第20話 真昼に、まっくら
一日のうちで一番暗いのはいつか?
それは夜明け前だなんていう嘘がある。
当然だけど、真夜中が一番暗い。
そして今は真昼。一番明るい時間のはずだけど仄暗い。
だって私たちは牢に入れられてしまったのだから。
暗くて、鉄格子がついてそこらから呻き声の聞こえる地下の牢屋。
おまけに衛生的とはいえずに臭いもひどい。
「何でこうなったーー⁉」
鉄格子を掴みそう叫ぶ。何も悪いことは……、してるわ。
がっつり、人を殺してる。ニコラが、だけど。
私が殺された時にその相手を代わりに殺したんだから、もちろん私も同罪だ。
あれ、正当防衛じゃないかなとは思うけど殺しは殺しだ。
でも今回の投獄は理由が違う。魔女狩り、怖い。
魔女に成れるのは特別な体質の少女だけらしく、ニコラは魔女に成れなかったらしい。ただ、そこは不殺の魔女の弟子。
トリッシュに施された不老の呪いで年はとらないという。
そう、私たちは人間のままなのだ。
殺すのもアンデッド化して面倒なのだ。剣姫のアンデッド。
斃せるものなどいようはずもない。
「魔石も剣もなし。しかも魔女の血もない。これはかなり不味い状況ですね」
「いや、牢に入れられてまずくない状況ってありえる?」
そんな状況考えられないわ。
素っ裸に剥かれなかっただけましだけど、持ち物や武器になるものはすべて取り上げられている。ニコラの胸当てだけの鎧さえも外されて、ただの白いドレス姿だ。
「穴でも掘って逃げるしかないか?」
「何年かかるとお思いですか、馬鹿じゃあるまい」
「ですよね~」
とは言え牢の鉄格子の反対側、壁に大穴があるんですけど?
「この穴何処に通じてるんだろう?」
「亡者の巣窟です。幽閉された者同士で争い死んだ者や、街中で殺され封印できなかったアンデッドが放り込まれている深い竪穴」
「うおい、殺す気満々じゃね?」
「アンデッドに殺された人間もアンデッドになります。この国の中では魔女に頼れぬ以上、そうするしかないのですよ」
師を殺された恨みで全ての魔女はこの国の王を憎んでいる。
だが、この国のどこかにあるという、師の亡骸を求めて魔女がやってくる。
それがニコラとモディなのだとか。昨日の晩に聞いた話だ。
「モディの真意がつかめません。こんなことをする娘じゃないのに……」
ニコラは不老の呪いのせいで年は取れないけど不死じゃない。
殺せばアンデッド化して手に負えなくなる。殺せないはずなのだ。
ここで下手にアンデッドに殺されるようなことになれば……
「もしかして、この穴の中に何かある?」
この牢に何か秘密があるとしか思えない。
「でも武器も取り上げる意味が分かりません。領主の側近に化けてるのです。やろうと思えば探索許可は出るはず。私達を殺す以外に理由がない」
おお、なんか推理もの始めたぞこの子。柄じゃないのに。
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