じだった。

 まさか鏡さん姉妹に妹がいるとは知らなかった。よく見れば陽菜さんと月那さんに顔がよく似ている。


「とにかく妹さんが無事でよかったよ。警察へは俺が連絡しておくから」

 

 

 

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