第21話 真昼の、おでかけ
あれやこれや考えてても始まらない。
出たとこ勝負で今まで来たし何とかなる(希望的観測)。
牢の中に居たとしても飢えて死ぬだけという。
殺せないけど、死刑に近い刑だから食料なんてでない。
でも、餓死させたらアンデッドにならないのかな?
「ある程度の自由のある環境。そこで安全を取って飢えて死ぬなら殺しじゃないという事なのでしょう。現に穴の中にも食べれる植物や、獣はいるみたいですね」
「勝手に飢えて死んだ扱いになるのか。この呪い、色々と厄介だね……」
流石の剣姫。剣がなくてもその技術は消えない。
穴の先の竪穴部分にも動くものの気配は感じるという。
他の囚人と間違えてなければいいけどね。人喰いだけはしたくない。
「ちょっと狭いですね。胸が苦しいです」
「貴様ぁ、それは私に喧嘩売ってるのか」
狭い岩の隙間を這ったり体をそらしたりして進む。
トリッシュの体はまだ10歳ぐらいらしい。当然スットントンである。
小さい狭い穴もそこまで困らずに通り抜けれる。
それに対し、ニコラの胸部装備のない胸部装甲はより凶悪になっていた。
所々で体がつかえてなかなか竪穴にたどり着けない。
「や、やっと竪穴か。もう戻れそうにはないけど仕方ないよね?」
「そうですね、私ではあの道をもう一度通るのは厳しいです」
来てしまったものは仕方ない。牢の鉄格子の前にはもう戻れそうにない。
ここで出口を探すしかないのだ。
「やっぱ、なんか引っかかるんだよね~」
「私、太ってしまったのでしょうか……」
ニコラはそんなことを言っている。そのことはもういいよ。
「いやね、モディのことだよ。何が目的なのかなって」
「やはりあなたも裏切りとは思えないのですね?」
「ううん、多分本当に裏切ってる。でもその理由がわからない」
たぶん、モディが敵なのは間違いない。
剣姫が亡者狩りの主導者なのは知られているらしい。
魔女の弟子だからと言って幽閉すると思えない。
それが居なくなった時、誰が亡者を狩れるのか。
答えは簡単、魔女だ。
人の側、王国に魔女が味方している。
モディもしくは、他の魔女が手引きしているのだ。
私たちの目的はトリッシュの体を取り戻すこと。
そして、その蘇生。
それをさせたくない誰かがいる。
モディはあるいは脅されて無理やり従わされている?
「もしくは、チャームの魔法か」
ぼそっと私の口が勝手にしゃべる。トリッシュの考えだ。
言っておくけど私のは事故だよ。
ニコラと魔法の練習中の事故なのだ。
なんか知らないけどチャームがニコラにかかってしまった。もう一度は使えない。
ニコラにぞっこんのモディが裏切る何かがあったという事か。
「あるいはもう、モディは……」
「まさか! 不忘の魔女です。死ぬはずが……」
モディに化けた何者かが私たちを嵌めた可能性もある。
駄目だわ、答えなんて見つかりそうもない。
「でも分かってることはある。この下には絶対に魔石があるはずだよ」
「なぜそう思うのですか?」
「だって、アストラルが生まれていない。誰かが定期的に狩ってるか、魔石鉱があるってことじゃない?」
「なるほど、確かに。ならやることは一つですね」
ニコラがひどく悪い顔をしている。いたずらっ娘の顔だ。
その言葉にここからの脱出の道筋が見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます