トラック2:魔法刻印入り(?)竹の耳かき棒で右耳をじょりじょりこちょこちょ 【耳かき(竹の耳かき棒、梵天、右、中)、耳ふ~、ひざまくら】

(場所:雑居ビルの一室、パーテーションで仕切られている、シングルベッド、布団には魔法陣らしい模様、枕元に木箱が複数)


(位置:正面、近く)

(はしゃいだ声で)

さささっ、ベッドへどうぞ。

この毛布の模様? それはもちろん、魔法陣だよぉ。

現代魔法を使った耳かきをするんだから、

こういうのがあって当然でしょう?


(SE:木箱を持ってくる音、カタカタ)


(からかう声で)

木箱の柄がキレイ? いっひひひ♪

そんなふうに何でもかんでも興味を持つと、

いつの間にか魔法にかかっちゃうかもしれないよぉ?


(おどろいた声で)

どんな魔法?って……その……、

お客さんがあたしの店の常連になってくださる魔法、

つまり魅了魔法とか……。

あ、それだとあたしのことを

好きになっちゃうか……。


(5秒ほど息づかい。気まずい感じ)


(えらそうな声で、オドオドが残ってる)

さ、さぁ、現代魔法を使った耳かきをしよう。

ほ~ら、この耳かき棒を見るといい。


(自慢げな声で)

ただの竹の耳かき棒じゃない?

これにも模様がついている!

お客さんはさっきから、

いいところに気がつくねぇ。

これが魔法の刻印っ♪

耳かきが気持ちよくなるように、

あたしが魔力を込めて彫った特別な耳かき棒だよ。


(照れた声で)

えっ? すごい?

手先が器用? デザインセンスもある?

魔法使いなら、これくらいできて当然ですよ……。


(恐る恐るな声で)

へ、へらの部分は元の品から手を入れてないので、

コーティングとか衛生面は大丈夫ですよ……。


(えらそうな声で、オドオドが残ってる)

さ、さぁ、ひざまくらにおいで。

あたしが着ているのは

ひざまくらをするために用意した

肌触りのいいエプロンドレスなんだぁ。

居心地は保証するし、えんりょもしなくていいぞ……。


(SE:髪、布がこすれる音。『お客さん』が動く音)


(位置:右、近い)


(からかう声で)

お客さん、ひざまくらに乗るの慣れてるねぇ。


(ぼそっとつぶやく)

ひざまくらってこんな感じなんだ……。


(10秒ほど息づかい、気まずい)


(恐る恐るな声で)

耳かきを始めます……。

このまま右側からでいい?

なんか耳かきを心待ちにしてる顔だねぇ。

そんなにすなおだと……、


(位置:右、至近)

(声:ささやき、無声、続ける)


(いたずらな声で)

あたしみたいな魔法使いに

つけ込まれちゃうぞぉ?


(SE:右耳中、耳かき棒で耳かきする音、続ける)


(はしゃいだ声で)

じょりじょり……じょりじょり……。

お客さんうれしそうだねぇ。

そんなに耳かきが好きなの?


(甘やかす声で)

甘い声で答えちゃって、

ちょっとかわいい♡

それに口元がどんどん緩んじゃってるぅ♪

お客さんは耳かきが本当に好きなんだねぇ……。


(声:ささやき、有声、続ける)


(おどろいた声で)

ええ? この辺の耳かき屋さんは全部行ったの……?

全メニューも試したし、

店員さん全員に耳かきしてもらった?

お客さんってば耳かきにハマりすぎでしょ……。


(うっとりした声でつぶやく)

それであたしのお店を

見つけてくれたのはうれしいかも♡


(自信のない声で)

……でもどうかな?

あたしは耳かき業界新参者だけど、

他のお店みたいに、お客さんのこと気持ちよくできてる?


(照れ隠しするように)

……よさそうな顔をしてる。

い、いっひひひ、よかったぁ。


(声:ささやき、無声、続ける)


(まじめな声で、うきうきもあり)

これは常連さんになってもらうために、

張り切って魔力も込めて耳かきしないとぉ。


(自慢げな声で)

……そうそう。あたしの耳かきが気持ちいいのは、

魔法のおかげでもあるの。

つまりあたしは魔法も上手ってこと。

魔女狩りされちゃうから堂々とは言えないけどねぇ。

こっそりと魔法を使って商売するのが、

現代魔法使いの生き方っ♪


(SE止め:耳かきここまで)

(声:ささやき、ここまで)

(位置:右、近い)


(はしゃいだ声で)

はい、耳の中じょりじょりはおしまい。

次は梵天でこちょこちょするよぉ~。


(ため息交じりの声で)

残念だけど、これはただの梵天だよ。

グリフォンとか、ロック鳥とか、

そんな鳥の羽根があったらよかったんだけどねぇ。


(位置:右、至近)

(声:ささやき、無声、続ける)


(甘やかす声で)

でもでも、あたしの手と魔法にかかれば、

と~っても気持ちいいからねぇ~。

さっそく耳の中へ梵天こちょこちょ~。


(SE:右耳中、梵天で耳かきする音、続ける)


(甘やかす声で)

お客さんの体がぴくってした♡

かわいいけど大切な耳を傷つけちゃうから

動かないようにぃ~。


(声:ささやき、有声、続ける)


(迷った声で)

こういうときに便利そうな魔法かぁ。

金縛りの魔法……とか、

ダメダメ、他人を傷つけるような魔法はよくない……。

だって、魔法って悪用するものじゃないでしょう?

出会ったことないから

他の魔法使いはどう考えているかわからないけど、

あたしは世のためひとのためこっそりと

魔法を使うものだって思ってる。


(照れた声で)

やさしい? そ、そんなことないよぉ。

現代は魔法使いってだけでSNS魔女裁判からの

アカウント火あぶりの刑が当たり前だから、

悪さをしないよう、迷惑をかけないよう

こそこそしてるだけ……。


(自信のない声で)

あたしは現代魔法使いらしく陰キャで、

ひとに誇れるような特技もないし、

魔法以外にひとの迷惑にならない仕事を考えて、

耳かき屋さんやってます……。

だからその、お家帰ったあとでも、

耳が痛くなっちゃったら言ってください……。

治癒魔法がないから、

病院代出して、謝ります……。


(不満な声で)

あ、ちょっとなんで笑うのぉ?

やさしくてステキなんて言うけれど、本当に褒めてるぅ?

もう……。


(SE止め:耳かきここまで)


ふ~~~っ。(耳ふ~、いたずらに)


(声:ささやき、ここまで)

(位置:右、近い)


(いたずらな声で)

いっひひひ♪ なまいきなことを言ってると、

耳ふ~でぴくぴくさせちゃうんだからぁ。

魔法使いをなめると、痛い目見る――じゃなくて、

気持ちいい目にあうんだぞぉ。


(迷った声で)

それなら左耳もじょりじょりしてほしい?

……お客さんと話していると、

なんか調子が狂うなぁ。


(甘やかす声で)

……いいでしょう。ごろん♪だよ。

ご~ろ~~~ん♪

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