第3話 あたしの妹を助けてくれた 陽菜視点

「ふう……今日は疲れた」


 あたしと月那と星奈は、三人で手をついで家に帰ろうとしていた。


 今日は……中間テストの発表の後、自習室で勉強してから、家に帰ってきた。

 そしたら星奈がいなくてなっていて……

 月那と一緒にあちこち探していた。

 幼稚園にも行ったし、街中を探し回る。

 7月の暑さも気にせずに、二人で必死にいなくなった妹を探したのだ。


 (本当に怖かった。星奈がどうにかなってしまったんじゃないかって……)


 日が暮れかけた時、隣町の公園で星奈を見つけた。

 その時、星奈のそばにいたのが西城くんだった。


 (西城くんが助けてくれたんだよね)


 中間テストの順位発表の時、あたしは西城くんに絡んでしまった。

 西城くんの順位を見て、どうしても気持ちが抑えられなかったからだ。


 ——西城くんは、本気を出していない。


 あたしと西城くんは中学の時、塾が一緒だった。

 塾の成績は……あたしがいつも1位だった。

 そして西城くんはいつも2位。

 テスト結果はあたしが勝っていたけど、本当は明らかに西城くんのほうが上だった。

 

 (普段の授業では西城くんは1番だった)


 どんな問題もいつも1番早く解いていたし、塾で誰も正解できなかった難関高校の問題も、西城くんだけは正解していた。

 きっと訳があってテストでは1位を取らなかったのだと思う。少なくともあたしはそう確信していた。


 (西城くんがいたから、あたしは頑張れた)


 西城くんに負けないために、あたしは必死に努力できた。

 だから西城くんと同じ高校に入れた時はすごく嬉しかったし、また中学の時みたいに切磋琢磨できると思っていた。


 (なのに……西城くんは9位。あり得ない……)


 あたしは西城くんの本当の実力を知っている。

 西城くんの実力なら9位は絶対にあり得ない。

 本気を出していないに違いない……


 (どうしてなの……? 西城くん)


 西城くんが本気を出していないのには、何か深いワケがあるはずだ。

 あたしはそれを聞き出したかったけど……


 (つい感情的になってしまった)


 まるで西城くんを責めるみたいになってしまった。

 何かやむ得ない事情があるかもしれないのに。

 あたしの気持ちを、一方的に西城くんに押し付けてしまった。


 (本当にごめんなさい……)


 明日、西城くんに会ったら謝るつもりだった。

 だけどその内に西城くんに会った。公園で。

 しかも、あたしの妹を助けてくれた——


「あのお兄ちゃん、すっごく優しかったよ!」


 星奈が元気よく笑っている。

 西城くんは星奈にとても優しくしてくれたみたい。

 あたしは西城くんに悪いことしたのに……


「そうだね。明日、ちゃんとお礼を言わないとね!」





 

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